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【中医基礎理論 第35講】 - 五行学説 - 相生は絶えず循環する

五行学説では、「この世界のすべての物事は、木・火・土・金・水という5つの物質の相互関係により起こる運動と変化によって生じ、発展する」と考える。

その五行の運動と変化は「相生」と「相克」である。

今回は、「相生」について学ぶ。



相生は絶えず循環する

ご先祖様から相生が続いて、今ここに自分がいる


相生とは、木、火、土、金、水の間に順序正しく資生、促進、助長の関係が存在することを指す。

例えば、木が存在するには、木を生む母親がいる。

そして、木は自分の子を生むことができる。

このように五行は相互に生み出し合う関係性を持っていて、その関係を「相生(相手を生む)」という。

どの五行がどの五行を生むか(どの五行がどの五行から生まれるか)は決まっている。

その順序は「木生火→火生土→土生金→金生水→水生木・・・」である。

木生火は「木は火を生む」という意味だ。つまり、木が火を生み、火が土を生み、土が金を生み、金が水を生み、水が木を生み、また木が火を生み・・・というのを繰り返すのである。

ポイントは終わりが無いことだ。

つまり、相生は環の様にずっと循環しているのだ。

では、どうして木は火を生み、土は金を生むのか?

次は、その理由をみていこう。


木は火を生む(火は木から生まれる)

焚き火をイメージすると分かりやすい。

火を起こすには燃える材料が必要である。

五行では木がその役割を果たしている。

木は燃えると火を生じる。

一方、火は木が燃えることで生じる。

この「生む、生まれる」の関係性から、相生関係は「母子関係」ともいう。

母子関係でみた場合、木は火を生むので、木は火の「母」である。一方、火は木から生まれるので、火は木の「子」となる。

「木は火を生む=木は火の母」で「火きは木から生まれる=火は木の子」なのである。


火は土を生む(土は火から生まれる)

焼き畑をイメージすると分かりやすい。

木が燃え火が生まれる。

火は木を燃やし尽くすと灰ができる。

この灰を酸性の土とまぜるろ、灰が中和剤となり土壌が改良され作物を育てられるようになる。

つまり農業に使える「土」が生まれるのだ。

母子関係でみた場合、火は土を生むので、火は土の「母」である。一方、土は火から生まれるので、土は火の「子」となる。

「火は土を生む=火は土の母」で「土は火から生まれる=土は火の子」なのである。


土は金を生む(金は土から生まれる)

これは金属(鉱石)は地中(土の中)で生成されるからだ。

地中(土の中)で圧力や熱が加わることで金(金属)が生まれる。

金属がとれる鉱山も元々は地中にあり、それが隆起して出来たものだ。

このように、あらゆる金属は地中で生成される。

つまり土から「金」が生まれるのだ。

母子関係でみた場合、土は金を生むので、土は金の「母」である。一方、金は土から生まれるので、金は土の「子」となる。

「土は金を生む=土は金の母」で「金は土から生まれる=金は土の子」なのである。


金は水を生む(水は金から生まれる)

金は水を生む。

これは2つの考え方がある。

1つめは「水を保存する容器」からきた説だ。

貴重な水を保存するのに最も適しているのが金属の器だ。

木の器に水を溜めておくと水は徐々に減っていくが、金属の器では減らない(実際は少しずつ減るが木よりもずっとゆっくりだ)。

このことから金は水を生じる考えられたのだ。

2つめは「金属に水滴が発生すること」からきた説だ。

金属を外に一晩置いておくと水滴が生じる。

これは空気が冷えて空気中の水蒸気が水滴となり金属の表面についたものだ。

当時、これを観察した人はあたかも金が水を生じたと考えたのだろう。

このことから金は水を生じる考えられたのだ。


以上、2つの説から「金は水を生む」となった。

母子関係でみた場合、金は水を生むので、金は水の「母」である。一方、水は金から生まれるので、水は金の「子」となる。

「金は水を生む=金は水の母」で「水は金から生まれる=水は金の子」なのである。


水は木を生む(木は水から生まれる)

これはイメージしやすい。

水の滋潤により木は生長する。

水が無ければ木は生長することができない。

つまり水から「木」が生まれるのだ。

母子関係でみた場合、水は木を生むので、水は木の「母」である。一方、木は水から生まれるので、木は水の「子」となる。

「水は木を生む=水は木の母」で「木は水から生まれる=木は水の子」なのである。

うまくできているなぁ


余談:生我と我生の考え方

五行相生の関係では、どの行(五行)も「生我」と「我生」の2つの側面を持っている。

《難経》ではこれを母子関係に例えている。

「生我」は「我を生むもの」として、「母」を表している。一方「我生」は「我がうむもの」として「子」を表す。

「我」には五行が当てはまる。

たとえば「木の生我は?」と問われれば、「我(木)を生むものは?」という意味なので、答えは「水」となる。

また、「木の我生は?」と問われれば、「我(木)が生むものは?」という意味なので、答えは「火」となるのだ。


五臓の相生

木・火・土・金・水の相生関係を五臓に当てはめてみよう。

ここでは腎・肝・心の例を例に挙げる。

腎と肝の相生関係

水は木を生む。

これを五臓で置き換えると、「腎は肝を生む」となる。

腎には精が蔵されていて、それを腎精という。

腎精は髄を生じ、髄は血へと化生する。

その血が、肝血として肝に蔵されるのだ。

腎と肝にはこのような生理学的な相生関係がある。

母子関係でいえば腎は肝の「母」、肝は腎の「子」となる。


肝と心の相生関係

木は火を生む。

肝血は心血となり、心や心が主る血脈を満たすのだ。

肝血が心血を生むという生理学的な相生関係である。

母子関係でいえば肝は心の「母」、心は肝の「子」となる。


母子であるが故の宿命

母は子を生じる。正常なときは良いが、病気のときはその母子のつながりが病気を伝播してしまう。

母が病気になると子にも影響し、母子が同時に病んでしまうことがあるのだ。

腎が病めば肝も病み、肝が病めば心も病んでしまう。

母子関係があるがゆえに起こってしまう宿命なのだ。

*母子(相生)の病理については後の記事で扱う。


母子は運命共同体


まとめ

今回は五行学説の「相生」について学んだ。

ポイントは3つ。

  1. この世界のすべての物事は、木・火・土・金・水という5つの物質の相互関係により起こる運動と変化によって生じ、発展する。

  2. 相生関係は母子関係ともいう。

  3. 母子関係があるがゆえ病気も伝播してしまう。

木・火・土・金・水が相互を生み出す相生が、絶え間なく循環することで、世界もまた、絶え間なく運動や変化をしていく。

しかし、相生だけでは「生まれる」ことが延々と続くと厄介なことになる。

あらゆる物がどんどん過剰に生成されてしまうのだ。

自動車でいうとアクセルをずっと踏み続けて加速し続けるような状態だ。

暴走は困る。

そうならないためにはブレーキが必要だ。

五行において「制御」というブレーキの役割を果たすのが「相克」である。

次回は、「相克」について学んでいく。


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