フードロスをテクノロジーで解決できるか?

問題です。

1. 日本全体で1日に出る食品廃棄量はどれくらいでしょうか。
 A. トラック10台分
 B. トラック100台分
 C. トラック1000台分

2. 日本で年間に食品廃棄処理にかかる費用はいくらでしょうか。
 A. 20億円
 B. 200億円
 C. 2000億円



・回答
じつは、A,B,Cどれも不正解です。

日本全体で1日に出る食品廃棄量はトラック1770台分
そして、日本の年間の食品廃棄処理費用は2兆円にのぼります。
(出典:消費者庁 食品ロス削減関係参考資料)

小さい頃、よく食べ物を残さず食べなさい、と家庭や学校で言われた方も多いのではないでしょうか。今、売れ残りや食べ残し、期限切れ食品など、本来は食べることができたはずの食品が廃棄されるフードロス(食品ロス)が注目されています。

最初の問題に対する回答の数値をご覧いただいて、お分かりいただけるようにフードロスは非常な大きな問題になっています。 世界に目を向けると、世界全体のフードロスは、生産される全食糧の3分の1~2分の1になるとも言われています。
(出典:Global Food Loss and Food Waste, Food Waste: Half Of All Food Ends Up Thrown Away)
具体的には、毎年16億トンもの食品が廃棄され、その額は1.2兆ドル(約132兆円)にのぼります。
(出典:Food and Agriculture Organization of the United Nations, Global Food Losses and Food Waste, 2011; FAOSTAT database; BCG FLOW model. 2015 findings, in 2015 dollars.)

フードロスは食品の生産から消費までの各段階で起こっています。以下のグラフでは食品の廃棄量とその時の金額をバリューチェーンに沿って整理されています。

出典:TACKLING THE 1.6-BILLION-TON FOOD LOSS AND WASTE CRISIS

フードロスの量として多いのは「生産」の段階(グラフ上段)で、金額として多いのは「消費」の段階(グラフ下段)です。

*その他、フードロスの具体的な問題はこちらのwikiに良くまとまっているので、ご参考まで

欧州では、このような実情からEC委員会を中心に、食品廃棄物削減を含む「資源効率化計画」を策定し、また、欧州議会では、2014年を「ヨーロッパ反食品廃棄年」と位置づけ、2025年までに食品廃棄物を半減するとともに廃棄物の発生抑制に向けた具体的措置をEC委員会とEU諸国に要請する決議を採択しています。OECD(経済協力開発機構)では、食品廃棄に関するデータの収集と各国の比較を行い、政策提言に結び付けることを目的に分析作業が進められています。

アメリカでは、ReFEDという団体がフードロスを20%減らすロードマップを発表しました。その中で、アメリカのフードロスを20%減らすことによる正味の経済的価値は1000億ドル(約11兆円)であると予測されています。

出典: A ROADMAP TO REDUCE U.S. FOOD WASTE BY 20 PERCENT

また、経済的価値を具体的に収益・コスト分析したところ、以下のグラフでは、フードロス削減の啓蒙活動をするのが最も良いと書かれています。啓蒙活動は日本でも行われていますが、下記のランキングで3位に入っている「分析」はあまり行われていません。

出典: A ROADMAP TO REDUCE U.S. FOOD WASTE BY 20 PERCENT

日本でのフードロス対策は啓蒙活動がメインで、テクノロジー目線・アナリティクス目線での施策が非常に少ないです。(参考:消費者庁における
食品ロス削減の取組
 一部、経済産業省主導の取り組みもありました)
また、上記のグラフでは啓蒙活動にはコストがあまりかからない書き方をされていますが、実際には人件費等の多くの出費があるかと思います。

このようなフードロスに対して、テクノロジーの力によって何かできないかと考えました。今回は特にソフトウェアの力を活用して、実現可能性が高いと考えられる以下の3つについて紹介していきます。
・需要予測
・食品販売最適化
・あまりものマッチング

