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自由と藍色とパリと ~Bリーグ決算考察③ 琉球ゴールデンキングス 物販収入編~

どうも。プロスポーツがどうやって稼いでいるのか、おはようからおやすみまで四六時中考えているTaiyoです。

前回のnoteは、2016-17シーズンより2018-19シーズンまで3シーズンの琉球ゴールデンキングスの決算報告をもとにスポンサー収入について掘り下げました。キングスの活動理念である「沖縄をもっと元気に!」これを「沖縄県出身選手」「沖縄音楽」で表現することで沖縄人の心を掴み、沖縄の地元企業から受け入れられそして支えられる存在になり得た事、そしてスポンサー露出方法を試合演出と上手く絡めて価値コントロールしている事を述べました。

では、今回のnoteはキングスの物販収入について、私の推測も絡めながら掘り下げます。

物販収入
2016-17 ¥58,781,000(7.2%)
2017-18 ¥116,113,000(11.9%)
2018-19 ¥128,125,000(11.5%)
 ※カッコ内は営業収入に占める割合

※この物販収入は、飲食物販売は除くグッズ販売のみです。
独自に決算報告を公開している千葉・宇都宮・北海道の報告内容とBリーグ決算報告の金額から推測出来ます。

2018-19の物販収入が営業収入に占める割合11.5%は、宇都宮(11.8%)に次いでB1で2番目に高い割合です。他競技の例から見ても、物販収入が10%を超えるのはプロスポーツクラブの収益構造としてバランスが良い。そして宇都宮スゴい。

物販とくにグッズ販売は、入場料収入・スポンサー収入とは異なる性質を持ちます。販売経路さえ確保していれば、試合日以外の収入としてキャッシュフローの面で重要な意味を持ちます
しかし、物販には必ず原価がかかります。在庫リスクも存在します。入場料収入だと会場設営にかかる経費がほぼ一定ですので、会場キャパを無視すれば客を入れれば入れるだけ儲かります。ですがグッズは計画・販売予測をしっかりしないとすぐに赤字です

特にBリーグ参入以降、キングスはグッズ販売計画において特徴的な施策をとっています。そしてそれは世界のプロスポーツ界隈ではトレンド的な流れです。

自由な応援スタイルとグッズとの関係

バスケットLiveの中継映像の客席を見てると、キングスのホーム客席は他の会場と「色味」が違う事にお気付きでしょうか?
他会場では、熱心なブースターがチームカラーのジャージやTシャツを着てメガホンやハリセンの応援グッズを手に鳴らしながら応援しています。
キングスの会場で、チームカラーのゴールドジャージを着ている人はあまり目立ちません。メガホンやハリセンは誰も持ってません。実はショップに売ってないのです(正確にはジャージはあります。でもショップの隅っこに寂しく陳列されているだけです)

キングス自身が「ご自由に楽しんで」と宣言しています。これは球団設立当時からNBAのような雰囲気を本気で目指して運営しているクラブの譲れないこだわりです。行列が苦手な沖縄人にとっても自由な応援の方が性に合っているようです。プレーオフだけはお揃いのTシャツを着るのもNBAではお馴染みです。

ただし、グッズ販売にとっては「自由な応援」は不利な要素です。通常プロスポーツの主力グッズは「応援グッズ」だからです。bjリーグ時代にはキングスのグッズ販売に目新しい点はありませんでした。

”ゴールデン”キングスのチームカラー

Bリーグ参入以降、キングスは戦略的にチームカラーをネイビー(藍色)に寄せています。具体的に言うとシンボルカラーはゴールド、グッズ展開はネイビーといったところでしょうか。そこには今後のグッズ戦略が見え隠れします。

2017-18からはネイビーのホームジャージも登場。ネイビーはグッズに対する汎用性が高い色です。特にアパレル関係には。

パリのように普段使いできるグッズを

最近のグッズ展開はTシャツを主力商品としたアパレルに注力していますが、特徴的なのは普段使いできる商品を志向している点です。

チームロゴをデカデカとプリントしたTシャツはごく少数で、【RYUKYU GOLDEN KINGS】をデザインの一部としていたり(色々なパターンがあります)、マスコットのゴーディだけで「キングス」と書いていなかったり。ぱっと見すぐにはキングスグッズと分からないものばかりです。そうそう、キャップも【Kings】と書いているシンプルなやつ、あれ好きです。

普段使い出来るアパレルを主力商品にする事で、試合会場だけでしか売れない限定的な商品ではなく、オフシーズンでも通年的に売れる商品展開を狙っています。それが表現されているのが、2017年に北谷町アメリカンビレッジで開店したオフィシャルグッズショップです。

北谷町アメリカンビレッジがどんな場所か説明しますと、若者向けのセレクトショップが集まり観光客も多い人気エリアです。店舗内装はロッカールームをモチーフにしたお洒落な造りで、周囲のセレクトショップとの違和感は感じさせません。プロスポーツクラブが店舗を構える場所としては攻めすぎてます。キングスファン以外にもTシャツを手に取ってほしいのです

サッカーフランスリーグの強豪パリ・サンジェルマン(PSG)も、普段使いできるちょっとオシャレなアパレルで成功しています。キングスもそこをターゲットにしているはずです。

アパレルの自社一括方式

そしてこれは私の推測ですが(たぶん当たってますが)その普段使いできるアパレルグッズはキングスの自社一括方式を採用しています

Tシャツのタグ部分を拡大すると「販売:沖縄バスケットボール株式会社」と書いているのが分かります。

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グッズ会社にロゴ等を許諾して生産を委託する「ライセンス方式」は、在庫などのリスクは軽減されますが利益率は低くなります。クラブ自身で企画・製造・販売を行う「自社一括方式」なら利益率は高くなりますが反面売れない場合のリスクはクラブに直接かかってきます。

リスクを取ってグッズで稼ぐ

実店舗を構えるリスク。自社一括方式を採用するリスク。リスクを取るという事は「そこで稼ぐ」という決意の裏返しです。グッズ展開は今のところ大成功とは言えない規模ですが、今後伸びしろしかないと言えるでしょう。個人的にはもう少しアパレルの素材感を高めてくれたらもっと高くても買います!

いかがでしたでしょうか。自らのこだわりである「自由に楽しむ」ことを大事にしつつ、普段使いできるアパレルで稼ぐ戦略を取り始めたキングス。

次回は、キングスのユース・スクール関連/配分金(賞金除く)について掘り下げてみたいと思います。

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