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Don’t Laugh at My Romance

寒い季節になると必ず観たくなる映画が「人のセックスを笑うな」だ。
映画も小説も、一度観たり読んだりするともうそれきりになる事が殆どの僕だけれど、この映画は何度も繰り返し観ている。
長回しの多い作品だし、洋画と違って物語の大きなうねりがないから、苦手な人も多いのは知っているけれど、僕はこれが大好き。
こういうニュアンスの勝負って、日本人の感性にビビっと刺せる部分があるから出来るんだろうなぁと思う。
男の持つウジウジ感も、チクチクする感じも、もやもやする感じも、どうしようもなさも、とてつもないピュアさも、煙草の煙と共にモクモクと浮き上がってくる。
きっと女性が観ると(勿論、観る人によるが)また違った受け取り方が出来る映画なんだろうな、とも思いながら。

かつて高校生だった頃に、メグ・ライアンにハマった僕は、ろくな恋愛もした事がないくせに、誰かを好きになる事に躓いた気になって、大真面目に「恋愛とは」の答えをメグ・ライアンのラブストーリーやラブコメを全て観て、そこに見出そうとしていた事がある。
勿論、そこに求めていた「答え」はなかったのだけれど、メグ・ライアンにハマっていた頃の僕は充実していた日々を送っていた。なんせ、レンタルビデオ屋から借りてきたビデオテープやDVDを回せば、大好きなメグに会えたのだから。
という、今となれば笑ってしまうような日々を送った僕は、この「人のセックスを笑うな」という映画を観て、見事、今度は「永作博美」という女性にハマった。
それはもう結構「恋」に近いモノがあった。
「ユリ」という役と、それを演じたのが永作さんだったからこそ、憧れたり惹かれたりした部分が大きいと思うが、それからの僕は「気球クラブ、その後」「好きだ、」を観て、そこから永作さんの出演していた月桂冠のCMを観漁り、歌手、アイドルとしての「永作博美」を辿る。
「ribbon」のCDと「永作博美」のCDと、「HIROMI NG」名義の唯一のシングルも手に入れて、浴びる程聴いた。

閑話休題。
そんなヨコシマな入り方をした映画だけれど、ちゃんと原作も読んだうえで、しっかりこの作品のファンになっている。
そして、何度も言うが、寒くなってくるとやっぱり観たくなってくる。
夜中、部屋の灯りを消して、暖房もつけずに毛布を被りながら観る。
冒頭の長回しの画の中にスーっと浮いた風船をぼーっと眺める。
池袋のロサのロビーに行きたくなる。
夜中のファミレスに行きたくなる。
みるめくんを真似して白いフーディーにダッフルコートを着てみたくなる。
それから、「歳上の女性ってカッコいい〜♡」なんて思いながらコーヒーを啜る。
映画を観た次の日には「人のセックスを笑うな」のサントラを聴きながら冷えた空気を吸い込みに、表へ出てみる。
今年もそろそろそんな季節になってきた。
わくわくする季節。

当時何度も練習したけれど、僕は未だにユリさんのようにブックマッチをカッコよく点火させることが出来ない。

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