日経誤報

財政検証に関する報道の誤り

公的年金の財政検証が公表されて、1週間が経ちました。

公表のタイミングがずれて、参議院選挙の後になったことから、悪い結果を予想する向きもありましたが、概ね前回(2014年)の結果と同じようなものであったことから、「2000万円問題」の時ほどの大騒ぎにはなっていないようです。

私が先に書いたnoteでも述べましたが、財政検証の肝は給付水準を向上させるための対策、即ちオプション試算にあります。対策前の給付水準を見て、「楽観的な経済前提でも2割下がる」とか、「今の経済状況が続くようだと、積立金が枯渇して給付水準は大幅に低下する」なんて解説はあまり意味がありません。

これからは、オプション試算で示された、「適用拡大」と「保険料拠出期間の延長」など、公的年金の制度改正の行方に注目が集まり、議論が盛り上がって欲しいと思います。

さて、前置きはこの位にして、今回のテーマは「財政検証に関する報道の誤り」についてです。

「2000万円問題」や「財政検証」について、その内容の一部分を切り取って、批判を行うような報道はしばしば見られ、そのようなメディアの姿勢には辟易としてしまうのですが、今回の財政検証に関して、一部を切り取るとか、解釈を歪めて報道するという以前に、明らかに間違った解説をしていた報道があったので、それについて見てみたいと思います。

下の記事は、財政検証が公表された翌日の大手新聞社の朝刊に掲載されたものです。赤い線を引いたところが誤りの部分です。図に示されているモデル世帯の年金額を「名目額」として、「名目額は今よりも4.3万円増えるが、物価が上昇するという前提なので購買力は下がる」と解説しています。

次に、この記事の元となっている、厚労省が公表した財政検証の資料をご覧ください。記事で解説されているように、2019年度の年金額22.0万円が、2046年度に26.3万円と4.3万円増えています。

しかし、資料の中ほどに記載されている※の注釈をみると、「年金額は物価上昇率で2019(令和元)年度に割り戻した実質額」と説明されています。


そうなんです!

財政検証で公表されている将来の年金額は、物価上昇を加味した実質額であるにも関わらず、それを「名目額」と称して、購買力は低下すると解説した記事は、明らかに誤りなんです。

下の財政検証の膨大な内容をまとめた資料の一番最初のページにも、赤い字で

「モデル年金ベースでは物価上昇分を割り引いても増加」

と説明されています。

残念ながら、新聞での報道は内容の一部を切り取ったとか、趣旨を歪めたとかいうものではなく、明らかな間違いで、それに基づいて「公的年金のみで老後の生活すべてを賄うのはより難しくなる」と結論付けています。

ちなみに、この新聞社の電子媒体の方でも、全く同じ記事が掲載されていましたが、こちらの方は、暫くして図表と記事の解説から「名目額」という言葉がこっそり削除されました。記事の内容が間違いであったことに気が付いているのでしょう。

しかし、紙媒体の方では現時点で訂正記事は出ていないようです。これは、新聞社としてのガバナンスというか真実を報道するという当たり前のことができていないということになり、強く危惧するところです。

一刻も早く訂正記事が出ることを望みます。

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