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元文科省のキャリア官僚と考える、小難しくない教育改革のお話⑨

【アメリカの公立小学校の学校説明会に参加して】

 子どもたちの関係で、アメリカの公立小学校の学校説明会(オンライン)に参加する機会がありました。これがまた全然日本と違う!なんだか如実に日米の学校「文化」の違いが出ていたような気がするので、以下にまとめてみました(これが一般的なアメリカの学校の様子なのか、私たちの学校が特殊なのかは分かりませんので、その点はあしからず)。

① 説明30分、質疑応答60分
 日本の場合、説明が大半で、質疑応答の時間はほとんどないのが普通ではないかと思います(「何かありますか?…無いようですので、それではこれで終了いたします。何かありましたらお手元の質問用紙に…」みたいな感じ)。
 しかし、アメリカの場合は真逆で、質疑応答がメインで説明はオマケみたいな感じでした。そして、保護者からの質問が出る出る!それも事務的な質問だけではなく、教育論(「子どもたちが読書に興味を持つようになるための戦略は?」「幼児期(Kinder)における宿題の方針は?」とか)から、LGBTへの対応、研究者との連携、教師の退職防止に向けたサポートまで、ものすごく幅広い質問が出ていました。

② Websiteに載っていることは説明しない
 日本の場合、説明の大半はホームページ(あるいは学校要覧)に書いてあることではないかと思います。
 しかし、アメリカの場合は、あらゆることが学校のWebsiteに掲載されており、そこに載っていることは説明しません。保護者から質問が出ても、「Websiteに書いてあるので、見てください」で回答が終了していました。

③ 校長先生が前に出まくる
 日本の場合、「校長先生が挨拶した後、各担当から説明」という流れが多いのではないかと思います。
 しかし、今回は、30分間の説明は、すべて校長先生からでした。また、上記の通り、Websiteに載っていることは原則説明しませんので、他校と違う「ウリ」のような部分と、自身の教育理念、そして子どもたちの様子が説明の中心でした(多分全体の1/3ぐらいは子どもたちの写真の説明だった気が)。
 そして、質問も基本的には校長先生が答えます。説明も含めて、一切原稿を読んでいないところも印象的でした。

④ 研究の話をたくさんする
 教育論や学校の方針に関する質問が出た際、校長先生は、よく研究を引用して回答していました(「こんな研究があります。だから私たちはこのような方針を採用しています」など)。日本の学校で、研究の話を聞いたことってあったかな…。

⑤ ちゃんと持論を言う
 当然、コロナ関連の質問などもたくさん出るわけですが、そうした内容は、基本、教育委員会のテリトリーなので、校長先生では判断できません。日本の場合、「それは教育委員会が決めることになりますので、学校としてはお答えいたしかねます」という回答になると思うのですが、校長先生は、それを述べた上で、ちゃんと持論を言っていました。「教育委員会が決めるので、最終的にそうなるかは分かりませんが、私はこうすべきだと思っています」という回答をたくさんしていました。

⑥ 子どもの視点から回答する
 特に印象的だったのが「保護者の方々が今気にしておられるようなことの大半は、子どもたちにとっては実はどうでもよくて、学校生活ではたいした問題にならないことです。それよりも、私たちは、子どもたちに、『自分で判断する機会』をどれだけ届けられるかを大切にしています。これは、子どもたちの人生に関わる、とても重要なことです。『子どもたちのために、親として自分たちがどれだけ多くのことを決めてあげられるか』ではなく、『子どもたち自身がどれだけ多くのことを決められるか』を大切にしてあげてください」という回答でした。これはなかなか圧巻の答えでした。

⑦ 「教員の生活と健康のため」と言って、いきなり終わる
 上記の通り、保護者からむちゃくちゃ質問が出るので、「果たしてこれはいつ終わるんだろう」と思って聞いていたのですが、90分経ったところで校長先生が「私の大切な仕事のひとつは、教員の生活と健康を守ることなので、このあたりで終わりにしましょう。質問がある人はメールを送ってください」と言って、アドレスをシェアして突然終了しました。

 以前、教師について書いた際、「アメリカの先生は、明るくて生き生きしている」と書きましたが、今日の説明会でも校長先生は、明るくて生き生きしていました

 なんか、カッコよかったっす。

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