見出し画像

タイ人は本当に時間にルーズなのか?

 1998年、初めてボクがタイに来た年はまだBTSスカイトレインも橋脚を建設中で、駅舎すらできていなかった。公共交通機関はバスしかなく、今ほど法令遵守の精神がなかったので、事故も多かった。外国人はタクシーやトゥクトゥクを利用していたが、タイ人学生などは基本はバス移動が当たり前だった。

 2018年くらいからバンコクの渋滞悪化が世界レベルでトップクラスだと言われるようになった。主に海外のメディアによる記事であるが、ボクからすればそんなに大したものではない。2006年ごろまではもっと渋滞はひどかったからだ。

 そんな環境だったこともあり、バンコクでは待ち合わせそのものがうまくいくことがほとんどなかった。携帯は98年にはすでにあったはずが、物価的に端末を買える人がまだ少なくて、普及率はあまり高くなかった印象だ。ノキアなんかは5000バーツ前後だったと思うが、当時の物価からしたらなかなか高級だった。そんなこともあって、むしろ30分くらいの遅れは遅刻ではなかったくらいだ。

 だから、タイ人は平気で遅刻するし、待たされてもそれをなんとも思わない。互いに寛容だ。その精神は今も続いていて、遅刻はいつだって当たり前のことである。

 とはいえ、すべてに遅れがあるわけではない。在住外国人の多くがタイ人は時間にいい加減だと思っているが、本当にルーズなのだろうか。

画像1

 タイでは誰でも大なり小なり時間にルーズになる。先のように公共交通機関の遅延はよくあるし、交通状況が刻一刻と変化していて、時間を読むことが難しい。今でこそ電車があるが、それもよく遅れるのだ。

 まだみんながバスを利用していたころ、タイ人と待ち合わせて遅刻してきても、渋滞がひどかったから、という言い訳をよく聞いた。それならば、その渋滞を見越して早く家を出ればいいのではないか。そう思ったものだ。しかし、長く暮らすことで段々わかってくるのは、そういう問題ではないということだ。

 刻一刻と変化するので、遅刻を見越して早く家を出ると、思いっきり早く着いてしまうこともある。そうなると、それはそれで待たなければならなくなる。遅刻しそうなタイミングで出ても時間通りに着くこともあるし、とにかく読めない。

 最終的に、最も合理的な出発時間は交通状況を加味せず、通常の状態と仮定して家を出ることになる。遅刻したところで怒られることはない。みんなが遅刻するからだ。

 そもそも、日本人が時間に厳しいのは教育の賜だからだと思う。それがいいか悪いかは別として。学校に遅刻すると門が閉められ、罰が与えられることが多かった(今の学校の状況はわからないが、少なくとも40代以上はそうだったのではないか)。

 タイの学校はそういった時間的な厳しさがない。もちろん遅刻が過ぎたり欠席が多ければ単位取得ができなくて、小学生でも留年がある。それでも、日々10分20分の遅刻はあってないようなものだ。

 だいたい教師自身がそのあたりをあまり気にしていない。彼らもまたそう育ってきたからだ。父兄参観や学芸会なども時間通りに進行しているところをボクは見たことがない。なんなら、演目でクラスとクラスが交代する時間を設定するのを忘れていたことだってある。

 そういう環境で育ってくれば「時間」に対する姿勢が日本人とは大きく異なってくるのは当然だ。最近は改正されたかもしれないが、10年くらい前は運転免許証が失効しても3年間は特になんの問題や追加書類、追加講習もなく更新ができた。要するに、免許の更新は期限から3年はOKだったわけだ。これくらい時間や期限に対して考え方が違う。

 しかし、すべてのタイ人、すべての事柄が遅れるわけでもない。飛行機は世界と同じように運航するし、朝8時と夕方6時の国旗掲揚などは時間通りだ。とはいえ、新年のカウントダウンがテレビ局によって若干違ったりはあるけれども。要するに、王室関係は時間通りに行われる。

 また、軍隊も時間に厳しい。当然だが、起床時間や集合時間などをしっかり、きっちり守る。あるときボクはなにをどう間違ったのか、タイ陸軍の軍事訓練に参加させられたのだが、時間など嫌になるほどきっちりしていた。

 結局のところ、タイ人もやればできるのだ。タイ人の気質そのものがルーズなのではなく、生活習慣的にきっちりする必要がないだけなのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?