さいはての彼女 2(ネタバレします)

 一昨日の続きです。

 一つ目の主人公は元ヤンから起業して六本木ヒルズにオフィスを構える女性社長です。この方、人格が滅茶苦茶で10年一緒にやってきた秘書も離れてしまうといったところからはじまりました。秘書の最後の仕事が社長の旅行の手配。そんなことを秘書にやらせるのもよく分かりませんが、面白いことに社長は沖縄旅行のつもりでいたのに、秘書が手配した飛行機のチケットは女満別行きでした。女満別に到着するとBMWを指定していたレンタカーはオンボロの軽自動車です。それしかないので運転しますが、ナビもなくシートを動かすことも出来ず、途上で途方に暮れているとバイクに乗った少女・凪が表れます。凪がシートやミラーの動かし方を教えてくれていると、社長はそのポンコツぶりに怒り心頭、車を蹴りまくるという暴挙に出ます。凪は不憫に思ったのか、社長をバイクの後ろに載せて、知床を滑走、二人の旅が終わるころには、社長は一皮むけて東京に帰るのでした。凪が乗っているバイクがハーレーダビッドソンで、「さいはて」と名前を付けていました。それで「さいはての彼女」なのですね。凪の魅力に取りつかれたところで、一つ目が終了です。

 二つ目は大手広告代理店勤務、35歳で課長になった女性が主人公。三つめは大手デベロッパーの課長、やっぱり35歳。どちらも仕事に疲れていたのか旅に出かけて自分を見つめなおして帰ってきます。炭酸水をブランド名で「オレッツァ」と書いてみたり、「リモウのスーツケース」とブランド名を入れてくるあたりが鼻につきました。

そんな感じの短編が4つつづくのかと思いましたが、4つ目は凪が再び登場。一つ目で凪のことが気になっているところを、2つ目、3つ目でそらして置いて、4つ目でしっかりと回収してくれた感じです。凪がツーリングに出かけたところで、凪の母一人になった自宅に大手広告代理店の部長と名乗る男が表れます。ハーレーダビッドソンの広告を担当しているそうで、凪をキャンペーンガールに起用したいとのお話でした。ここから一気にシンデレラストーリーかと思いましたが、この部長と名乗る男と凪の母親のちょっとした恋愛ストーリーでした。

私自身、バイクに憧れてちょっとかじりましたが、結局今は何もしておりません。北海道などを走ると気持ちが良いと聞きますが、そうした聞きかじりを、凪が具現化してくれたような気がします。また、凪の素朴さに癒されるわけですが、ブランド名が鼻についた辺りも、実は凪の素朴さを強調するための著者の仕掛けなのではと思いました。もう一作、Kindle Unlimitedにあったので、そちらも読んでみたいと思います。

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