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タイと日本のコロナ感覚の違いはなに?

 ボク自身が持つ2002年の7ヶ月間が日本滞在最長記録だったが、今回の日本滞在はすでに半年になり、2000年以降の最長記録が更新されようとしている。タイも対策優等生とも言われているにも関わらず、ここのところ毎日、市中感染者数や死亡者の数の記録更新をしているところだ。日本の方が圧倒的に多くて、人口比で考えてもタイはまだ少ない方ではあるけれど、感覚的にはタイも危機的状況だと思う。

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 この前、日本の緊急事態宣言を5月末まで延長するというニュースを見ていて、タイと日本の対策や考え方が大きく違うと改めて感じた。

 タイにいると日本の対策が後手すぎて、蔓延しない方がおかしいレベルだと感じていた。日本人の感覚がおかしすぎる。しかし、滞在していて慣れてくると、タイが厳しすぎるのかなとも思う。日本のように誰もが人のせいにして(今回は主に政府のせいにしているのかな)、どんどん感染者を増やしていることに見慣れてくると、自分ひとりが協力するのは馬鹿らしいと思うのは仕方がないことだ。でも、今回のニュースのコメンテーターらの会話を見て、日本はコロナで落ちるところまで落ちてもいいということなんだろうなと思えてきた。

 日本のニュース番組ではコメンテーターらが「月末まで延長するその理由を政府に問う」とか言っていた。本気で言っているのかとボクは耳を疑った。たぶんタイの対策施行の手法に慣れているからというのもあるとは思う。いずれにしたって、月末まで延長する理由なんてたったひとつしかないと思うのだが。

 もちろん、延長によって失業者や路頭に迷う人はさらに出てくるだろう。でも、それはタイも同じだ。タイの場合は守らない場合には罰金や、なんなら禁錮刑もあるわけで、より厳しい。多民族国家で、そこまでしないと統制が取れないという事情がタイにはあるが、日本や欧米は強制されない限りは従わないし、そもそも法律や憲法で強制ができない。そして、蔓延すれば、それはほかの誰かのせいということになってしまう。

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 そもそもタイの場合、もしくは東南アジア全般にそうなのかと思うが、法令とか以前に別の理由もあって、だからこそ強制を実施することができ、かつ表面上だけとはいえ国民の理解も得られる。そして、結果、蔓延が日本や欧米よりも抑えることができていた。

 まず、いいか悪いかは別にして、東南アジアは格差社会であるし、いまだに権力というものがあって、それに従わない者にはなんの得もない死が待っているだけというのが当たり前という社会環境がある。だから、政府がこうだと言えば、もうそれに従う。長いものにはとりあえず巻かれるしかない。

 それから、日本や欧米ほど医療が発展していなかったというのもあろう。タイは近隣諸国の中ではかなり医療は発展している。ジャンルによっては日本よりも優れているとも言われるほどだ。ただ、一般タイ人にはそのイメージが薄い。高等医療は結局金がないと享受できないからだ。だから、全体的には医療が今も行き渡っていないというのも大きい。

 しかもタイは高温多湿で、日本ではまず見ることのない、よくわからない病気も多い。シリラート病院の死体博物館に行けばそういった日本では見ない病気の標本があったりするくらいだ。そういった見えないもの、今回では病原菌などに対する恐怖心は以前から大きかった。日本は知らないが、タイでは去年の2月の時点でマスク着用者が非常に多かったのもそういった理由もあったのだろう。タイの非常事態宣言は去年の3月26日に最初に出ているので、それよりもずっと前から一般人でさえマスクをしている人が多かったのだ。

 ちなみに2003年ごろに中国圏で大騒ぎになったSARSのときは台湾では見た感じで99%の市民がマスクを着用していた。同時期のタイではそういったことはなかった。コロナのような異常な蔓延状態ではなかったというのはあるが。一方、2019年くらいから乾季に入るとPM2.5問題が取り沙汰され、このころからマスク着用者が乾季には増加していた。バンコクの空気が悪かったのは前からだと思うのだが。

 PM2.5に関しては以前と今の大きな違いはネット環境の発達かとも思う。去年の2月からマスク着用者が多かったのは、やっぱりネットで海外の情報がすぐに入ってくるようになったというのも大きいかと思う。タイは特にSNSの利用者は日本よりも多いとされる。最近はタイ政府の発表もネットの方が早いはず。電子マネーの施策などもスマートフォン保有が当たり前のことで、持っていない人、使えない人は最初から眼中にない。こういったスピード感がベースにあることも、政府のコロナ対策に国民がついていける事情なのかもしれない。

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 入国に対する徹底度合いも日本とタイでは温度差が激しい。タイは非常事態宣言の直前、2020年の3月21日前後にはすでに国境を閉鎖し、空路でもほぼ入国ができない状態になっていた。非常事態宣言が出た時点では旅客航空機は一切の発着できなくなっていたほどで。

 一方、ボクが日本に来た時点、2020年9月下旬は空港で検査をするものの、強制隔離はなかった。一応、一般交通機関の利用はお断りとしていたが、誰が見張っているわけでもないので、使おうと思えば使えた。

 それから、空港の検査時に保健所との連絡にアプリだったかLINEを使うように言われたが、なぜか海外SIMの場合はスマホを保有していない扱いになった。そのケースでは保健所が毎日2週間ほど滞在先に電話をするので、それに体調を報告せよとのことだった。しかし、実際に保健所から電話が来たのは1週間後だった。保健所の人曰くは、空港からボクの書類が回ってきたのが1週間後だったそうだ。

 さらに、その電話は別にボクが出なくてもよくて、誰かが出て代わり答えるのでもいいという。ずいぶんといい加減だった。幸いボクは引きこもりライターなので、言われなくても外に出ることはなかったけれども。

 今は入国に関しては日本もそれなりに厳しくなったようだ。それでもタイやベトナムと比較しても厳しさはまだまだ。ただ、タイやベトナムは厳しくしてはいるものの、強制隔離中の検査では陰性だったのに、市中に出たとたんに発症というケースも出てきていて、もはや強制隔離してもしなくても同じなのかもしれない状況になってはいる。

 タイは4月1日から日本人の入国はワクチン接種などの条件を満たしていれば強制隔離が短縮され、かつ隔離中にホテル敷地内であれば散歩などが可能になった。しかし、3月末のトンローのバーでのクラスター感染がタイ全土にまで広まってしまい、いわゆる第3波と呼ばれる状況になったことを受け、隔離期間短縮も取り止めとなった。

 サムイなどのリゾートを抱えるスラタニー県ではふたり以上での飲酒には罰金か禁錮刑、もしくはその両方が科せられることになった。ひとりで飲むだけしか許されないという厳しさで、しかも守らなければ最大で2年も刑務所行きになる。罰金でも4万バーツ(約14万円)と高額だ。

 こう見ると日本はまだ対策が甘い。だからこんなにも蔓延するのだけれども、だからといって国民が協力しない。個人個人に感染対策のポリシーがあればまだいいが、そういうのがあるわけでもないし。こうなったらみんなで仲よく感染して、むしろ感染状態が通常ということにすれば議論する必要はないのかなと思う。まあ、世界中の国々が日本人を入国禁止対象者にするだろうけどね。

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