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沖縄をもっと元気に! ~Bリーグ決算考察② 琉球ゴールデンキングス スポンサー収入編~

どうも。プロスポーツがどうやって稼いでいるのか、おはようからおやすみまで四六時中考えているTaiyoです。

前回のnoteは、2016-17シーズンより2018-19シーズンまで3シーズンの琉球ゴールデンキングスの決算報告をもとに入場料収入について掘り下げることで、キングスのこだわりである「チケットの価値」をいかに高めるか、その価値を作り上げるポイントは「顧客データを集めろ」「全席指定席への挑戦」「シーズンシート最優先主義」であると述べました。

では、今回のnoteはキングスのスポンサー収入についてスポンサーとの関わり方を交えながら掘り下げます。

Bリーグ1年目~3年目のスポンサー収入

スポンサー収入
2016-17 ¥365,471,000
2017-18 ¥413,039,000
2018-19 ¥467,890,000

2019-20 キングスのスポンサー数

トップオフィシャルパートナー 12社
オフィシャルパートナー    124社
事業提携パートナー      5社
サポートカンパニー      118社

様々な業界の、しかも同業種のある意味ライバル企業である会社もキングスのスポンサーとして名を連ねています。そして特徴的なのが、全国展開する大企業ではなく、沖縄県の地元企業が大多数を占めている点です。KDDIではなくau沖縄セルラー、株式会社ファミリーマートではなく株式会社沖縄ファミリーマートなど。

これは勿論キングスのクラブとしての営業活動の賜物なのですが、ここまで地元企業に支持される理由は、キングスの活動理念「沖縄をもっと元気に!」と、それをただのお題目としない「沖縄の心を知る」姿勢にあります。

沖縄をもっと元気に! の本当の意味

キングスのスポンサーについて語る前には、沖縄とはどんな場所なのかを語る必要があります。

沖縄という場所は、非常にややこしく興味深い場所です。かつては琉球王国という独立国家であったという事実があり、それを沖縄県民それぞれが良くも悪くも色々な受け止め方で自分の心に秘めています。

良くも悪くも、世代による程度の差こそあれ「沖縄」と「本土」は分けて語られるものなのです。そういう場所です。「ヤマトゥンチュ(本土人)になりたくて成りきれない心」「総理大臣が先か、甲子園での優勝が先か」など、それを語る言葉は数多くあります。

沖縄人は「沖縄」という場所に対して特別な感情があり、本土に出て活躍する沖縄人を無条件に応援する人たちです。「甲子園で沖縄県代表の試合が始まるといつも渋滞している国道58号線がスイスイ進む」という笑い話がありますが、特にスポーツにおいて全国の舞台で活躍する沖縄県代表は大きな声援を浴びます

また企業においても、離島県であるがゆえの様々な障壁や沖縄独特の気性慣習により、本土の大企業も中々進出できず、そして県内企業も本土に進出できない状況が戦後長く続きました。沖縄の地元企業も、沖縄という狭い島の中で独自の発展をしていきました。

沖縄という場所は、人も企業も「本土」に対して特別な感情を持つ場所である、と言えます。

琉球ゴールデンキングス活動理念である「沖縄をもっと元気に!」とは、沖縄の人そして企業にとって誰しもが心に秘めている言葉である、とも言えます。

「沖縄の心を知る」姿勢

しかし、沖縄というのは本当に面白い場所です。沖縄人は「ニセ沖縄」を非常に敏感に嗅ぎ分けます。どんなに上手にウチナーグチ(沖縄の方言)を話しても、ほんの少しのイントネーションの違いで本土出身者を見分けますし、沖縄人で「ベスト・キッド2」を好きな映画にあげる人に会った事はありませんし、これからも現れないでしょう。言葉だけではなく、本当に沖縄を愛し理解する姿勢を見せなければ、沖縄という土地には受け入れてもらえないのです。

現在、キングスは沖縄に完全に愛され「我(わ)ったーチーム」(私たちのチーム)として認知されています。キングスというプロチームを一から立ち上げた方々はほぼ本土出身者です。ここまで愛されるチームになるには相当苦労をしたと思います。そのカギは「沖縄県出身選手」「音楽」です。

