見出し画像

老後の生活設計は、資産活用だけでなく就労と繰り下げ受給も併せて検討を

野尻氏お得意の、資産寿命を延ばすためにはいかに資産を取り崩すのが良いのか、という記事ですが、老後の生活設計の基本は、就労と資産の活用、そして公的年金の繰り下げ受給をトータルで検討する必要があります。

その考え方を示したのが「WPP」で、このアルファベット3文字は、以下のように、高齢期の生活設計をする上での3つのキーワードの頭文字です。

Working Longer : できるだけ長く働く
Private Pensions : 私的年金、資産をつなぎとして活用する
Public Pensions  : 繰り下げて増額した公的年金を終身で受給する

詳しくは、下のnote記事をご参照ください。

野尻氏の記事では、WPPの真ん中のP(Private Pensions)だけを取り上げて論じているので、Work Longer と Public Pensions を併せて検討するとどうなるか見てみたいと思います。

下のグラフは、60歳時点で3000万円ある資産の残高が、取り崩し方によってどのように推移するかを比較したものです。①と②は記事で紹介されていたものですが、取り崩し方の前提条件しか説明がないので、それを基に60歳以降の生活設計を以下のように仮定します。

・60歳~64歳:就労と取り崩しによって生活費を賄う
・65歳~:夫婦2人の年金(月額22万円)と取り崩しによって生活費を賄う

記事では、定額で取り崩す①よりも、定率で取り崩して75歳までは運用する②の方が、資産寿命が長くなると説明されています。

しかし、②でも90歳を超えて資産残高がゼロに近づいていくのは、不安に感じるのではないでしょうか。

資産寿命比較

そこで、65歳から70歳になるまでの生活費はすべて資産の取り崩しで賄い、公的年金を繰り下げるとどうなるでしょう。

グラフの③が示す通り、70歳になるまでは取り崩しで資産残高が急激に減少しますが、70歳以降は繰り下げて増額した年金があるので、取り崩しの額が減り、資産残高の減少が抑えられる形になっています。

また、さらに65歳~69歳まで年間100万円の就労による収入があれば、④で示される通り、70歳までの残高の減少は抑えられ、90歳を超えても1500万円程の資産残高を維持できます。

このように、資産の活用だけではなく、就労と公的年金の繰り下げを併せて、高齢期の生活設計を検討することが重要だと思います。

また、高齢期においては認知能力の低下の問題もあり、その点でも、2か月に1回自動的に振り込まれる公的年金を多くしておく方が、安心ではないでしょうか。

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?