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クセのある字の書き込みのある本を旅先のブックオフで買う君/鴨野ユーリー

2022年6月16日(木)のうたの日13時部屋の題「ぶっ」の短歌。

旅先では、その土地ならではの物を買うのが一般的だ。本であれば、書店の郷土本コーナーなどが旅人の目当てとなるのではないだろうか。

しかし、作中主体の知っている「君」は違っている。新品の本を売っている書店ではなく、中古本を売るブックオフに足を運ぶ。

そこで郷土本を探したのだろうか。そうである可能性もあるし、そうではなく単に自らの興味関心に合った本を探した可能性もある。そのとき、「君」が大切にしていることは、書き込みのある本を選ぶということなのだろう。書き込みがあるということは、唯一無二の本であるということだ。手放した人が線を引いたり、チェックをつけたり、言葉を書き込んだりしていた本だ。おそらくはその土地の人が書き込んで、手放したのだろう。

「君」は、その中でも「クセのある字の書き込み」のある本を選んだ。書く文字には、その人の性格が表れると言われる。「君」がそのクセ字に惹かれたのだとすれば、「君」とクセ字の書き手とは相性がいいかもしれない。中古本を通して、「君」は、クセ字の書き手と心の交流をすることになるだろう。「君」は、宿で、公共交通機関の中で、クセ字の主との心の交流を楽しむのだろう。

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