エンジニア兼作家が東京都知事選挙の出馬表明記者会見をした会見全文
昨日、都庁にて出馬表明記者会見を行いました。会見の全文を文字起こししたものを公開いたします。
会見全文
本日は大変お忙しい中、急な呼びかけにもかかわらずお集まりいただきありがとうございます。
私、安野たかひろは、7/7に行われる東京都知事選挙に立候補いたします。本日は1)私が出馬に至った理由2)注力したい政策3)選挙期間中に行う3つの日本初のキャンペーンについてお話させていただきます。
自己紹介
まず簡単に自己紹介をさせてください。私はこれまでに、3つの職業を経験してきました。1つはソフトウェアエンジニア、AIに関するエンジニアをしていました。2つ目は起業家です。AIスタートアップの経営者として、ユーザーにプロダクトの提供をしてきました。3つ目は作家です。主にSF、サイエンスフィクションを書いています。いくつもの職業をばらばらと経験してきたように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはテクノロジーを通じて未来を描くというただ一つのことだけをやって参りました。エンジニアとしてはプログラムを書くことを通じて、起業家としてはプロダクトやサービスの提供を通じて、SF作家としては言葉を通じて未来を描いて参りました。これは今回私が立候補した理由とも繋がります。
1)どうして出馬しようと考えたのか
今回、政治の世界から遠かった私が都知事に立候補をしたのは、まさに今こそ、東京の未来のビジョンを描くことが求められているのではないか、と思ったからです。
皆さまよくご存知の通り、いまテクノロジーの進化によって、世界は大きく変わろうとしています。インターネットやスマートフォンは子供から高齢者の方まで、当たり前に使われるようになりました。生成AIにより画像や映像が自由に作れるようになり、翻訳AIによってランゲージバリア、外国語を読み書きする障壁は取り払われ、ChatGPTのようなツールは私たちの生産性を押し上げています。産業構造が変わり、人間を超える知性が生まれようとしています。これは民主主義社会に対してプラスにもマイナスにも働きます。権力が集中し、監視が強化され、フェイクニュースが蔓延し、分断を産む可能性がある。しかし一方で、技術の発達は社会的弱者を包摂し、誰もが自分らしい生き方をできるようになる助けになり、人と人をコラボレーションさせるために使うことも出来ます。私達が良い方向に技術を使えるかどうかの岐路に立たされている。
にも関わらず、オリンピックが終わった今、東京都の未来ビジョンは空白になっていると感じます。今回の都知事選でも有力候補は政局の話に終始し、政策の話も、未来のビジョンの話も一切なされてはいません。今出馬している候補者はしがらみの中、短期的な目線で政治のゲームをプレイしているだけのように感じている方も多いのではないでしょうか。
だからこそ、AIエンジニアとして、起業家として、作家として、未来を描く仕事をしてきた自分が出ることには意味があると考えています。まだ33歳の自分にとって、50年後の未来は他人事ではありません。政局ではなく、政策を。そして、更にその先の未来のビジョンをまともに議論していきたい、そして選択肢を都民の皆さんに提示したい。それが私の出馬する理由です。
2)政策としていったい何を訴えたいのか
2つ目に、私が一体何を訴えていきたいのかをお話したいと思います。私の訴えたい東京都のビジョンは一言でいえば「テクノロジーで誰も取り残さない東京にアップデートする」ことです。私はテクノロジーを通じて、人と人とが相手を尊重しあえる、誰もが自分らしく生きやすい東京を作りたいーーそう考えています。
そのためには、3つ。暮らし、経済、政治をそれぞれアップデートしたいと考えています。
暮らしのアップデート (先輩世代、未来世代)
テクノロジーを活用する、と聞くと「自分は取り残されてしまうのでは」と不安を覚える方もいらっしゃるかもしれません。ですが、ChatGPTや翻訳AI、自動運転などの技術は、むしろ高齢者や、ハンディキャップがある方、それまでIT技術に疎かった人たちにこそ助けになれるものだと思います。
歴史的に見ても、技術はハンディキャップのある人たちの力になってきました。眼鏡は視力の悪い人を助け、車いすは足の不自由な人を助け、電卓を使えば計算が苦手な人でも仕事ができるようになってきました。テクノロジーが発達することで、多くの人の選択肢が増え、暮らしは豊かになります。私はテクノロジーで生活を良くするために様々な政策を打ち出していきます。
具体的にいくつか申し上げます。自動運転を積極的に解禁、活用することで誰もが移動の不自由を感じなくしたい。高度医療技術や未病対策によって、健康寿命世界一を目指します。誰もが安心してテクノロジーに触れられるようなサイバー犯罪やネット上の暴言対策。デジタルを活用した防災対策も重要です。また、未来世代を担う子供たちのためにも、不妊治療を含む出産・子育てインフラの整備。世界一の教育環境を作っていくことが重要だと考えます。
経済のアップデート (現役世代)
現代における経済成長の主要ドライバーはテクノロジーです。世界の時価総額ランキングを見ても、上位はGAFAM(Google, Apple, Facebook, Amazon, Microsoft)やNvidiaのようなテクノロジー企業が占めています。経済学の世界では、経済成長のドライバーは1)人口増加、2)天然資源の活用、3)テクノロジーだと言われています。ですが、1と2は日本では望むことはできません。日本がどれだけ豊かさを産むことができるのかは、テクノロジーにかかっているといっても過言ではありません。私は、AIスタートアップの経営経験を活かして規制緩和や支援策を通じ、テクノロジーで新産業を作ることを推進したいと考えています。
