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00. 時には旅の話を


いま旅行が話題である。

全世界的な新型感染症拡大の真っ只中にあり、4月ごろから「海外に行くことができなくなったぶん国内旅行の需要が増えるぞ」とか「マイクロツーリズムで近隣の魅力を再認識していこう」といったような話題を多く聞くようになった。

Go Toキャンペーンはさまざまな議論を巻き起こしているし、そもそもGo Toの如何にかかわらず、特に首都圏に住む人は県を跨いで移動していいものかどうかと頭を悩ませ、逆に地方では首都圏から旅行者を迎えることのジレンマを抱え続けている。

旅行をすることに関し、行くのがいいのか悪いのか、仮に行くのであればどのようなかたちがいいのかがこれだけ語られるのは僕の人生では初めてのことだ。

しかし、今回のような感染症の拡大でなくとも、大規模な天災、デモや暴動、国同士の緊張関係の高まりで人々の行き来ができなくなるたび、観光産業は大きな打撃をうける。誰しもが安心して行ける旅行とは、もともと平和という薄氷の上に成り立っている。


そんななか、僕たちのように観光業に直接携わる人たちは、「なぜ人は旅をするのか」という根源的な問いについて考えるいい機会にもなっている。

旅行の仕方は時代に応じてさまざま変化してきた。近頃は国内でも個性的で魅力ある宿が増え、宿泊がただの手段ではなく目的となりつつある流れの強まりを感じる。

一方で、「若者が旅をしなくなった」という話もちらほらと聞く(もっともこの文脈で言われる「旅」とは、特に期間や目的地を定めずあてどなく世界を放浪するバックパッカースタイルの旅を指しており、一般的に想像する旅行や広義での旅とは少し外れるのかもしれないけれど)。


以前と同じように自由に旅できる状況が帰ってくるのはもう少し先になりそうだけれど、現状の旅の是非は置いておいて、自分にとっての旅行とは、旅とはどんなものだったのかを、実際にした旅行の記憶を思い返しながら、ときどき書き起こしていこうと思う。

僕は世界を旅したバックパッカーではないので、あまりスケールの大きな話はできないのだけど、これから書くことが誰かの、いつかの旅のヒントになったら大変嬉しいです。


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