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19章 BBFE作戦 (1)国造りと政策の分野で、超大国に挑んでみる(2024.4改)

週末、昨年購入した南砺市の耕作放棄地に、金森知事とエンジニア達が居た。
今回は蕎麦の種蒔き作業を手伝う。新たに入手した土地は長年の間放置状態だった為、草が生い茂っていた。晩秋に枯れた草を農耕バギーが刈り取り、耕してそのまま地中に刈った雑草混ぜ込んで、土と馴染ませた状態で冬を越した。
この土地で蕎麦の連作と、蕎麦と綿花を毎年交互に栽培する比較実証実験を金森知事は試してみようと考えた。

農地を慣らし、蕎麦を育てながら、連作した際の生育状況や土壌の変化を観察する。蕎麦は荒れ地でも育つ。蕎麦は連作にも強い作物というが、高原地帯で生育状況をAIで記録しながら、都度確認してゆこうと企んでいた。一部は来年綿花を育てる。
元々、この周辺は草原地帯で、放棄地以外は人の手が入った形跡もない広い土地だ。牧場でもやろうかと考えていた時に、蕎麦がフト頭に浮かんだ。耕作放棄地のような荒れた土壌にほんの僅かな有機肥料を混ぜたただけ、それでも蕎麦は育つだろうか?と。
蕎麦の栽培・・日本人だからというのもあるが、ウラジオストックからやって来るロシア・ウクライナ人観光客が富山・金沢・奥飛騨・白川郷で蕎麦ばかり食べているというデータを参考にした。ロシア・ウクライナ料理でのそば粉を使ったレシピは数多くあるが、日本の様に麺にして食さないので感動したらしい。先日、モノは試しと、ロシア産の蕎麦粉を知事が仕入れた。ロシア産小麦粉と8:2にして手打ちして食すと、風味の良い美味しい蕎麦となり、ロシア産も同じ蕎麦粉なのだと理解した。
今の岐阜県知事の村井幸乃と共にウラジオストックを訪問し食事した際に、ロールキャベツの中に挽肉と共に蕎麦の練り物が入っていたのは驚いたし、すいとんのようにしてボルシチの具として出てきたのも驚いた。
そんなロシア・ウクライナ料理、中央アジアのレシピを取り入れて、小麦粉偏重の食文化にアクセントを加えられないだろうか?と企んだらしい。もし浸透しなければ、最悪は乾麺にしてしまえばいいと思っていた様だ。

日本よりも広い面積と広大な農地を持つビルマを得た共栄党は、かの地で蕎麦の他に、綿花栽培とコーヒー栽培を大々的に始めると聞く。
ビルマは森林を持つ分、プランクトンが多い海域なのでイワシやアジの稚魚が多数生息する。魚醤や煮干しにも困らないであろうし、肥料にもなる。綿花栽培には適しているだろう。    
プルシアンブルー社の衣料部門PB Martには布が必要だ。恒久的な供給原料になればいいな、と金森知事は思う。
新疆ウイグル自治区で生産される安価な綿を使うのは如何なものか?という風潮もある。農薬散布量が多い環境下での栽培に、ウイグル人が携わっているという報告が多数寄せられている。
そこへ、選択肢の一つとしてビルマ産コットンが新たに加わったらどうだろう?と夢想する。
また、カンボジアの繊維産業が「生産量ありき」なのに対して、ベトナムの繊維産業を「質とブランド化」によって、プルシアンブルー社は保護してきたが、ビルマの繊維産業も一気に質を上げる計画を立てている。

カンボジアとタイを対象とした経済成長プランでは、誰かさんが独裁軍事政権を毛嫌いしているので、王族に多額の金融資産を持たせるのが第一段階と定めている。
資金源は広大な面積を誇る王族の土地と定めて、太陽光発電と農場経営に加えて、PB Motors社の改造車両販売と、プノンペン、シェムリアップなどの都市のショッピングモールに、プルシアンブルー社との共同事業として店舗を出店してきた。

