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現代の日本競馬は枠順のゲームである⑤

日本の競馬にスローペース化の波が押し寄せてきた。その変化は劇的なものではなく、十数年の歳月を経て、じわじわと移り変わってきた。しかし、私が競馬を始めた20数年前と今という長いスパンで見てみると、明らかに、大きく変わったのだ。そして、スローペース化は現在進行形なのか、ひとまずは落ち着いたのか、それともこの先さらに加速してゆくのかさえ分からない。ひとつだけ確かなことは、競馬の流れが変わったことにより、道中のポジション取りが勝敗に及ぼす影響が大きくなり、それに伴って枠順というファクターが極めて重要になっただけではなく、騎手に求められる資質も変わったということである。

スローペース化された競馬のレースにおいて、ジョッキーに求められるのは、スタートして馬を出して行って前のポジションを確保し、道中は馬を抑えながら脚をため、最後の直線に向くや一気にギアをトップに入れて馬を追い出し、脚が止まりかけた馬でもなんとか最後までもたせる技術である。「鞍上人なく、鞍下馬なし」というたとえは死語となり、長手綱でできるだけ馬の走りの邪魔をせず、大外を綺麗なコーナリングで回り、最後の直線で一糸乱れずに追うことが美しいと言われる時代は終わった。ジョッキーは鞍上でファイトしなければならなくなったのだ。

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