茉莉花の茶葉がひらいてゆくように手放したかった憎しみがある/toron*

2022年5月31日(火)のうたの日15時部屋の題「憎」の短歌。

「茉莉花の茶葉」とは、茶葉を球形に束ねた工芸茶を示していよう。それは仙桃と呼ばれるもので、茶葉(緑茶)を成形して、茉莉花(ジャスミン)の香りを吸着させたものである。その中に茉莉花などの花を一輪仕込む。

その球形の茶葉は、透明のティーポットの中に入れるとよくわかるが、徐々にほぐれていく。しまいには花もふやけて大きくなり浮かぶ。そうして茶が出来る。数十秒から数分という短い時間の中での変化である。

花が開く様子は、手のひらを開くさまにも重なる。作中主体の手はというと、何らかの憎しみを握りしめている。憎しみを手放したかったのだが、できなかったという悔恨の念がある。未だにその憎しみがあるため、それに苦しめられているのであろう。だから、本当は手放したかった、しかしそれができなかったということだろう。結句「憎しみがある」は、断定として強く響き、厳然と掌中(心の中)に残っている憎しみを表し得ている。

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