マレーシア、インドネシア・ジョグジャカルタ、ブルネイの王族とも同じスキームでビジネスを軌道に乗せ、王族が関与する投資会社から自国国内向けに投資を行ない、中国寄りの各国政府を牽制しながら対中国政府・対中国のカウンター役にロイヤルビジネスの御旗を掲げて、中国資本の投資に歯止めを掛けようとしてきたが、ビルマだけが、自分の領土(の様なもの)で好き勝手に使える。
マーケティング上のオモチャの様に、ビルマを捉えているのでは?と金森知事は想像していた。「それこそ、お得意の女体開発の様に・・」と不埒な思考が頭に浮かんでくる。
4月になればニュージーランド行き等、暫く時間を年下の夫と共にするので、知事は楽しみにしていた。娘の蛍は妊娠しているのもあって、富山で留守番が確定していた。邪魔者は居ないのだ・・

***

来月18日の富山市長選に、杜 蛍がサプライズの様に立候補する。
都内から応援部隊としてやって来た諏訪結子、池内知美、安東咲子のママ友「自称バツイチトリオ」の支援を受けて、選挙活動を始めた。
富山駅前の富山県知事事務所の隣・・というより、乗っ取って自分の事務所として使い出す。

蛍にとっては「次男」の圭吾と娘のあゆみ、幸乃の娘の彩乃とアリアの娘のマイにビラ配りを手伝わせて、富山駅前でマイクを構えて演説していた。

「こんなのしなくたって、楽勝だろう?」クラブチームを休まされてビラ配りしている圭吾は笑顔のまま文句を言い、あゆみと彩乃とマイはママ友の娘達高校生4人が、父親の諸島視察と出雲での応援演説に同行しているのが解せないでいた。 「ヤリまくってるに違いない」と思いながら、怒り顔のままの女子中学生達は、人に押し付ける様にビラを配っていた。

選挙ポスターとビラは長男の歩と異父弟の海斗と3人でツェ〇ゲン金沢のユニフォーム姿で腕を組んでいる写真を使っている。「今なら」母親と夫と写るよりも旬の素材だと考えたのだろう。
事実、正式な発表は明日月曜日だが、ニュージーランド五輪代表候補に選ばれており、横浜でのJ2公式選が終わると2人は、そのままニュージーランドに向かう。明日からはニュージーランド代表の黒いユニフォーム支給され、選挙期間中は全員着用するらしい。

「オールブラッ〇スみたい、かっけー!」と圭吾はフライングで一人羽織ってビラを配っている。背番号は白地の10番で「kEIGO M.」と書かれていた。

ーー

週末、平壌に米露中韓の首脳が集い、そして日本の首相がオブザーバーとして参加して、北朝鮮4カ国首脳会議が行われた。
5カ国首脳が頓に連帯を表明し、白々しい笑顔を浮かべるのに対して、金予生 北朝鮮副首席の顔には痛々しさが感じられた。   
「事実上の分割統治となり、北朝鮮政府と北朝鮮労働党は解雇通告されたも同然」とメディア各社が揶揄した論調で記事にする。

幸か不幸か、ビルマをニュージーランド首脳が訪問中で、ビルマにも大勢のメディアが集まっていた。何故か、首都バーマ、最大都市ラングーンの今の状況を伝えるニュースの方が扱いが大きかった。平壌市民の沈鬱な表情と、ビルマの人々の明るい顔の対比がはっきりしていたからかもしれない。

首都バーマと最大都市ラングーンでは再開発計画がスタートしており、両市内は建設ラッシュ状態になっている。
旧ミャンマー陸軍の兵士5万人が、建設労働者に加わっているとビルマ政府のスポークスマンが説明し、再開発事業完成後のCGの動画があちこちで流れた。 
再開発計画を纏めたのはプルシアンブルー社とPB建設で、PB Constraction Thailand社、Vietnam社がバーマ市内とラングーン市内に別れて、建設作業を行っていた。

通常都市の再開発となると、例えば日本では大プロジェクトの扱いとなり、コンサルタント会社や大手ゼネコンがジョイントベンチャーを組んで建設に当たり、不動産会社がプロジェクト全体を纏めてテナント募集や居住者の入居を促し、それなりのカネがかかるものだが、「ビルマの事業の殆どをAIが作成したので、プロジェクト立案費用として10万ドルも掛かっていない」とビルマの産業大臣が笑って明かした。