■需要予測
こちらは、すでにスシローが面白い取り組みをしています。

回転寿司最大手の「スシロー」がデータ分析で成果を上げている。店舗に「回転すし総合管理システム」を導入し、1分後と 15 分後に必要な握りネタと数を常に予測。店長の勘と経験に IT(情報技術)の力を加味し、食べたい握り寿司をタイムリーに提供する。システムの導入で、回転して時間が経った皿が減り、廃棄量は4分の1ほどになった。(出典: スシロー、ビッグデータ分析し寿司流す 廃棄量 75%減)

素晴らしい成果が既に出ています。
ただ、大企業のように、1つの基幹システムを導入して、それを全店舗で使用できれば良いですが、多くの中小企業の場合、なかなか需要予測システムまで作り上げるのは難しいです。ここがまだ手付かずであるため、個人的に需要予測システムを開発して、ほぼ無料で簡単に需要予測ができるようにしたいです。多くの方に使ってもらえるようなシステムを作りたいと考えています。

個人で開発した需要予測サービスによって、日本で1%でも食品廃棄費用を減らすことができれば、年間200億円もコストカットができます。需要予測は単に、飲食店などのコストを最適化するだけでなく、食品の生産から配送、管理、消費、廃棄までのトータルコスト(Life Time Cost)を削減できるのです。このLife Time Costの削減は、限りある資源を最適に使用する観点で、社会にとって非常に重要だと考えています。今後は自分でも実際に手を動かし、Life Time Costを考慮したサービス開発を行っていきます。

■食品販売最適化
スーパーやコンビニに行ったときに、陳列している商品をゴソゴソとかき分け、消費期限の長い商品を探している人を見たことはないでしょうか。もしくは自分もやっている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。少なくとも僕はしたことがあります笑。
このような行動は、個人としては非常に合理的(同じ金額で商品を購入するのであれば長持ちする方を買いたい)なのですが、社会全体で考えるとフードロスにつながるため合理的ではありません。

そこで、最近実証実験されているのが、消費期限が近い食品を購入すると、その人にポイントを還元する方法です。

店頭に並ぶ消費期限が近づいた食品を「LINE Pay」で支払うと、LINEポイントが上乗せして付与されます。さらに、食品の消費期限が近づくとLINEで「食品購入時のポイントが上がった」という通知が送られる仕組みになっているとのことです。LINEポイントは1ポイント1円で「LINE Pay」の残高として利用することが可能です。この仕組みが実現すれば「LINE Pay」の利便性がさらに向上するほか、売れ残った食品の廃棄の削減や業務の効率化へとつながっていくことでしょう。(出典:「LINE Pay」で消費期限が近い食品のポイントを高還元!経済産業省が食品ロス対策の実証実験実施へ)

これにより、例えばスーパーで陳列している商品の中から、わざわざ賞味期限の長いものが取り出されていく光景が減っていき、フードロスの削減につながります。さらに、このポイント還元は実質的なダイナミックプライシングになるため、商品の価格弾力性の調査などにデータを活用でき、店のマーケティングミックス(Product, Price, Place, Promotion)改善につながります。

また、アメリカで面白い事例があります。それは、米ウィノウ・ソリューションズ社が提供するタブレット用アプリとスマートスケール(秤)を活用した事例です。

ユーザーは、例えばレストランの厨房のゴミ箱にスマートスケールを取り付け、食材を廃棄するごとにタブレットのスクリーンで種類を選択すると、スマートスケールが食材の重さとコストを自動的に計測し、データを記録します。蓄積されたデータはクラウドソフトウェアで解析され、分析レポートが毎日配信されます。現場で働く人たちから経営者まですべての関係者が、何がどれだけ無駄になり、その傾向や損失金額まで把握できることで、具体的な対策につながります。例えば、頻繁に食べ残しが記録されたステーキは、サイズダウンし、ほとんど手を付けられないオートミールは 、取り皿の大きさを変えてみる、といった具合です。同社アプリを利用している企業では、食品廃棄量を1年間で平均50%削減、 食材調達費を3〜8%削減することに成功しているそうです。 また、こうした分析と実践を通じて、食品廃棄に対する経営者や社員の意識も大きく変わります。

