
ただの「空気清浄機に認識された男」
年末くらいから会社でコロナにかかる人が数人おり、今更ながら会社に空気清浄機が数台導入された。

コロナ以外にも、会社自体は綺麗めな工場といったようなところなので、私たち従業員は年中大量のホコリやチリのようなものが舞っている環境の中で日夜仕事をしているといっていいのである。
このままでは、このホコリやチリが体内に蓄積し、将来的に生死にかかわる危険性だってあるだろう。
そう思った私はコロナとは関係なしにしばらく前から上司に「買ってくれ」と頼んでいたのだ。
他の社員たちは「掃除機すら買ってくれない会社なのに・・」と不思議に思っていたようだが、あいつらはわかっていない。
勝因は間違いなく私の抜群の可愛さにあったということを。
上司に「買って」とお願いするときの私のキョトンとした目、そして無垢な顔、まるで幼少期の寺田心くんを思わせるようなその姿にさすがの上司も心をキュンとさせてしまったのだろう。
チョロいもんである。
そんな可愛い私が、さっそく届いたばかりの空気清浄機のスイッチを入れると「ボウォー」とモーターが唸りだして、空気の清浄を始めた。
空気は目には見えないので、本当に綺麗にしているのかどうなのかなんとも言えないが、空気清浄機のやる気だけは伝わってきた。
しばらく運転させていると、社員の人が「これ新鮮な空気が出るんだって」と言うので「どれどれ」と私も新鮮な空気を浴びに近寄ったところ、空気清浄機の「ボウォー」だった唸り声が「ヴォヴォヴォーボボボ!!!!!!」と大型バイクのエンジン音のように力強くなり、今まで点灯していなかった赤いランプが点滅し始めた。
そのときは「ウルトラマンかな?」としか思わなかったのだが、後々、説明書を読んでいると衝撃の文章が書いてあった。
「臭い(ペットやタバコの臭い等)が強い場合、自動で「強」モードになります」
どうやら私は空気清浄機に「臭いやつだ」と認定されてしまったようである。
お、おお、自分は臭いのか・・・。
どうやらこの会社には、ホコリとチリのほかに、私という悪臭も存在していたようだ。
みんな、ごめんなさい。
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