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梅雨を待つ紫陽花 いつも快活な新入社員が空をながめる/遙禽すみ

2022年6月10日(金)のうたの日15時部屋の「自由詠」の短歌。

紫陽花は、ピンク、白、青紫といろいろな色がある。また、色が変わるので「七変化」とも呼ばれる。そのため、紫陽花の花言葉は、「移り気」「浮気」「無常」。梅雨の時期を代表する花だ。

一首の舞台は、まだ梅雨入りしていない地域である。梅雨の前に紫陽花が咲いたのだろうか。紫陽花は梅雨を心待ちにしている。その年の天候次第で、梅雨入りと梅雨明けは決まる。梅雨の定まらなさと紫陽花の色の変わりやすさとは相性がいい。

作中主体は、ある会社の新入社員を観察している。いつもであれば、快活に振る舞っている新入社員。今年、入社したのだろう。まもなく梅雨の訪れるある日、新入社員は空を眺めていた。快活さはなくなり、何か物思いにふけっているような感じである。その新入社員の変化にも、「無常」が表れている。新入社員に何があったのだろうか。作中主体はその後、新入社員に話しかけただろうか。情景の前後のことを想像したくなる一首だ。

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