リフォームの見積もりが有料であるべき理由
同じものを同じサービスで買うなら、
できるだけ安く手に入れたいですね。
そのためにチラシをチェックしたり、
ネットショッピングで最安値を検索したり。
これらの作業により支出を抑えることができたなら、
これは立派な労働ともいえますね。(^^)
でも、何でも安ければいいかといえば、
必ずしもそうではありません。
ちょっと高いとわかっていても、
デパートなどに買い物に行くこともあります。
実物を見て確かめたい、
店員さんのアドバイスを受けたい、
間違いない品質の商品を買いたいなど、
「モノを手に入れる」だけでない、
「プラスアルファのサービス」が欲しい場合もあるんですね。
欲しいサービスにお金を支払うのは当然と思うから、
高くても買うのでしょう。
そうやって日々、私たちは「お金を払う」ことの対価を考えながらモノを買っています。
ところで、私が身を置くリフォーム業界の話をします。
リフォームは、経験したことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、「工事契約をするまでは費用を請求しない」としている業者がほとんどです。
建築は、どの仕事も完了してから請求するというのが一般的なので、
それにならって、見積りの段階ではまだモノをつくってないので請求できない、という慣習なのかもしれません。
では、リフォーム業者は契約までにいったいどんな仕事をしているのか?
というと、
① ご要望のヒアリング
② 現地の調査(採寸・劣化状況)
③ リフォームプラン作成
④ 見積書の作成(積算)
どんな規模のリフォームであっても、この4つの仕事は必ず発生します。
すべてを一人で行う業者もいるし、それぞれの仕事を分業して複数人のチームで対応する業者もいます。
これらがどの程度の仕事量になるかというと、
例えば1000万円程度のリフォームの場合、関わった全員の時間を合計すると、最低でも30時間を軽く上回ります。
こんなに大変な労働ですから、みんな無料で働いているとは思っていません。契約を前提として、お互いの信頼関係のもとに働いているわけです。
もちろん、
要望をヒアリングの段階で予算が合わないことがわかったとか、
事情が変わってリフォームの予定自体がなくなったとか、
契約まで至らない場合もあります。
そのような、お互いに非がない状態であれば、お客様に
「これまでの経費を請求させてください」
なんて話になるなんて、聞いたことがありません。
リフォーム業界とは、そんな、愛に溢れる業界だと思っています。
このように信頼関係や思いやりに支えられている
「見積りまでは費用をいただきません」
というスタンスですが…
最近は、
「見積りは無料だから、なるべく複数の業者から見積りを取って、しっかり比較検討しましょう!」
という考えが、どうやら「常識」とまで言われているようです。
昔から「相見積り」という言葉は業界内には存在していましたが、
それは客側がリフォーム業者を欺くような、
どこか後ろめたい行為と捉えられていました。
それが、インターネットの普及によって登場した
「見積り比較サイト」によって、新しい常識が作られてしまいました。
無料なんだから、比較検討しなきゃ損!
という訳です。
いかにも客側に立ったかのようなセリフと、
「正々堂々と」相見積りを申し込むことで後ろめたさを払拭させる
というやり方、
そして大資本による盛大な宣伝により、
世の中に浸透させるのに時間はかかりませんでした。
でも、リフォームというのは、ただモノを売っているわけではありません。
プランや調査など、見積りまでのサービスも、販売する商品の一部です。
お客様に呼ばれ、オーダーされて動くのです。
比較検討されたい気持ちは否定しませんが、動かした人たちの経費は支払っていただかなければ、ビジネスとして成り立ちません…。
じゃあ見積りを有料にすればいいじゃん?
という話なんですが、ここがリフォーム業界の弱いところですが、
業界全体が無料で行っているのに自分だけが先陣を切って有料にすれば、
新規のお客さんを受注できなくなる…。
実際に有料化に挑戦した業者もいますが、
やはり集客が鈍り、結局無料に戻ったり…。
で、有料化は難しいとなると、上司は言うしかない訳です。
「提案力を身につけろ!
プレゼンスキルを上げろ!
競合に勝って、受注率を上げろ!」
でもね、冷静に考えて欲しい。
受注率は、3社相見積りなら33%、5社なら20%です。
延べ30時間の労働が、67%もしくは80%の確率で0円になる。
この状況で一生懸命全力で仕事をするとどうなるかというと、
全力でやるほど、失注した時に、心が折れます…
私も、折れました…
私は、リフォームの仕事が好きです。
リフォーム後に、お客様が喜んでくださるのが
何より嬉しく思います。
でも、これ以上働けないと思ってしまいました。
私も家族を養っていますし、水を飲んで暮らしているわけでもありません。
0円では生活が成り立たないのです。
一時期、リフォームから完全に離れました。
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この度ご縁があって、リフォームの仕事を再開させていただくことになりました。
とても嬉しく思っていますし、また一人でも多くのお客様に笑顔になっていただけるよう、全力を尽くしたいと思っています。
でも正直、また心が折れないか…?という不安も拭えずにはいます。
リフォーム業界における適性な労働環境とは、
以下のようなことではないかと考えています。
・働く側がスキルアップできる、時間と心の余裕を持てること
・無理なノルマによって精神を追い詰めないこと
・お客様も働く側も、winwinの関係を築けること
これらを整えるためには、「無料をやめること」が一番の近道だと思っています。
もちろん業者の側が環境を整えていくべきだと思っていますが、もしみなさんにも業界の裏側を知っていただき、タダ働きはできるだけさせない、依頼するなら対価を支払うなどを意識していただけたらと思い、記事にさせていただきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
リフォーム業界が、誰もが生き生きと働ける労働環境となりますように。
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