銀行(大企業)におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の実態

はじめまして。たーこと申します。
銀行員と言っても所謂融資業務をやっているわけではなく企画セクションにおります。
これからnoteに銀行という巨大組織で起きていることを中心に書いていこうと思います。
(丁度もうすぐ半沢直樹2が始まりますしね!笑)

一つの記事である今回は「デジタルトランスフォーメーション(DX)の実態」についてです。
DXというものに対してこれ迄、組織及び個人としてどのように取り組んできたのかを自分なりにまとめましたので、読んでいただけますと幸いです。

尚、ここに書いてあることはあくまでも個人の考えで、また2020年3月時点のものです。将来見返したら全然考えが変わっていることもあり得ますので、ご容赦ください。
あと、どこの銀行だ?どの色だ?という邪推はやめてくださいね笑

1. 銀行を取り巻く環境

まずはそもそもの銀行のビジネスモデルですが、要は「預金を集めてそのお金を融資する」この金利差で収益を上げる、となっています。
国や地域が成長していれば、資金需要(車をつくるために工場を建てる、動かす、そのためにお金が必要)が出てくるので、銀行の出番があります。

ところが、、、現状をかいつまんでお伝えしますと、

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MUFGの経営戦略

日本の銀行はどこも大体このような変化に晒されています。

先進国は経済も成熟化し、成長力は鈍化しています。
日本の場合は人口減少、少子高齢化としばらく経済成長は期待しづらい状況です。
となると、上述した資金需要が減少傾向になり、貸金の量が減っていきます。

加えて、長期のデフレ脱却を図るべく、金融緩和(2013年からは異次元緩和(黒田バズーカ))が続き、金融市場では低金利が長期化しています。
これにより、融資をしても金利を高く取れない、という状況が続いています。

銀行の収益源:融資の利鞘=(a)貸金量 × (b)融資金利
の内、(a)も(b)も減少傾向にあるわけです。

加えて、異業種からの銀行業への参入、フィンテックスタートアップの台頭、という新たな競合の出現にも晒されています。
異業種といえば、イオンやローソンなどの小売業者や、Amazonや楽天などのITプラットフォーマーなど、既存のサービスで既に囲い込んでいる顧客に対して銀行サービスを提供する動きが見られます。
一方で元々の銀行は規制により他のサービスを提供することは制限されています。
なぜ「スーパーは銀行を営めるのに、銀行はスーパーを営めないのでしょうか」という不公平感を銀行員である私は思ってしまいます。

更に、マネーフォワードなどの家計簿アプリを提供する企業や、AIで融資審査を行う企業など、フィンテック系のスタートアップも多数勃興しており、彼らも業務ごとに銀行の競合になっています。

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MAStand

このように二重苦三重苦、割愛しますが規制も加わって四重苦な事業環境が銀行を取り巻いているのです。

経済成長の鈍化と、異業種の参入というのは、銀行や金融業に限らず、様々な業界でも起きていることではないでしょうか。

2. デジタルトランスフォーメーション(DX)挑戦の号令

このような環境変化により、新しいビジネスモデルへの変革、挑戦が銀行にも求められています。

MUFGの中期経営計画

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SMFGの中期経営計画

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みずほFGの5ヶ年経営計画

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3メガバンク、まあどこも似たようなことが書かれていますが、「デジタル」という単語も共通して出てきます。

MUFGもSMFGもデジタライゼーションと上の概要資料ではなっていますが、よく内容を見ると、
デジタライゼーション:既存の改善系(ペーパーレス化など)
に加えて、
イノベーション:非連続な取組み、新規事業創造(AI、プラットフォームなど)
の両建てで取組むことを想定しているのが分かります。

それまでどちらかというと、というか完全にコンサバティブな考え方、進め方で動いてきた銀行員が、突然「新しいことやって」「イノベーション起こして」「DXよろしく」と経営から言われてしまったわけです。

3. DXに取り組んでみて(途中経過)

大凡2,3年前からDXを中計の柱に掲げて、様々な取組みに挑戦してきました。
この記事の核心にようやく入るのですが、結論から言うと悪戦苦闘しています。。。
以下でいくつか取組みの例をご紹介します。

これ迄とは非連続な領域に取組むということで、銀行だけでは知見も無く難しい、となると異業種の人たちと事業を共創しようと、オープンイノベーションに取り組んできました。
各自の強みを持ち寄って事業を創っていくという考え方です。
例えば、融資に強い銀行×データ分析に強いスタートアップ、などが考えられると思います。

上の例で登場したデータ活用も大きな取組みの一つです。
銀行には他には無いデータが眠っているのではないか。入出金データなどは正に銀行しか持ち得ないデータかと思います。
トランザクションレンディング(AI)なんかが一番分かりやすい例でしょうか。
銀行業務の本丸である融資業務。これ迄はお客さんから決算書をもらって、それを人が分析して、融資をしてきました。今でもこれが主流です。
この決算書分析の方法とは異なり、口座の入出金データ(お金の流れ)を分析して融資するのがトランザクションレンディングです。
口座の入出金データというのは膨大な量があります。
これを人の目で分析するのは困難、ということでAIが審査することになります。