政治のアップデート (行政、民主主義)
行政、政治、民主主義もテクノロジーによってアップデートできます。テクノロジーを活用することで、集団でコラボレーションをできるようにしたり、民主的な意思決定をサポートできるようになると考えています。民主主義システムの原型は数百年前にデザインされたものですが、テクノロジーを活用することで、より良いものに変えられます。ネット選挙を解禁することでより幅広い方の声を聞くことができます。さらに、新しい投票システムを利用すれば、選挙を待たずとも頻度高く民意を確認しながら行政運営をすることだって可能です。私はこのような民主主義システムのアップデートに挑戦したいと考えています。また、足元で行政サービスのデジタルトランスフォーメーションを進めていくことも非常に重要だと考えています。受付対応のIT化、オンライン化など、AI以前にITの活用が遅れているのは明らかです。
政治について考えるにあたって、テクノロジーをどう扱うかという問題は過小評価されていると私は考えています。テクノロジーは独立した課題ではなく、それぞれの政策の基盤に位置付けられるものです。テクノロジーの専門家としての視点から、私は東京のテクノロジー政策を強くし、誰も取り残さない東京を実現したいと考えています。
3)日本初の3つのキャンペーン
次に、私がこれから選挙期間中に実装しようと考えている3つの日本初のキャンペーンについてお伝えします。
これまでの選挙期間は「候補者の意見をブロードキャストする」、つまり候補者の考えていることを一方的に有権者に伝える時間でした。私は今回、テクノロジーを使うことで人々の意見を聞く期間にできると考えています。これをデジタル民主主義の世界では「ブロードリスニング」と呼びます。このブロードリスニングを通じて、選挙期間をみんなで理想の政策を考えるための時間にしたいと思います。
令和4年の都民生活に関する世論調査では、「東京をよりよくするために関わっていきたいか」という質問に対して『そう思う』と答えた方が54%おられました。実に半数以上の都民が東京をよくしたい、そのために自分も何かをしたいと考えている。問題は、これまでこうした都民の想いに応える術がなかったことなのです。私なら、テクノロジーを使って皆さまの「東京をよくしたい」という気持ちに向き合うことができます。
そこで今回は、テクノロジーを活用した3つの日本初のキャンペーンを行います。
1つ目は、直接投票の結果を元に民意を解像度高く捉えることです。今回の選挙では、ある事業者がマイナンバーカードと、スマートフォンを組み合わせ、政治の論点に関して一人一票を保証する形で直接政策投票を行うと発表しています。この電子投票自体は、私自身が行うものではないですが、こういった取り組みによって得られた民意のデータを解析し、可視化し、柔軟にマニフェストに取り込んでいきます。
2つ目は、オープンソースでマニフェストを改善してゆくことです。オープンソースとは、有志のエンジニアがインターネット上でコラボレーションをしながらソフトウェアを作ることです。オープンソースのソフトウェア開発と同じようなやり方で、誰もが参加できる形で政策の議論ができると良いと考えています。具体的には、GitHubというオープンソース開発でよく使われるツールを用いて政策を管理し、誰でも変更提案ができるようにします。
3つ目は、AIタウンミーティングをYouTube Live上で行います。これは選挙期間中の17日間、一日24時間いつでも誰でもご参加いただけるものです。私のマニフェストをAIに学習させることで、都民の皆さまからの質問や政策の要望をいつでも受け付けます。こちらは本日デモをお持ちしましたので、御覧ください。
今までの政治家は一人ずつしか自分の考えを伝えられませんでした。しかし、私のマニフェストや政治思想をAIに学習させることで、多くの方と同時にコミュニケーションが行えるようになります。
また、これらのキャンペーンに使ったプログラムは、すべて選挙後にオープンソースで公開する予定です。これによって、今後のあらゆる選挙で、誰でも私と同じようなキャンペーンをすることができるようになります。こうした試みを通じて、選挙のやり方それ自体もより有意義なものになるようアップデートされるはずです。
4)おわりに
今回の立候補にあたり、デジタル民主主義の第一人者である台湾の元デジタル発展省大臣、オードリー・タン氏に相談をいたしました。彼女からは温かい言葉や具体的なアドバイスを頂きました。ここでその一部をご紹介します。
”安野さんのブロードリスニング、マイナンバーシステム、オープンソース精神を組み合わせたやり方を私は気に入っています”
”安野さんは抗議活動をしているのではない。私はそこがすごく好きだ。彼は『私たちは良い方向に変われる』と言っているのだ”
オードリー・タン氏が行政の世界に転身されたのは、いまの私と同じ33歳の時でした。そんなタイミングで自分がこのような挑戦をできて、彼女からこのような言葉を寄せていただけたことを大変嬉しく思います。
東京は世界をリードする都市になれる、素晴らしいポテンシャルがあると考えています。私たちはもっと良い方向に変われると思っています。
選挙期間中は有権者の皆様の声を聞きながら、東京の未来を一緒に描いていきたい。安野たかひろは、選挙のやり方、政治システム、そして東京の未来をアップデートしていきます。私からの話は以上です。それでは、質疑応答に移りたいと思います。
デモや質疑応答を含めた映像については下記でも配信されておりますので、ご覧ください。
また、選挙に向けて寄付も募集しております。下記のリンクよりご協力をいただけますと幸いです。
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