見出し画像

昨日から酒類販売が解禁

 タイは4月10日からアルコールの販売が禁止になっていて、スーパーやコンビニなどでビールやウィスキーが販売できないようになっていた。同時に非常事態宣言に伴うそのほかの規制は自動的に5月末まで延長になってしまい、巷ではアルコール販売もそうなるのではないかと囁かれていた。

 そして、数日前に酒類販売規制が延長されることが発表されていたが、急遽撤回され、昨日(5月3日)から販売が可能になった(ただし一部の件では依然販売規制が続いている)。

画像1

 タイは不思議とアルコールに対する嫌悪感が強い。「タイ」というよりは「タイ政府」なのだが、実際にアルコールが起因の残酷な事件事故が少なくないのも事実だ。

 これにより、タイではメディアにおけるアルコールの露出が規制され、公開可能なのはせいぜいロゴくらい。アルコールを飲むシーンはおろか、コマーシャルでも飲酒を想起させる内容もだめとなった。

 規制が厳しいことが顕著に見られた事件としては、2015年にチャーンビールが芸能人など著名人を利用し、SNS上でステルス・マーケティングを実施した疑いが持たれたことがある。その事実は確認されなかったものの、警察が捜査に乗り出している。SNSにすらアルコールに関係することを掲載することが捜査対象になるほど厳しいのだ。

画像2

 また、(たぶん)2008年からはアルコールの販売時間も規制された。かつては自由にいつでも買うことができたのだが、昼間は11時~14時、夕方は17時~0時までしか販売できなくなっている。

 そのほか、タイは昔から選挙前日と当日はアルコール販売は禁止になる。全国区の選挙であれば全土で禁止だし、たとえば知事選などであればほかの地域では問題ないなどはあるものの、タイは日本と違って政治に関しては損得をダイレクトに受ける人たちがいて、特にそういう人は殺人も厭わないような連中なので、選挙時のアルコール販売は禁止になっているようだ。

 あとは仏教関係の祝日もアルコール販売が禁止になっている。この日は地域差があるとは思うが、一般的には飲酒自体も厳しい目を向けられる。選挙はやや厳しいものの、飲むこと自体には問題がないことが多い。しかし、仏教関連の祝日は厳しい。ボクの記憶では1990年代後半や2000年代の頭は仏教の日も飲酒できた気がする。タイ人の自主規制がどんどんと進んでいるのではないか。以前は国王の誕生日も問題なかったが、数年前になぜか飲めないとか言われるようになった時期があった。

画像3

 そんな国柄なので、今回のウイルス騒動で政府がアルコール規制をすることは予想できていた。そして、ちょうどタイ旧正月が始まる直前の4月10日から本当に始まった。会社員などが有休を利用して長めに休暇を取ることをタイ政府は見越して10日から20日の期間限定措置だった(旧正月は4月13日から15日)。アルコール摂取はすなわち集会(人が集まること)に繋がるということで禁止したものと見られる。

 当初は4月20日までであったが、20日当日に30日まで延長と発表された。多くの人が規制発表された8日あるいはその翌日の9日にスーパーや酒屋に殺到し、10日間分のアルコールを買っていったが、予定が狂ったという声が相次いだ。しかも「最終日に延期発表とはなんたることや!」という悲鳴がSNSを轟かせていた。

 そして、30日もまた当日になって政府は延長を発表した。最初は5月3日から5月末までという情報もあり、谷間の1日2日に販売されるのではないかとされた。もちろん、酒屋に買いもの客が殺到することが予想され、改めてウイルスの蔓延が懸念された。しかし、規制解禁を政府が否定した。

画像4

 ところが、5月1日の夜、あるいは5月2日の未明にアルコール販売禁止が撤回され、スーパーなどの小売りに限り、酒類の販売が再開している。ただ、あくまでも自治体に任せているらしく、タイ国内の5県くらいでは5月末まで販売禁止らしい。

 飲酒と集会が紐付けられることに意味がないという批判が多かったこともあったのだろう。タイは日本と違って個々人のウイルスに対する自覚と防御意識が高い。他人との距離感をしっかりと保っているし、不急不要な外出はしていない。だから、アルコール販売も問題ないと判断されたと見られる。

 とはいえ、ボクなんかはアルコール好きとは言え別になかったらないでかまわないタチなので理解できないのだが、規制解除の5月3日はスーパーや酒屋にたくさんの人が詰めかけたようだ。待ちに待ち望んでいたビールなのか、あるいは、また規制されることを怖れての行動だったのか。タイは日本と違って決断が早く、また行動が素早い。そして、昨日言ったことをいとも簡単に撤回して、新たな規制をする。だから、アルコールOKと言いつつまた規制になったら、という不安があったのかもしれない。

 この殺到は主にタイ人だったようだ。日本人在住者はTwitterなどでアルコール販売規制の動向に一喜一憂していたが、そのわりには再開しても焦ることなく静観していた人が多い。規制解除されたのだから、焦って今日行かなくても、と思う人が多かったのだろう。

 今日、4日になってボクも実際に売り場を見に行ってきた。郊外というのもあるが、思ったよりも品揃えは多かった。人々がたくさん来たことはわかるが、「殺到」した痕跡はなかった。ビールが一部、特にタイの安いビールが人気銘柄でもあるため売り切れていたが、それも大瓶が中心で、缶や小瓶は普通にあった。これは平時でもよくある光景だ。

 また、印象では高級品を置くスーパーの方が品揃えが悪く、むしろビッグCなどの大衆スーパーの方が多数の銘柄が揃っていた。特にウィスキーだ。たぶん、高級店にいい銘柄があるので買いに行こう、スーパーはどうせないだろう、と人が来なかった結果、逆転したのではないかと推測する。

 それから、セブンイレブンは主に冷蔵庫にビール、レジカウンターのうしろにウィスキーなどがあるのだが、ウィスキーの品揃えは特に変わらず。ビールはやっぱり大瓶からなくなっていた。

 タイは新規感染者がかなり減っていることもあり、飲食店など徐々に規制が緩められている。いよいよ生活が元通りになるような動きが見られるようになってきた。だが、油断によって感染者が改めて増加することも懸念されているので、まだまだこの騒動は渦中にあると思っていた方がよさそうだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?