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【リーダーシップ】上司と部下の関係性に影響を与えるものとは?(Dulebohn et al., 2012)

上司と部下の関係性を表す、Leader-Member Exchange(LMX)という概念に対して影響を与える要因や結果要因について、過去の研究をメタ分析した文献を紹介します。

Dulebohn, J. H., Bommer, W. H., Liden, R. C., Brouer, R. L., & Ferris, G. R. (2012). A meta-analysis of antecedents and consequences of leader-member exchange: Integrating the past with an eye toward the future. Journal of management, 38(6), 1715-1759.


どんな論文?

この研究は、過去40年間のLMXに関する研究をメタ分析という手法でまとめ、LMXの質に影響を与える要因とその結果について検討したものです。
リーダーメンバー交換(Leader-Member Exchange:LMX)理論は、リーダーとそれぞれのフォロワーとの関係が異なることを強調するリーダーシップの理論です。

この研究では、247の研究をメタ分析することで、LMXの質に影響を与える21の要因と16の結果を特定しました。大雑把に括ると、

  • リーダーの行動や認識

  • フォロワーの特性

  • 人間関係

が、LMXの質に影響を与えることが分かりました。
具体的には、以下の図の通りです。

特に、リーダーの行動と認識がLMXの質に強く影響を与えることが示されています。中でも変革型リーダーシップとコンティンジェント報酬行動(Contingent Reward Behavior)がLMXの質に大きな影響を与えるようです。

※コンティンジェント報酬行動とは、リーダーがフォロワーのパフォーマンスに基づいて報酬を提供する行動を指します。

具体的には、リーダーがフォロワーに期待する行動や成果を明確に伝え、フォロワーの期待や成果の達成に対してもフィードバックや報酬を提供することを指します。
これにより、フォロワーは自分の行動がどのように評価され、どのような報酬が得られるかを理解します。リーダーがフォロワーに対して明確な期待を示し、その期待に応えるフォロワーへ報酬を与えるとLMXの質は高まるようです。

また、リーダーの信頼もLMXの質に影響を与えるようですが、他の行動や認識ほど強くなかったとのこと。


LMXと関連するパーソナリティ(特性)

本研究では、リーダーメンバー交換(LMX)と関連するパーソナリティ特性についても詳しく分析しています。以下に、LMXと特に関連が強いとされるパーソナリティ特性を紹介します。

1. コンピテンス(有能さ)
フォロワーが有能であるとリーダーが認識すると、そのフォロワーとの関係の質が高くなることが示されています。これは、リーダーが有能なフォロワーに対して重要なタスクを任せる傾向があるため。

2. ビッグファイブ性格特性
ビッグファイブ性格特性の中で、以下の3つがLMXと強く関連。

  • 協調性(Agreeableness): 協調性が高いフォロワーは、他者と協力し、助け合う行動をとる傾向があり、リーダーとの関係が良好になる傾向

  • 誠実性(Conscientiousness): 誠実性が高いフォロワーは、責任感が強く、仕事に対して真面目に取り組むため、リーダーとの関係の質が高まる

  • 外向性(Extraversion): 外向性が高いフォロワーは、リーダーと積極的にコミュニケーションをとり、人間関係を築くのが得意なため、良好なLMX関係を構築しやすい

3. 統制の所在(Locus of Control)
Locus of control は、行動を統制する意識が内(自己)にあるか外(他者)にあるかを指す概念です。
内的統制の所在が高い部下は、自分の行動や結果を自分自身でコントロールできると信じているとのこと。このような人は、積極的にリーダーとの関係を築こうとするため、質の高いLMX関係を築きやすい

4. 肯定的感情(Positive Affectivity, PA)
肯定的感情が高い部下は、楽観的でエネルギッシュなため、リーダーから好意的に見られることが多く、良好な関係を築きやすい

5. 否定的感情(Negative Affectivity, NA)
否定的感情が高い人は、ストレスや不安を感じやすく、リーダーとの関係を築くのが難しい傾向がありとのこと。そのため、LMXの質が低くなることが多い


感じたこと


こうしたメタ分析は、上司と部下の関係性であるLMXの質を向上させるための具体的な方法や、リーダーシップの実践に役立つと感じます。
どの内容も実感としては納得感がありますが、他方で、実務目線だとLMXが低い時にどうすればよいか、という点における示唆も気になりました。


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