ゆるやかに目を覚ますとき蘇る二重の溝に沈んでく夢/コメノ ツブ

※ 二重=ふたえ

2022年4月22日(金)のうたの日21時部屋の題「溝」の短歌。

上句と下句とで倒置法となっている。結句が体言止めとなっており、余韻をもたらしている。

初句の「ゆるやかに」は、文法的には「目を覚ます」を修飾しているのだが、意味的には「蘇る」にも「沈んでく」にも掛かっていておかしくない。

浅い眠りのときに見るのが夢である。朝に目覚めたのか、昼寝から目覚めたのか、それとも夜に目覚めたのか。

目覚めた瞬間は目の前の現実の情報が入り込んで来るのだが、先ほどまで見ていた夢のなごりが蘇ることがある。

その夢の行き先はどこかと言うと、二重まぶたの溝の中だというのだ。その溝に沈んでいきかけた夢が蘇る。しかし、それは束の間のことで、すぐまた二重まぶたの溝に戻ってしまう。

夢は、二重まぶたの溝を出入口として、作中主体の脳内に現れては、消えるのである。

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