第三次世界大戦はもう始まっている

野村孝博


 エマニュエル・トッド著、大野舞訳「第三次世界大戦はもう始まっている」を読みました。著者はフランスの歴史人口学者・家族人類学者です。社員の中で著者のファンがいて、もう何冊も本を貸してもらっていますが、本書も貸して頂きました。本書が出版されたのが2022年6月20日、著者が書き終えてどのくらいの期間で出版に至るのかまではわかりませんが、それ以前の状況からの考察として読むべきでしょう。


 冒頭、「自国(フランス)で自分の見解が冷静に受けとめられる望みはなく、最初に取材を受けたのは日本の新聞でした。」と弱気な発言がありました。その「自分の見解」とは「戦争の責任は米国とNATOにある」というものです。これは、日本でも早々受け入れられそうにありませんが、著者からすれば「日本は、私にととって一種の“安全地帯”なのです。」ということでした。いやいや、日本がこの状態なのに、フランスはもっと極端なのかと思うと恐ろしいです。あるいは著者の日本における知名度の問題も、若干あるのではないかと思います。

 1990年2月、アメリカのベーカー国務長官が「NATOは当方に 1インチたりとも拡大しないと保証する」と、ソ連のゴルバチョフ書記長に伝えたとあり、その後、ロシアは不快感を示しながら2度の東方拡大を受け入れたとありました。しかし、これについては青山学院大学の袴田茂樹名誉教授の講演で、「ゴルバチョフ自信が2014年10月16日に『当時NATO拡大の問題そのものが提起されなかった。それは私が責任を持って確言できる』とロシアメディアで述べている」という話が出ています。どちらがどうなのか判定できる立場におりませんが、そうなるとやっぱり主権国家に攻め入ることがよろしくないということになると思います。

 ウクライナの事実上のNATO加盟が「ロシアにとって超えてはならないレッドライン」とか「ロシアにとって死活問題」と書かれているのですが、レッドラインはロシアが言っているだけ、死活問題といっても、ロシアは自国にエネルギーもあるし、現状経済制裁も堪えていないようですから、他国に攻め込むほどの死活問題が発生したとも考えられません。

 「ロシアがソビエト連邦ができる以前から存在していたのに対して、ウクライナは国として実質的には存在していなかったのです。」という話からウクライナの人口流出と、ロシアの、ソ連崩壊からの国力回復も取り上げて、また、「戦争を長引かせてはいけない」という話から、「ウクライナはロシアに併合された方が良い」というような論調に感じられました。。ウクライナは国として存在していないとのことでしたが、キエフ公国とかはどういう位置づけになるのかなんて言う説明がないと今一つ腑に落ちないですね。

 しかしながら、「世界を“戦場”に変える米国」なんて言う話は、確かにそうでそんな米国の傘の下にいる日本にはリスクがあり、更に台湾と中国の問題もあり、それにしてもサプライチェーンでは世界中が複雑に絡み合っていますから、現時点で世界大戦の序章といえばいえるような気もします。

 読みやすいボリュームですが、内容は多岐にわたり、ある程度の前提がないと解釈を間違えそうな本です。もちろん、ここに記載したのも私の解釈ですし、しっかり読みとれた気もしていないので、読まれた方の感想を聞いてみたいです。

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