次に紹介する取組みは、アジャイル開発です。
顧客ニーズの変化が早く、プロダクトのライフサイクルが短期化、不確実性が増している今日、
従来の「詳細の機能まで企画を入念に行い、要件定義、設計と、上流工程から下流工程に流れていく」ウォーターフォール開発ではなく、
まずは必要最低限の機能を一つずつ開発し、顧客に使ってもらいながら、改善や機能追加をしていく開発手法ですね。
銀行サービスでも、顧客が使うサービスの開発においては、こちらの方が向いていると考えています。

他にも、これからのサービス開発は、顧客起点に考えなければいけないということで、ご多分に漏れず我々もデザイン思考なんかにも取り組んできました。

それまでは銀行業の中の限られたサービス(融資、預金、決済など)を装置産業的にただただ提供してきた銀行が、いきなりこれらの取組みに片っ端から挑戦してきました。

これまでのところ、(よくよく考えれば当然なのですが)上述の通りあまりうまくいっていないと思っています。

感じるところは、
・他部からの理解が得られない
・取組みが単発
・圧倒的に知見が足りない
この三点です。

他部からの理解が得られない

かのクリステンセン先生も仰る通り、現業を運用している部署は日々会社を支える収益を上げ、経営からは目標を背負わされているわけです。
そんなところに、「新しいことやるから協力してくれ」と言ったって、協力するわけないですよね(大人ですし組織の中で動いているので、流石に頭ごなしに否定されることは滅多にないですが、少なくとも積極的には協力しません)。

取組みが単発

上にあげた取組みはどれも方法論というかhowなわけで、何か明確なビジョンや指針があって、その実現のために利用する手段なわけですが、油断するとそれ自体が目的になってしまうことがありました。
デザイン思考なども難しいなあと思うのが、顧客起点で課題を考えるのはもっともだと思う一方、それで課題やその課題を解決するサービスをただただ積み上げてしまうと、何をしたい会社なのかよくわからなくなってしまいます
オープンイノベーションもそう。スタートアップの皆さんと一緒に色々アイデアを練り始めると、それをメンバー各々が色々なところでやった結果、一見すると飛地のサービスばかりになってしまう、といった現象がおきました。

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(https://marketplace.secondlife.com/)

圧倒的に知見が足りない

最後はこれ。
何をするにしても経験のない人がほとんどで、お作法がわかっていないんですね。
自分たちの努力も足りてないと自覚してます。インプット足りてない。
そして高いお金を払ってコンサルタントを使ったりしたこともありましたが、彼らが優秀なのかどうかもよくわからない(正直あまり優秀ではなかった気がするのはここだけの秘密。経験に裏打ちされた感がなかった。。)。
人ごとではなく我がごととして、本当の意味で伴走してくれる人を見つけることは、何をやるにしても大事ですね。

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(https://blog.buffett-code.com/entry/input)

4. これから(リスタート)

結果、世の中にインパクトを与えられるようなものは未だ生み出せていないし、試行回数も足りてないと思っています。

来年度から改めてDXの取組みを再ブーストするために、以下のことをまずはやる予定です。

・ビジョンの策定
・当社にとっての各言葉の定義(DXとは、イノベーションとは、など)
・トップオブトップの協力を改めて取り付ける
・外部メディアも活用して社内ブランディング

やっぱりビジョンがないと、必死に目の前の課題に取り組んでいると迷ってしまいます。
ログポースがないとゴーイングメリー号も迷います。
もちろん途中で、例えば来年見直しても良いとは思ってます。常にブラッシュアップし続けるものなのかなと。でもまずは決めないとね。

ビジョンにも通じるのですが、言葉の定義があやふやだから、迷いにも繋がるし、他部の理解も得られないのかなと考えてます。
Cnetの大企業各社の取組みをご紹介いただいたセミナーに参加させていただいて、結構印象的だったのがここで、個人的にお話が響いた会社様は、徹底的に考え抜いている印象を受けました。

トップオブトップの協力と外部メディアの活用はかなりhow寄りです。
上述2つがある程度形になったところで、実行に移せればと考えています。

またここら辺の取組みの結果や進捗報告は改めてこのnoteで報告させてください。

同じような悩みを抱えていらっしゃる方、悪戦苦闘中の方、暗中模索中の方、是非お話しましょう。情報交換しましょう。
傷を舐め合い、励まし合いましょう笑
または進んでいらっしゃる企業の方、是非ご指導ご鞭撻お願いします。

初めて記事というものを書いてみました。
拙い文章で失礼いたしました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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