キャプチャ_-_コピー_-_コピー

スクール事業だけでは稼げない ~Bリーグ決算考察④ 琉球ゴールデンキングス ユース・スクール関連編~

どうも。プロスポーツがどうやって稼いでいるのか、おはようからおやすみまで四六時中考えているTaiyoです。

前回のnoteは、2016-17シーズンより2018-19シーズンまで3シーズンの琉球ゴールデンキングスの決算報告をもとに物販収入編について掘り下げました。キングスの自由な応援スタイルから、グッズ販売は応援グッズではなく普段使いできるアパレル商品が主力商品である事。試合会場だけで販売するのではなく実店舗も構えており、さらにアパレル商品の多くは自社一括方式を採用して、在庫等のリスクを取りながらもグッズ販売を将来のチーム収入の主力にしようとしている事を述べました。

では、今回のnoteはキングスのユース・スクール関連について掘り下げます。

Bリーグ1年目~3年目のユース・スクール関連収入

ユース・スクール関連収入
2016-17 ¥7,329,000(12位)
2017-18 ¥5,495,000(13位)
2018-19 ¥8,664,000(16位)
 ※カッコ内はB1クラブ内順位

キングスのスクール事業は始まったばかり

スクール事業であるキングスアカデミーはBリーグ開幕に合わせて2016年7月に開校しました。2019年には沖縄県内5か所のスクールで各週1回程度開催しています。

キングスアカデミー費用(2019/12現在)
入会金 10,000円(税別)
年会費 1,000円(税別)【保険代】
月謝 4,000円(税別)

キングスのスクール収入は低くB1下位です。収入額とアカデミー費用から推測するに、スクール生徒数は100人前後ではないでしょうか。まだまだ小規模です

ちなみに、Bリーグで最もユース・スクール関連収入が多いのが横浜ビー・コルセアーズで、営業収入に対する割合が16.7%と他Bクラブと比較しても突出しています。

ユース・スクール関連の収益を考える場合、ビジネスとして競合する相手は誰なのか、をはっきりとさせる必要があります。そしてスクール事業はプロスポーツチーム経営とは完全に別のビジネスでもあります

スクール運営は「習い事ビジネス」

プロチーム経営とは「エンターテインメント事業」であり、余暇時間を取り合うビジネスです。競合相手は他プロスポーツであり、映画やテーマパークなどの他エンターテインメント事業です。

対して、スクール運営は「子どもの習い事ビジネス」です。つまり教育事業であり、学校を終えた後の子どもの時間を取り合うビジネスです。競合相手は当然他の習い事、スイミングスクール・そろばん・ピアノ教室です。また少し視点を変えると「子どもを預かってもらう」ビジネスでもあります。その視点で言えば学童保育、地域のミニバスチームなんかも競合相手と見る事もできます。

子ども相手のビジネスはかなりシビアです。それぞれの家庭ごとに目的が違う、時間の使い方も違う、家庭によってお金のかけ方も全然違う。

何より大きいのはスクール事業を運営していくには専属の人材が必要だ、という事です。子どもを適切に指導、対応するスキルを身につけた人材を継続的に雇用しなければいけません。しかもスクールの生徒数に比例して運営に必要な人数も増えていきます。スクール事業の規模を拡大することは可能かもしれませんが、拡大イコール利益率の向上とはなりにくい業種です

Bリーグはスクール事業を推進している

しかし、Bリーグはクラブライセンス基準に「ユースチームなどの育成環境の構築」と明記しています。スクール事業は利益率も低くクラブの負担となると分かっているはずなのに。

Bリーグはその目的の一つに掲げる「日本代表の強化」の一環として、ユース・スクール関連事業を各クラブに求めているように見えます。

もちろん「選手強化」という面もあるのでしょうが、もう少し掘り下げてみるとBリーグ全体としての「囲い込み戦略」が見えてきます。

スクール事業は「バスケを観る人」を育てる種まき

Bリーグの事業構造を考察する上でのバイブルである「稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである」にそのヒントがあります。

第3章 野球・サッカーを超える【事業戦略論】
に以下のように書いています。

権益の統合は権利だけではない。データも、である。 <中略> これは世界的にみても初めての取り組みだと思うが、「共通バスケID」で競技者やバスケファンを紐付けていきたい。 <中略> 観る人と協議する人との好循環をいかに作っていくかが、スポーツコンテンツホルダーとしての使命だと思っている。

この章には、アマチュアも含めすべての競技者データベースを連携させる壮大な戦略が書かれています。Bクラブが運営するスクール事業はその第一歩となる事でしょう。

スクールに通う子ども達は、将来のBリーガーだけではなく、Bリーグを楽しむファンになり、人生を通してずっとBリーグとのつながりを持ってもらいたい、とリーグは考えているのです。そして大事なのはその顧客データを細切れにせず垂直統合型で共有しようとしている点です。

スクール事業だけでは稼げない

いかがでしたでしょうか。キングスのスクール事業はBリーグ開幕以降から始まってまだまだ小規模である事、スクール事業は利益を上げづらい事、そもそもスクール事業はBリーグ自体が推進しており、その目的は単なる強化だけではなく、Bリーグの「バスケを観る人」を育てる種まき事業である事、これらが見えてきたのではないでしょうか。

今回はキングスの考察というよりBリーグの事業構造考察となってしまいました。

次回はキングスの配分金(賞金除く)について掘り下げてみたいと思います。

この記事が参加している募集

Bリーグ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?