「沖縄県出身選手」は経営戦略の根幹

キングスといえば沖縄県出身選手、というくらい中心選手に県出身者を据えてチーム作りをしています。bj時代、県出身選手が活躍して奇跡の優勝を果たした2年目のキングスは「沖縄が日本一になった」と沖縄に愛されるチームとなるには十分なインパクトを残しました。もしこの2年目での優勝が無ければ、勝敗に左右されるようになり県外の有力選手や外国人選手に頼るような平凡なチームになってしまった事でしょう。

この2年目の優勝により「キングスは沖縄の代表」という看板を背負う幸運をゲットしました。そしてそれは地元企業にスポンサードしてもらう十分な理由になりました。キングスのスゴいところは「勝ったから」スポンサーが増えた訳ではなく「沖縄人が活躍したから」スポンサードしてもらえた事をちゃんと理解しているところでした。

その後bjで優勝出来ない時期もありましたが、県出身選手を中心に据えるというチーム作りがブレる事はありませんでした。「沖縄県出身選手」は単なるチーム戦力ではなく、チームのアイデンティティであり経営戦略の根幹となったのです

「沖縄音楽」の持つ力

キングスのホームゲームでは、琉球音階のオリジナルBGMが鳴り響きます。これはクラブ設立時から変わりません。

沖縄は音楽の島です。BEGINの「島人ぬ宝」の歌詞を聴いて心揺さぶれない沖縄人はいないと断言出来ます。

ただ琉球音階のBGMを流せばいいわけではありません。キングスBGMにはちゃんと沖縄人の琴線に触れるストーリーがあるのです

派手なオープニング選手紹介前に流れるBGM、これは沖縄では結婚式などの祝いの席の幕開けに必ず踊られる「かきやで風節」をアレンジしたものです。

そして、キングスが勝利した瞬間に流れるBGM、これは人々が集まる宴席のクライマックスにその場にいる皆で踊るカチャーシーの祝い曲である「唐船ドーイ」をアレンジしたものです。

つまり、キングスの試合は祝宴・楽しむ場所であり、「かきやで風節」で幕開けして、皆で飲み語らい、最後に「唐船ドーイ」に合わせてカチャーシーを踊り勝利を喜ぶ、というストーリーがBGMで演出されているのです。そしてそのストーリーは沖縄に深く根差したものです。

キングスの演出にとって大事なことは、ド派手なレーザービームやLEDビジョンではなく、沖縄人そして企業に「我(わ)ったーチーム」と感じさせる「沖縄音楽」なのです

スポンサーの露出方法も細部までこだわる

実務上のスポンサー露出についても語ります。まず会場でのスポンサー露出ですが、かなり計算されています。スポンサーランクに応じた露出格差が明確です。それはキングスをスポンサードする事の価値を上手にコントロールしていることになります。

会場には2階席前面にリボンビジョン状の横長ビジョンが設置されていますが、中継映像にも必ず映るベンチ裏側だけに設置されています。つまり最も広告効果が高い位置に、表示内容を変更出来る広告特化型ビジョンを設置しています。Bリーグ規定にあるビジョン設置、これを試合演出に使うのではなくスポンサー露出で使うという振り切った発想が素晴らしいです。そしてこのビジョン広告露出は、最もスポンサード額が高いであろうトップオフィシャルパートナー専用になっています

また上の写真で2階席上部にもスポンサー看板が出ていますが、キングスカラーである藍色で統一されています。会場の空きスペースを全て売り物にする一方、中継映像の画面映えの面でビジョン広告と差別化、トップオフィシャルパートナーの優位性を担保しています

そのビジョン広告と逆側つまり中継映像に映り辛い逆サイドには、他オフィシャルパートナー看板がカラー看板として所狭しと設置されています

すごくステキだなと個人的に大好きなのが、クォーター間に行われるキングスダンサーズのスポンサー看板パフォーマンス。あれ簡単じゃないですよ。ダンサーズの足裁きを完全にリンクさせながら100枚近いスポンサー看板を掲げるダンスは、僕らが思っている以上に練習を積んでいるはずです。

冠パートナーゲームの多さも特筆すべきです。全てのホームゲームにはそれぞれ冠パートナーの名前がついており、その試合の至るところで冠パートナー企業の名前を連呼します。

沖縄をもっと元気に! でつながるスポンサー企業

いかがでしたでしょうか。沖縄という場所のある意味センシティブな部分をしっかりと汲み取り、まさに「沖縄に支えられる」クラブになったキングスの取り組み。そして計算されたスポンサー露出。

次回は、キングスの物販収入について掘り下げてみたいと思います。

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