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眠たげに枯れたパンジーに泣かされるいとしい猫背の真似はよしてよ/三〇五

2022年4月27日(水)のうたの日19時部屋の題「眠」のうたの日初出詠の短歌。

「眠たげに枯れたパンジー」と「いとしい猫背」との類似を指摘するという平板なやり方でなく、パンジーを擬人化し嘆きの対象にして、「真似はよしてよ」と実際に、もしくは心の中で話しかけているところがこの一首のおもしろいところ。

パンジーは枯れてきても鮮やかな色を保っている。それを「眠たげ」と表現した。春の日差しを浴びて疲れた感じだろうか。パンジーは群がって咲くが、どれも「眠たげに枯れ」てしまっているのだろう。

そんなパンジーが皆して「いとしい猫背の真似」をしている。「いとしい猫背」は、作中主体にとっての大切な存在だろう。パートナーや友人、家族、はたまたペットかもしれない。その存在が猫背になっているさまがパンジーから想起された。

作中主体にとっての大切な存在は、どんな理由で猫背なのだろう。もともとの姿勢なのか、落ち込むようなことがあって猫背なのか、それとも老化により猫背なのか。眠たげで猫背というのが、そのいとしい存在の特徴なのかもしれない。

「真似はよしてよ」という結句は、心底嫌がっている感じには取れない。なんでよりによってという軽く呆れた感じだろうか。しかし、「泣かされる」のであるから、「いとしい猫背」の存在は、もう作中主体の近くにはいないのかもしれない。それを思い出させたパンジーに罪はないが、作中主体のやり場のない悲しみはパンジーに向かうよりほかない。

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