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少しずつ野原に還る公園の錆びた遊具に憩う影たち/月硝子

2022年4月19日(火)のうたの日15時部屋の題「野」の短歌。

高度経済成長期以降に造成された周縁地域の団地などの住宅街が立つ前は、どこも山野や平原であったはずである。

現在、団地では、住民の高齢化が見られている。都心部のマンションに暮らし、職住近接とするというライフスタイルが効率的であると考える人々が増えてきたためだ。

すると、「少しずつ」ではあるが、古い団地の公園に子どもが遊ぶ姿は見られなくなり、草刈りや清掃活動も頻繁には行われなくなるだろう。公園の遊具の点検・整備も後回しになってしまうだろう。

遊具は錆びていき、公園がかつての野原のように草木が伸び放題になる。遊具はそこにあり続けるので、影も変わらずあり続けるのだが、草の鬱蒼と茂ったところに影ができることになる。

影を擬人化すれば、自然に還るということは心地の良いものなのだろう。野に戻りつつあるところで影は憩う。いくつもの遊具があるので影は複数である。影は人が憩う場所であるはずなので、影が憩うという擬人法が新しく感じられた。

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