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ただの「お玉を巡る話」

taka

仕事終わりに会社の人達とお洒落な居酒屋でご飯を食べた。

お店の名物である「湯豆腐の鍋」を3つ注文したところ、私のもとに運ばれた鍋にだけ、湯豆腐や他の具材をすくうお玉がついていないというハプニングが発生した。


これはおそらく、私があまりにも美男子だったため、おブサイクな店員からの陰湿な嫌がらせと思われる。

思い返せば、学生時代には上履きを片方隠される、机に落書きをされる、鞄を教室の窓から投げ捨てられる、という嫌がらせを多々受けたこともあったのだが、美男子というものは時としてこういう辛い思いもするものなのであろう。
悲しいかな”美”は常に恨まれ、妬まれるものである。

だが、美男子である私はこんなことでいちいち腹を立てたりはしない。

一般の方ならば、お玉がない時点で店員を問答無用にビール瓶の底でぶん殴っていることだろうが、心優しい私はその点、一切怒ることはせず、すぐさま近くにいた店員を呼ぶと「お玉がひとつないんですけども・・・」と申し訳なさげかつ優しく伝えた。
その姿はあまりにも温かみに溢れ、まるでブッタが教えを民に説いているようであったとかなかったとか。

すると店員は「あっ、すいません、ただいまお持ちしますので・・・」と、頭をちょいと下げ、店の奥に消えて行った。

「よし、わかればいいんだ」


しかし、それ以後、私のもとにお玉が届けられることはなかった。
きっとお玉を持って来る途中に残忍なお玉狩りにあったに違いない。

結局、痺れを切らした私は、箸を使い湯豆腐を鍋から取ることにした。

店員から「お豆腐は崩れやすいので」という情報を事前に得ていたため、慎重に湯豆腐を取ろうとしたが、結果的にほとんどの豆腐を粉々にするという、持ち前のワイルドさを如何なく発揮する結果となった。

すると、その一部始終を見ていたのであろう女子たちから

「takaくんは何もできないんですね」
「なんならできるんですか?」

などとひどく馬鹿にされた。

お玉がなかったばかりに湯豆腐を美味しくいただけないばかりか、女子たちからは馬鹿にされ、散々であった。

まだまだ寒い日が続き、みなさんも湯豆腐のお鍋を食べる機会があることだろう。
さらにはお玉がないこともあるだろう。
そんなときには是非とも注意して湯豆腐を扱うようにしてほしい。

「湯豆腐と女性の扱いは慎重に!」

私はそう心に誓ったのであった。

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