原美術館

美術館が欲しい。

シェアリング・エコノミーという言葉が普及して久しいが、ぼくはずっと「アンチ・シェアリング・エコノミー」という考え方が大事だと考えている。

シェアリング・エコノミーというのはその名の通り、ものごとをシェアすることで、無駄なく経済を回すというもの。しかし、ぼくはシェアリング・エコノミーの本質は決してこの「共有」ではないと思う。「感情喚起」にこそ、シェアリング・エコノミーの可能性があると思うのだ。

これはよく言われていることだが、洋服のレンタルサービスの登場によって洋服が売れなくなるかといえば、そんなことはない。レンタルによって出合わなかった洋服に出合い、好きになり、購入につながる。これが「感情喚起」である。だから、たんに“お得だから”という理由でシェアリングサービスを見ていては、経済はシュリンクしてしまうはず。

では、「アンチ・シェアリング・エコノミー」が何かと言えば、“はじめから所有欲のある”シェアリング経済である。「ほんとうは手放したくないけれど、欲しい人がいるなら貸してあげよう」「みんなが欲しがり価値が上がっているから仕方なく手離そう」というようなもので、なんてことはない、起きていることは「シェアリング・エコノミー」と変わらない。ただ、この経済をまわすのが“所有欲のある”人物だということだ。シェアと所有が融合している点が特徴だろう。

これは端的に言って、アートピースにおいて、すでに実現されている経済圏であるが、どんな市場にも当てはまると思うし、今後の「感情時代」においては、加速する概念だと思う。洋服でも、不動産でも、感情を喚起することで価値を上げる。そんな時が近い。

今更であるが、これらの写真は品川にある「原美術館」のもの。同館は建て替えのために来年閉館する。そのニュースを聞いて「買えるものならこの美術館が欲しい」と思った。「ぼくならここをこんなふうに使うのに」と。この感覚がいまの不動産業界でも少しずつ現れていて、ビジネスになりつつある。単なる所有ではなく、欲しい人が欲しいものを持ち、使い方まで描けるという所有。絵でも洋服でも同じで、まさに「アンチ・シェアリング・エコノミー」だと思う。

でも、まだまだこの考え方は理解されないことも多い。というか、僕自身少しうまくまとめられていないようにも思う。「アンチ・シェアリング・エコノミー」について、もっと議論されると面白いだろうなぁと思う。

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