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真面目な売れっ子ハンドメイド作家が陥る疑心暗鬼とストイックな呪い

今日で年内のコンサルティングが終了しました。

今年も沢山の人のサポートができ、とても幸せでした。
成績的にもまずまずで、1000万プレイヤーをはじめ、過去最高の売上高を記録した方も増え、企業案件、出版など、クライアントの皆さんの活動が大きく広がった1年となり、わたし自身も法人化して充実した年となりました。


今朝、SNSをチェックしていたら、こんな記事が流れてきました。

この記事を書かれた鳩みう子さんは、有名なハンドメイド作家の方で、わたしも何年か前のイベントで、ビーズでできたかわいいブローチを購入したことがあります。

職業柄、ブースや商品、価格帯、ご本人などを拝見することで仕事として利益を出されている方かどうか、だいたいわかります。
世界観の統一や価格帯の設定、商品量、ご本人の衣装などをみても、仕事としてやっていらっしゃる方だというのはすぐにわかりました。


数ヶ月前、数名のクライアントさんから鳩さんが活動を休止するということを聞き、以前相談を受けた「売れっ子ハンドメイド作家」さんのことが頭によぎりました。

そして今朝、上記の記事を読んであの時のことを思い出し、やはり真面目ゆえに活動を休止するところまでご自身が追い詰められてしまったんだなぁと感じました。


今日は個人が特定されないように少しフェイクを交えながら、以前ご相談を受けたAさんのことを書いてみようと思います。

これは誰にでも起きうることなので、参考にしてもらえると嬉しいです。


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今から2〜3年ほど前、東京では対面でコンサルティングをしていた頃の話です。

単発でお申し込みいただいたのは、わたしも名前は知っていた有名なAさん
商品もセンスがあって素晴らしく、こういう方に申し込んでもらえるというのは光栄だなぁと思いました。

その日はとあるレンタルスペースの個室を予約しており、そこで相談を受けていたのですが、Aさんはラストの時間でした。

最初は緊張されているのか、表情も硬かったのをよく覚えています。


聞き取りをしようとすると、Aさんはエクセルで作ったであろう売上管理表を出してくれました。

「まず、これを持ってきたことがすごい!中を見なくても優秀です」


そう言うと、Aさんはびっくりしたような顔から、緊張がほぐれたような顔になりました。おそらく、コンサルタントに相談する=悪いところを指摘されまくるのではないかと思い込み、緊張していたんだと思います。

で、肝心の中身ですが、これも優秀。

細かい数字もきっちり管理され、むしろわたしの方が見習った方がいいレベル(笑)
売れっ子と言われる人の中でも数字の管理は全然と言う人も結構多いので、Aさんは本当に優秀だと思いました。


そこでわたしは、こんな質問をしました。

「月の稼働時間ってどのくらいですか?」

その質問をした時に、Aさんの表情はみるみる曇り、黙ってしまいました。

なので

「もしかして、年中無休のブラック企業ですか?」と聞くと

「はい・・・睡眠時間もほとんど取れていません」と言う返答が。


そこで

「売上落ちるのが、怖いですか?」と聞くと、Aさんの目から大粒の涙がこぼれました。
肩を震わせて泣いている姿に、わたしももらい泣きしそうになりました。


「絶対これで食べていくって決めて必死に頑張ったら売れるようになって、嬉しくてまた頑張って、そしたらお客様が褒めてくれて、いろんなオファーをもらって、嬉しくてまた頑張って・・・
ある日ちょっと疲れてしまったので、1週間ほどおやすみをしたんです。
そしたらその月の売り上げが半分近くになって、なんでだろうって思っていたら、似たようなテイストの人を見つけて、その人が今月売り上げが最高だって書いていて、それからはもう休むのが怖くて怖くて・・・


おそらく売り上げが大きく落ちたことも似たようなテイストの人の売り上げが良かったのも単なる偶然だったと思います。

でもAさんにとってそれは偶然ではなく必然で、休む=売上が落ちる=お客様が離れると言うループの呪いとしか思えず、苦しかったのでしょう。


Aさんが落ち着いたところで、アドバイスをしました。

・稼働時間は160時間〜200時間を基本にすること(繁忙期など特別な時を除く)

・ひとりでやる限界に来ているので今後の方針を決めること
(一部を外注するorこれ以上売上を増やさず現状維持をする)

・売上は年間で捉え、月別の数字に振り回されないこと

利益率の低い人気商品の見直しをすること

自分で稼げていることを誇りに思うこと

他にもいくつかアドバイスをさせていただいて、この日は終了しました。


その日Aさんからきたメールには、大人になってから泣くことがほとんどなかったのに、ここ最近は何もないのにすぐに泣いてしまう自分を責め続けていたことが書かれていました。

病んでいる自分を認めたくなくて、隠したいと思うほどに涙が出てくる・・・そんな自分を肯定してくれるとは思っていなかったらしく、わたしが平然と「売上落ちることが怖いなら涙も出てくるの当然ですよ」って言ったのが、すごくびっくりしたそうです。

結びには受けて良かった、考え方が変わったと言ってもらえてとても嬉しかったです。


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それから何度かご相談を受け、方向性を整えるお手伝いなどをさせていただきました。もともと優秀なのですぐに改善でき、今も絶賛ご活躍中です。

Aさんの一件で、売れっ子の方でも売り上げが落ちる怖さから身体を壊すギリギリまで働き詰めて病んでしまうんだと言うことを確信し、売上だけでなく稼働時間の把握の重要性や年商で捉えることについても繰り返しアナウンスするようになりました。


自分の力でビジネスを育て仕事にしていく過程で、迷ったり悩んだりすることは誰にでもあると思います。

真面目な人ほど何かネガティブなことが起きた時、客観的になれず「自分のせいだ」と思い込み、間違った努力をしてしまいがちです。

真面目だからこそ、努力家だからこそ仕事にできたのは言うまでもありませんが、ネガティブなことが起きた時に、自分のせいだと思い込んで疑わないのは、事実を正確に捉えているとは言えません。


せっかく生まれ持った真面目で誠実だと言う強みを活かすためにも、ネガティブなことが起きた時に一度立ち止まって客観的に自分を見つめ直す勇気を持って欲しいなと思いますし、それをアシストできるような情報共有をして行きたいなと思う年末なのでした。






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