方や北朝鮮開発事業計画案の作成だけでも500万ドルを優に超えているのだが、完成後のイメージ動画の完成度も内容もビルマの圧勝、北朝鮮は計画を再考すべきと酷評されていた。各国のメディアはそれぞれ自国のデベロッパー企業に対して、北朝鮮とビルマの都市開発事業を委託した場合、どの程度の費用となるのか概算で出して貰っていた。
概ね500万ドル以上というのが通例で、「10万ドル以内というのは、流石に異常」と言及する。「プルシアンブルー社にとって都市開発事業は初めての経験なので、あまりケチると事業自体が危うくなるのではないか?CGの完成予想と実物が余りにも違いすぎる事態となるのでは?」と揶揄る向きが大勢を占めていたが、首都バーマの計画は平壌再開発事業の遥か上をゆく、と各国のデベロッパーが称賛していた。

民主ビルマ財団(Democratic Burma Foundation)を、モリが私費で設立し、金森富山県知事を財団の代表者に据えた。モリは実務と実権を担う「事務総長」に就いた。
財団の政策第一弾がバーマ(旧ネピドー)近郊に老人用の介護都市を建設し、5年間で100万人の居住者を集めるというものだった。
世界最大規模の財団の病院と新設する商業施設を中央に置いて、周囲に低層階マンションが立ち並ぶ居住施設が出現する。
同様の介護都市を、ラングーンとマンダレーにも建設する計画だと言うので騒ぎとなっていた。しかも対象となる介護施設居住者は、ASEAN諸国の高齢者を想定しており、各人をビルマへの移民として受け入れる方向で検討しているというのだから大騒ぎとなっていた。

施設のイメージをCGで作成されたものを見ると、老人一人一人に介助用ロボットが付きそい、5人の老人を介護福祉士1人が担当する。
介護福祉士は旧ミャンマー軍の衛生兵をトレーニング中だという。このチームで24時間体制で監視対応にあたる。  
実際に日本の富山と沖縄で計画している病院と低層階マンションと、周辺施設の動画紹介がされる。来年9月から1000名のビルマのお年寄りを受け入れて、テスト運用を始める。

ASEANには福祉介護政策のようなものは皆無に等しく、家族単位で親兄弟の面倒を見るのが通例だ。その環境に一石を投じる話しになる。少なくとも、各家庭が高齢者介護を請け負わずに済む。介護負担から解放された、安定した暮らしの実現を目指す。家族が離れ離れに暮らす事になっても、ネットで何時でも無料通話が出来、年に一度の家族のビルマ訪問滞在費も、財団が支給する。以前金森知事が打ち出した構想が、拠点都市の建設着工と共に少しづつ具体性を帯びていった。他にも医療・薬学・介護を中心にした総合大学を財団が設立して、寄宿舎生活しながら、老人ケアの実務と実践に当たる・・

そういったプレゼン動画が拡散し、ニュースや記事となって世界を駆け巡っていた。ビルマのプランに一貫して見られのが、東南アジア圏内に居住する人々への「想い」であり「愛情」だった。その種のコンセプトが北朝鮮側には皆無だったので、扱いが小さくなった。そもそも米中韓日露という福祉政策がダメな国が集まっているので仕方がない。「北朝鮮の方が福祉政策が良い」となれば、それぞれの本国で騒ぎになる。

4カ国協議の扱いが低調に終わった理由の一つが、週末に日本の離島、対馬と隠岐の島を訪問していた前大臣3名とモリ一行の記者会見だった。対馬と壱岐島、隠岐の島にPB Martの物流センターを建設して、朝鮮半島向けに家電、IT、衣料品、食料品、薬品をネット販売すると発言した。プルシアンブルーグループは朝鮮半島には進出しないが、サザンクロス物流が同社の製品を各家庭に供給すると言うのだから、米中韓日露の朝鮮半島進出企業が頭を抱えてしまった。

***

布団に横たわる裸体を踏まぬよう、足先で探りながら無秩序状態となった布団の海を抜け出ると、隣室で服を着て、外に出る。田舎で安全とはいえ、女子高生4人なので、鍵と合わせて警備用ドローンを玄関前に置き、何度かチェックして万が一に備えてから、歩きだした。

対馬の村落を早足で歩いていると「場所が変わっても、やってる事は毎朝同じだな」と思ってしまう。昨日は早朝の隠岐を散歩していた。通常の時間帯に気軽に街を散策する事がモリは出来なくなってしまったので、早朝の時間帯の散歩やランニングを愉しむようになった。
訪問した街を隅々まで理解するには、街歩き、村歩きは欠かせない。訪問先が「投資先」となるケースが殆どなので、街の全体像と繁華街の規模と状況を最初に確認する。後でこの地に住まう人々の年齢別人口数等の数値データを補ってゆくと、指標となる情報が導けたり、仮説・推論が浮かんで来るようになる。

