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【アメリカにおけるコロナ×教育】

 日本もコロナが「第6波」と言われていますが、ここアメリカは、1月3日に、1日の感染者数が100万人を超えましたこちらのグラフをご覧いただくとお分かりのように、これまでとは全く比較にならないレベルの急激な増加(まさにskyrocketed)で、オミクロン株の感染力の強さが見て取れます(というか、1日で100万人ですよ?日本のこれまでの「累計」での感染者数は174万人なので、たった1日でその半分を超えたことになります。人口は2.5倍ぐらいしか違わないのに…)。おそらく今しか書けないことだと思いますし、今書くことによって、日本の学校教育にも何らかの示唆が提供できるかもしれないと思い、今回は、そんなアメリカにおけるコロナと教育の状況を書いてみます。原則、解釈や評価等は書かず、あくまで事実のみを淡々と書きます(※なお、以下はあくまで僕らが住むミシガン州はアナーバー(Ann Arbor)の状況です)。

(前提:社会の状況)
 学校の話に入る前に、前提として、社会の状況です。
ワクチンは、本当にどこでも誰でもいつでも接種することができます。行政や大学が設置する会場のみならず、近所の薬局で打てます。我が家は、家から歩いて5分のスーパーに入っている薬局で、前日にネットで予約を取って、受けました。
このことは、通常のワクチンだけではなく、子ども向けのワクチンでもブースターでも同じです。アメリカは、昨年11月に、5歳から11歳のワクチン接種が解禁されました。我が家は、同じ薬局で、解禁した週に接種しました。
PCR検査も、どこでも誰でもいつでも受けることができます。我が家の場合は、車で15分ほど行ったところに、大学と民間企業が連携して設立した臨時検査センターが設けられており、そこでドライブスルーの検査(唾液)を受けることができるため、必要な時はそこを利用しています。検査料は無料、ネットで予約し(だいたい当日、もし当日の予約が一杯でも、基本翌日には可能です)、結果はメールで、検査翌日か翌々日に送られてきます。

(大学のこと:昨年)
 まず、昨年(オミクロン拡大前)における大学のことです。
・まず、ワクチンの接種は、学生の「義務」です。オンラインで、接種証明書のデジタルデータ等を提出する必要があります。宗教上の理由等により、やむを得ず受けられない場合は、その理由を提出し、大学の委員会において審査の結果、認められれば、接種は免除されます。ただし、その場合でも、定期的(確か私が渡米した時は、1週間に1回)にPCRを受けなくてはいけません。
・併せて、大学が作ったアプリがありまして、そこにワクチンのステータス(未接種の人はPCR検査の状況)が反映される仕組みになっています。併せて、健康上のいくつかの質問を毎日回答し、問題が無ければ、画面が赤から緑に変わります大学のオフィスなどに入る際には、この緑の画面を見せないと、入構できません
・また、大学の方針に変更があった場合は、オンラインでの大学執行部(学長・副学長も出席)と学生との意見交換会が催されています。学生は代表だけではなく、誰でも参加することが可能です。
・僕が所属する教育大学院の授業は、多くは対面で行われました(ただし、語学系の授業などは多くがオンライン)。その場合でも、Zoomでの参加の選択肢は常に設けられており、体調が悪い等の場合には、インストラクターの許可を得た上で、Zoomでの参加に切り替えることができます(ただし、どの授業も、「特に問題が無いのであれば、原則、対面での授業に参加すること」となっていました)。

(小中学校のこと:昨年)
 次に、同じく昨年(オミクロン拡大前)における小中学校のことです。
小中ともに、授業は基本的に対面で行われました。一方で、中2の長男は、基本授業中もChrome bookを使い、毎日持ち帰って課題などもオンラインで提出していました。学校で感染者が出た場合には、濃厚接触者には個別に電話で連絡が行き、それ以外にはメールで「感染者が出ました」という報告が送られてきます。基本的には、感染者が出ても対面での授業は続行。ただし、昨年、娘のクラスで感染者が出た際には、クラスでの活動の内容なども踏まえて、一時的にクラスが閉鎖され、オンラインに移行しました(その後、対面授業に戻る際には、PCR検査での陰性証明の提出が必要でした)。
・子どもたちのワクチン接種の状況に関する調査は、今のところ行われていません。