同社アプリを通じて、これまでに世界で365万食が節約されました。 これは約370万ポンド(約5億3650万円)に相当し、食品削減だけでなく、企業にとって経費削減や収益性の向上につながっています。また、無駄な流通を省くことで、約6200トンのCO2 排出量が削減されたということです。
(出典: 食品ロスが半減でレストランもびっくり! 進化するアプリが食品廃棄を解決へ)

今後は、スーパーや飲食店が、いかに効率よくフードロス対策のPDCAサイクルを回せるかが重要だと思います。そのためにも食品や顧客のデータの収集や、そのデータ収集の自動化が求められてくると思います。例えば、ゴミ箱のふたにカメラを設定しておき、廃棄される食品を自動的に画像解析し、何がいつ、どれだけ廃棄されたかを自動解析することで、今後の食品発注やメニューの改善ができるようになります。
テクノロジーの力によって食品の販売を最適化できる余地はまだまだあるので、今後さらなる改善を期待しています。

■あまりものマッチング
あまった食品をそのまま捨てるのに、心が痛む方も多いのではないでしょうか。食品を捨てるのは本当に最終手段であり、捨てる以前にまだまだできることはたくさんあります。

例えば、Reduce GOが提供するサービスでは、レストラン、飲食・小売店で余ってしまいそうな食品を、月額定額で受け取ることができます。

また、TABETEのように余ってしまいそうな食品を1品単位で購入できるサービスもあります。

家庭の場合はどうでしょうか。冷蔵庫に買っておいた食品を保存しておいたものの食べきれなかった、という経験はないでしょうか。
このような時に、冷蔵庫に入っている食品から、個人の好みに合った料理をおすすめしてくれると嬉しいものです。

今では、余りものの食材からレシピを提案してくれるアプリ"Amarimo"があります。

このアプリでは、AIが好みを覚えてくれるため、アプリを使用するにつれて好みの料理をレコメンドしてくれるようになるでしょう。

今後はカメラで冷蔵庫内の食品を自動認識して、その食品から個人の好みに合った料理を自動的に提案してくれると、よりスムーズに食品を利用できるようになるかと思います。あまりものの食品を調理する方法を考えるには意志力が必要になり、そこで食品の調理をやめてしまう人もいるため、人に意志力を使わせることなく、勝手に食品を消費していくように、レコメンドなどにより行動設計をすることが重要だと思います。

また、余った食品を捨てる前に、バイオメタンガスにして活用するなど食品以外の活用方法もあります。食品を廃棄するよりも、他の製品に変換する方が地球にとっても各人の財布にとっても良いものであれば、テクノロジーの力によって次々と食品の変換を進めたいものです。

■まとめ
フードロス対策として、テクノロジーを活用した需要予測、販売最適化、あまりものマッチングを考えてきました。全ての項目について言えるのは、食品のLife Time Costを下げつつ、最後まで食品が持つ価値を高めようということです。食品を廃棄するのは本当に最後の手段であり、それまでに価格を最適化したり、あまりものを活用したりするなど食品を活用できる方法はあります。

野菜などの多くの食品は工業製品などと異なり、生ものであるため商品価値が下がりやすく、ほぼリアルタイムで食品と消費者のマッチングが重要になります。ここで、食品と消費者のデータを集めて、最適化計算を行うことでフードロスの改善がまだまだできると思います。
現状の予測では今後もフードロスは増えていくとされており、2030年までには、世界でフードロスの量が年間21億トンに到達し、その額は1.5兆ドル(165兆円)になるともいわれています。(出典:TACKLING THE 1.6-BILLION-TON FOOD LOSS AND WASTE CRISIS)
フードロスに対して企業単位では、高性能(CAS等)かつ大規模な冷却設備に食品を貯蓄して、食品の保存期間を長くするなど様々な対策をとれるかと思います。その一方で自分自身としては、フードロスを防げるようなサービスを構築していきたいです。主題の「フードロスをテクノロジーで解決できるか?」という問いに答えるためには、様々な取り組みを試行錯誤で実行していくしかないと思います。

テクノロジーの力によって、20年後、30年後にはフードロスを少しでも減らせるよう、自分でも手を動かして、課題に取り組んでいきます。


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