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ただの「初デートの思ひで」

taka

みなさんは、”初デート”は何歳くらいのときなのだろうか?

中学生?高校生?大学?・・・今や中には「初デートは小学生のときです」という生意気な野郎もいることだろう。


その一方で私はというと、学生時代は真っ暗な部屋で、四隅に溜まったホコリを体育座りをしながら食べていたほど、スポットライトの当たらないような男であった。

そのせいもあってか、初めて女性とデートをしたのは、社会人1年目23歳のときである。
もはや10年以上前のことのため、彼女の顔は鮮明には覚えてないが小柄で笑顔の可愛らしい同い年の女性だったような。


初デートの場所は”水族館”。

今となっては、よくわからないが当時の私は、『水族館(S)→動物園(D)→ベットイン(B)』という、2005年野球界に旋風を起こしていた阪神タイガースの勝利の方程式・JFKを彷彿させるような、SDBという”恋の方程式”を完成させていたのであった。

水族館は私にとってのジェフ・ウィリアムス、まさに外れるわけがない。

そんな自信に満ち溢れていた。


そして、デート当日。

私は、社会人1年目の記念に購入した10万円する腕時計をつけていった。

特に彼女に「この時計高いんだよ」と自慢をしたかったわけではない。

なぜだか、この時計をつけると自分に自信が持てていたのだ。

彼女に会うと、さっそく水族館の中を歩き回った。

施設内に所狭しと配置されていた水槽の中には、可愛らしい小魚から今まで見たこともないような深海魚がいたりと、二人で「キモいキモい!カワイイカワイイ!」と盛り上がったことを覚えている。


一通り、水槽を見終わると、最後の方に『サメに触れられる体験コーナー』というものがあった。

彼女は臆病な性格もあり、「こわいよこわいよ」と怖がっていた。

しかし、サメとはいっても小さいサイズのもので人に襲い掛かるような凶暴なタイプのものではない、という。


「ここは、自分が触ることで男っぽさをみせてやろう」

私はそう思った。


なんならば、そのサメを掴み取って、頭から喰ってやる勢いである。
女の子はいつの時代も、野性味溢れるワイルドな男が好きなのだ。

「まったく、怖がりだなあ、まあ、みててよ」

そう、怖がる彼女の前で意気揚々と水槽に左手を入れた瞬間であった・・・。


水槽に手を入れた瞬間にすべてを悟ったのだ。

「あ、時計つけっぱなしやん」

そして、そのことに気づいたときにはすでに遅かった。

水につけた左手をあげ、すぐに時計を確認すると、彼は時計としての役割を終えていたのであった。

もはや、その姿は”腕時計”ではなく”腕文字盤”と化していた。


「10、10万円の時計が・・・ぱうぱうぱうぱうぱう」


と、心の中で、ぱうぱうと泣き叫び愕然とした・・・。

そんな私の異変を察知したのか、彼女が「どうしたの?噛まれた?」と聞いてきたが、男が動揺を見せるものほどカッコ悪いことはない。


私は「なななななななん、なんでも、なななないよ、うふふふふふ」となんとか上手に動揺を隠したのだった。

今となっては、その後のことは覚えていないが、確かご飯か何かを食べた記憶がある。
しかし、私のテンションの落ち具合は半端なく、その日は、すぐに解散したような気もする。


それからというもの、彼女とはなぜか上手くいかなくなり、そのあと「あたし、京都に旅行にいきます」という言葉を最後に音信不通となった。

どうやら私の腕時計は、時はおろか、彼女との恋もストップさせてしまったようだ。


以上が、初デートの思い出だ。

今となっては、いい思い出なのかよくわからないが、私は男性諸君みんなにこう伝えておきたい。

腕時計に防水機能は必須。



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