島の内湾を眺める展望台にやって来ると、湾内に浮かぶワカメ養殖、サバ・マグロなどの養殖ブイを、得意のフロート技術に置き換えて大規模な海上ソーラー発電を行ない、島内へ安い電力供給、売電で電力収入を得てはどうだろう?と考える。

緑豊かな自然の残る島の高台まで登って来ると、50キロ先の韓国第二の都市釜山との相違点や特徴点を定めて、対馬の商品価値を高めるためにどうすれば良いかと考える。対馬と壱岐島には韓国人観光客が一定数訪れるのだが、この数を増やしてしまおうと企んでいた。

海岸部を見ているとかなりの面積のソーラー発電が期待できる。何しろ東シナ海に近い。冬だろうが発電可能だ。山口・鳥取・島根の山陰側海岸部までの拡張を視野に入れて、PB Enagy社の山陰支社を設立してもいいかもしれない。

2010年代、世界中でメガソーラーなるものが世に出始めた。日本でもこれから太陽光発電がビジネスチャンスになると金融機関や不動産会社、投資家が飛びついた。遊休地に太陽光パネルを敷き詰めて発電するのが当初の計画だったが、浅はかな業者や金融機関も数多く現れて、無計画で無秩序な事業も増えてしまった。
当時の愚かな日本政府は規制するどころか、新たな献金先・カネづるの登場に喜びながら、これからの新エネルギー政策に関わる重要な事業だと吹聴して有象無象も含めて容認した。
業者は後先も考えずに土地を購入し、地権者を騙して、山の斜面や、山の頂上部の木々を伐採して、自然環境を破壊して太陽光パネルを敷き詰めていった。
大方の予想通り、自然災害を巻き起こす原因を生み出してしまう。山の治水能力を侮り、山林の重要性を全く考えず、山の上部で日当たりの良い場所だけを求めて開発を進めていった。日当たりの良い場所の木々が無くなれば、土壌が荒れる。そんな日本人の粗忽さ・浅はかさをあざ笑うかのように温暖化が進み、夏の日差しと気温は獰猛さを増した。夏だけで言えば熱帯にはヒケを取らない国に転じた。

夏の暑さばかりでない、気候変動は降雨変動も齎した。梅雨から7月に掛けて異常降雨の年が繰り返されている。
世界では干ばつか、豪雨か、いずれか極端な方向へ別れるようになったが、日本では異常な大雨が毎年の様に続く。豪雨の度に自然環境のバランスがズレ、河川が氾濫し、山の斜面が崩壊してゆく。損失が目につくようになったのはメガソーラー推進も少なからず絡んでいる。

昨年、新たに発足した新・社会党は、早晩メガソーラー事業は破綻し、国土も荒廃すると予見して、開発そのものを問題視する論調を主張し続けている。
同時に、農地と湾などの海上と、倒産したゴルフ場やスキー場の跡地等に太陽光パネルを広げていった。山間部を弱体化させない太陽光発電となると、「既に自然が破壊されている」農地か、ゴルフ場、スキー場位しか考えられなかった。
とは言え、大半が山地を占める日本列島では農地面積自体が限られているので、発電場所を海上に求めた。
10年前の太陽光パネルでの発電能力では得られる電力も限られたものでしかないが、プルシアンブルー製の耐水性パネルは同じサイズのパネルで2.6倍の発電量を得られるまでになった・・

暫く高台で島の沿岸部を眺めて考えていたら、体が凍えて来たので島の中腹の貸し別荘がある集落まで、坂道をゆっくりと走ってゆく。家に到着して時刻はまだ6時半、待機中のドローンをそのままにしてそっと家に入ると、娘達が気配を殺して待ち構えているのが分かる。女子大学生達も性を覚えたての頃は、貪欲なまでに朝昼晩と求めてきたなぁと思い出す。
ワザと罠にハマったかのように無抵抗モードで部屋に入ると、押し倒されて身ぐるみ剥がされて、昨夜の再現となる。

素直に表現すると・・愉しんでいた様に思う。

(つづく)


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