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菜箸を持つ祖母の手がうつくしく詰めるおかずは花にも見えて/土井みほ

2022年5月26日(木)のうたの日13時部屋の題「弁当」の短歌。

題「弁当」は詠み込んでいないが、「詰めるおかず」で弁当のことだとわかる。

「菜箸」と「花」とは、和歌で言うところの縁語のような働きをしている。

第三句「うつくしく」は、技巧的だ。

まず、ひらいている(ひらがな表記にしている)ことで、たおやかな様子が醸し出されている。

また、「祖母の手がうつくしく」とも取れるし、「うつくしく詰めるおかず」とも取れるようになっている。そして、念押しの「花」の直喩。祖母の手も、しぐさも、おかずの詰め具合も、おかず自体も「うつくしく」あるのだ。

言いさしの結句「花にも見えて」は、弁当が作られている過程であるということを示し、「うつくしさ」に浸る余韻ももたらしている。

食べることに焦点が絞られがちなお題で「見ること」に重きを置いた一首。

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