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恐竜絶滅から学ぶコロナ時代を中小企業が生き抜く方法(第2回)

隕石衝突による全世界的な火災によって森林がなくなり、食・住の観点から樹上性ではなく地上性の"新"鳥類が生き残ったというのが前回までのお話である。

では、仮に今事業をしている自分自身が鳥類に近い恐竜だとして、如何にこのような劇的な環境に適応する形で変化していくべきなのか。

すなわち、既存の事業の枠内で、外部環境の変化に対してどう事業を展開させていくべきなのかについて検討することとする。


■答えがない中での答えの探し方

恐竜になくて人類にあるものとして知恵がある。

さすがに本当に小惑星並みの隕石がぶつかったら人類だってひとたまりもないだろうが、今回のコロナウイルスに対するワクチン開発のように知恵を使って乗り越えられることはある。

答えがない中でどのように答えを探していくべきなのか。

試行錯誤するにしてもやり方があるだろうというところを出発点としてみる。


■3手先を読んでみる

コロナによる事業への影響で、「営業不振(減益)」という問題を提起してみたとする。

ここから未来において起こりうる環境変化への仮説を考えてみるとすると、例えば「コスト削減傾向の加速」が考えられる。

そのコストの大きな割合を占めるものは、給料・不動産賃料が挙げられる。したがって、ここから「賃貸している不動産の解約の増加」とまでは展開できる。

つまり、1、2手先を読むことはほとんどの人が行えるし、実際に行っているはずである。

しかし、3手先以上はあまりないのではないか。仮にしていたとしても、頭の中でなんとなくで済ましてはいないだろうか。

将棋のように10、20手先を読むまではしなくとも、マインドマップ等を利用して、3手先以上を書き出してみる方法がある。

試しに先程のコロナによる「営業不振(減益)」の3手先以上を考えてみよう。

コロナによる営業不振(減益)の影響予測
→①:コスト削減傾向の加速(コストの大きな割合を占めるものは、給料・不動産賃料)
→②:(不動産について)賃貸不動産の解約増加
→③:事業用不動産業の売上低迷
→④:事業用不動産貸付業の賃料低下(実際に今年8月時点では2013.12月以来の7年ぶりに平均賃料下落)
→⑤:現状賃料では実現出来なかったビジネスモデルの増加(広大に面積を要するビジネスモデル、都心への進出等)

このように5手先を読むことができる。

⑤について具体的なビジネスモデルを検討して見ても良いし、⑤の状況が実際に起きた場合の影響を想定して現在のビジネスモデルを再検討して見ても良い。


■さらに分岐させて可能性を広げる

ただこれだけでは範囲が狭いので、途中分岐させていくのがポイントである。

例えば、「③事業用不動産業の売上低迷」であれば上記部分の他に、

→④-2:事業用不動産貸付業の業態変更の増加
→⑤-2:居住用不動産業への変更加速(テレワーク需要に対応した仕事部屋・間仕切り物件への変更等)
→⑥-2 :風呂等の設備需要の増加

と予測の分岐を広げることができる。

同様に、①の給料部分への影響を分岐させ展開しても良いし、今回は賃貸分野(≒インカムゲイン)に着目したが、売却分野(≒キャピタルゲイン)に着目して展開しても良いだろう。

いずれにせよ、川で言うならば主流から支流をどんどん展開していくようなイメージで、起こりうる環境変化を想定していくというプロセスになる。

今回は文章で展開してしまったが、マインドマップのソフト等を利用したり、手書きで自分なりにアレンジしたりと様々な形で利用できるように思う。


■きっかけと効果

私はがこのような思考プロセスが必要だと思うようになったきっかけは、合格した税理士試験の消費税法の受験対策がきっかけであった。

当時時間内に傾向の変わる初見の問題を解き切り、上位10%に入り込む力不足を痛感していた私は、それが出来なかった原因を思考プロセスを含めた準備不足と結論付けた。

そこで1年かけて、あらかじめ3手先以上を想定し、理論と計算をリンクさせながら、出題されうるあらゆるパターンを自分の頭を使って書き出してみた。

そのプロセスを通じて、角度を変えて問われた場合や逆に深追いすべきでない分野が問われた場合への対応力を鍛え、本試験本番では最後まで動じることなく驚異的な高得点を取ることが出来た。

そして実務上のビジネスにおいても、この方法を応用し、様々な事業の将来展開を思考するようになった。

この方法の主だった効果としては、

・思考が整理される
・見えなかったものが見えてくる
・バラバラだった線と線が繋がることがある

といったものが挙げられる。

またこの方法は、仮説の積み上げに過ぎないことから、一般的に考えると該当する確率が低いように思われる。

しかし、このような不確実性が高い劇的な環境変化下においては、結果としてあらゆるパターンーーそれも闇雲にという意味ではなく、自分の現在地を出発点としたものであるーーを想定しておいた方が、いざぶち当たった時の初動を早めることができるし、場合によっては点と点と繋いで近道を見つけることすらできる。

あとは行動である。次々と起こりうる第2、第3の環境変化に合わせて、その都度最適解を探し、自分自身ををアップデートさせていくのである。

迷ったら原則論というべき主流に立ち返りまた再検討を加える。それが視覚的に行えるということが最大のメリットだと思う。

新恐竜のように、食・住の環境の変化に応じて樹上性から地上性に変化できる体制を、まずは思考レベルで整えておき、都度実行に移していく連続的なプロセスが必要であるし、特に中小企業のような小回りが効く組織形態にはこの厳しい環境を生き抜いていく上で必要な手段だと結論付けたい。

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今回の話はあくまで既存の事業の枠内でどう展開させるのかという話が中心であった。

ところが、あまりに環境変化が激しい場合、既存の枠内では対応出来ないという結論になることも少なくない。

そこで、最終回となる次回(第3回)では、そのような既存の事業では対応出来ないという結論に至った場合に、どのように新規事業を展開していくべきなのかについて検討を加え、全3回の総括としたいと思う。



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