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野村證券のサイトでトンデモ記事が

みなさん、こんにちは。年金界の野次馬こと、公的年金保険のミカタです。

今回は、野村證券が運営するサイトで、「公的年金の不安を煽り、金融商品を薦める」という、古典的な営業手法をいまだにやっているという情報をキャッチしたので、早速見てみました。

記事の内容は、まず冒頭で、「生涯賃金が低下している」というデータを出してジャブをかました後、公的年金について誤解を招くような解説で不安を煽り、最後にiDeCo(個人型確定拠出年金)を薦めるというパターンです。

最後の締めが iDeCoという点については、情状酌量の余地はありますが、土台となる公的年金の解説がいい加減なのは許せません。以下に、その酷さを指摘していきます。

公的年金はなぜ賦課方式なのか

まず、以下の部分で、公的年金が世代間扶養である賦課方式であることを解説していますが、「理解しておくべき」ことが、どうもズレている感じがします(太字による強調は筆者が追加したもの)。

なかなか給料も上がらず、退職金もあてにできないとなれば、毎月、給料から天引きされる厚生年金などに頼りたいところであるが、公的年金はいわば現在の年金納付世代(現役世代)が年金受給世代に仕送りをするようなもの。自分が過去に払った分がそのまま戻ってくるような仕組みでないことは、きちんと理解しておくべきだろう。

公的年金の財政方式である「賦課方式」は、私的扶養を社会化したもので、年金受給者の購買力を将来にわたって維持するための最適な仕組みであることを、きちんと理解しておくべきでしょう。

余談ですが、「自分が過去に払った分がそのまま戻ってくるような仕組みでない」というのは、証券会社が販売している金融商品、特に仕組債など手数料が不透明でリスクが高いものにも言えることです。そう言えば、一晩で紙切れとなってしまった「VIXインバースETN」なんてものもありましたね。

受給開始年齢の引上げというデマ

そして、最もひどい部分が以下の文章です。

国民年金も厚生年金も、あくまでも国が運営する公的年金であるため、自分で決められることはあまりない。それどころか高齢化の影響で年金受給開始年齢のさらなる引上げが検討されている。いつから受給できるのか、いくら受け取れるのかなど、不安が募るばかり

公的年金は、働き方や受取時期の選択によって、自分で受け取り額を決めることができます。さらには、公的年金は、共助の仕組みであり、支え合いの当事者である国民の理解が、制度の持続可能性を高めるための制度改革を着実に実行していく上では不可欠です。

また、「受給開始年齢のさらなる引上げ」ってどこで検討されているのでしょうか。以前の私の記事で再三お伝えしてきた通り、少子高齢化に対応するための給付水準の抑制は、「マクロ経済スライド」という仕組みがあり、これを着実に実行していくことが重要なのです。

こんなデマで不安を煽るのは、大手証券会社として恥ずかしいことですね。

公的年金保険の役割とは

最後の締めの文章で、iDeCoの検討を薦めているところは、多少の救いではありますが、この記事の読者として想定されている「若手ビジネスパーソン」には、まず、公的年金の役割を正しく理解して欲しいところです。

若手ビジネスパーソンであれば、公的年金が受け取れるのは65歳以降のため、まだまだ先の話かもしれない。とはいえ、裏を返せばそれだけ“時間を味方につけて”資金を増やせるかもしれないということ。そしてさらに税制優遇などで受けられる恩恵も加入期間に比例して大きくなる。
先行きが不透明な時代だからこそ、公的年金頼りにせず、自分で老後資金を蓄えておくことが大切。自分自身への仕送りとして、ぜひ若いうちから「iDeCo」について学んでみてはいかがだろうか。

公的年金は、遠い将来に受け取る「老齢年金」だけではなく、病気やケガで障害状態になってしまった時の「障害年金」や、家族を支える働き手が亡くなってしまった場合の「遺族年金」といった、若い方達の生活のリスクに備える仕組みでもあるのです(したがって、正しくは公的年金保険と呼ぶべきでしょう)。

公的年金保険は、老後の生活設計の土台となるものですが、それだけでなく、現役世代における生活のリスクにも備える素晴らしい仕組みであることを、「若手ビジネスパーソン」の皆さんには理解して欲しいと思います。

野村證券のような最大手の証券会社でも、公的年金保険についてはよく理解していないようです。公的年金保険のミカタは、これからも年金トンデモ記事の撲滅を目指して闘います!




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