(大学のこと:今年)
 そして、今年(オミクロン拡大後)です。
・ミシガン大学は、学生・教職員のワクチン接種率が9割を超えていることなどを理由に、原則対面での授業を継続する方針です(一方で、車で1時間の距離にあるミシガン州立大学は、3週間程度は全面オンラインに移行することを決定しました)。
・一方で、ブースターの接種も義務となりました。こちらも、接種し次第、大学にオンラインで報告する必要があります。
・また、大学の寮に住んでいる学生には、抗原検査キット(自宅でできて、結果が15分で分かるもの)が家族全員分送られてきました。授業に出る前に、学生は、この検査を受ける必要があります。一方で、キャンパス外居住の学生を含め、PCR検査の結果報告などは義務付けられていません。

(小中学校のこと:今年)
・予定では、1月3日(月)から対面での授業が再開される予定でしたが、1月5日(水)から7日(金)までは、オンラインでの授業に切り替わりました。
1月3日と4日の2日間は、教員の授業準備、児童・生徒の端末利用に関する問題の解消、家庭における仕事の調整などに充てるため、休校となりました。
・現在の予定では、来週月曜日(1月10日)からは、対面での授業に戻るとのことです。教育委員会からのアナウンスでは、「今後もできる限り対面での授業を行いたい。しかし、学校関係者の感染もあり、体制を構築する必要がある。今週1週間の間に、教育委員会として、人材の調達や人事の調整などを行い、通常授業に戻る手はずを整える」ということでした。
・一方で、PCR検査の結果報告などは求められていません。
(※なお、これは推測でしかありませんが、年末年始に相当な人の動きがあった中、1月3日に授業を開始すれば、帰省あるいは旅行から戻った直後に、児童・生徒は学校に戻ってくることになってしまい、その中には感染後まだ症状が出ていない子や、感染力の高い子も含まれることになります。しかし、今週1週間を休校+オンラインに切り替えることにより、丸々1週間を「バッファー」として機能させ、感染力の高い子たちが学校に集まらない状況を作ったのではないか、と僕は推測しています。そこまで狙っていたのかどうか分かりませんが、普段は持ち帰らない娘も含めて全員が、昨年の最終登校日(12月17日)に、Chrome bookとiPadを持ち帰りました。また、教育委員会からスケジュール変更についての連絡があったのは、12月31日の夜でした(あまり早く連絡すると、帰省や旅行のスケジュールを変更(延長)する家庭が出てくる可能性があるから?)。もしこの推測が正しければ、かなり戦略的な判断です)。

 以上がミシガン州アナーバーの状況です。
 アメリカの場合、コロナが政治問題(民主党と共和党の対立)になっているのが、事態を一層難しくしています。あんなに早くワクチン接種を開始したのに、(上記の通り)こんなに簡単にワクチンを接種できるのに、ワクチンの完了率は未だに6割です(日本は8割)。日本の報道にもあるように、デルタ株と比べれば重症化のリスクは低いようではありますが、一方で、アメリカの場合、ワクチンの未接種者が重症化するケースも多く、医療体制にも影響が出始めています。お隣イリノイ州のシカゴでは、教職員組合が対面授業の再開に反対し、授業がキャンセルになりました。
 一方で、(規模は縮小されましたが)タイムズスクエアでの年越しも行われましたし、各種イベントなど(飲食店含む)を大幅に制限・見直す動きは、今のところ聞きません。ニューヨークでは、市のルールに基づき、飲食店を含め、人が集まる施設では、入場のために、ワクチン接種完了の証明書提示が厳格に義務付けられています。しかし、あれほどまでに感染が拡大しているのが現状です。今後のことは分かりませんが、とにかく「自由」と「責任」を重視する国ですので、「ワクチンを誰でも接種できる環境は整備した。検査を誰でも受けられる仕組みも構築した。あとは、自分自身の判断と責任で行動を」ということなのかもしれません(ただ、その影響を受けるのは、他ならぬ医療関係者なのですが)。

 また変化がありましたら、お届けします。

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