鑑賞ゲリラ Vol.43『となりはなにをするひとぞ』 レポート(1) 2024/4/19開催
開催情報
【開催日】2024年4月19日(金)
【会場】金城市場
【展覧会】「隣のおうちもう寝てるから」
会期:2024年4月15日(月) ー 4月21日(日)
【出品作家】
梅澤幸佑、田中しゅう、玉田大和、中根光駿、西田咲貴、林みらい
内容
作品
梅澤幸佑
《ともなう面(床)》 2024 スプリング合板、カラーテープ
《コの字》 2024 木材にキャンバスをマウント、白亜地、メディウム、顔料
会場の中心の床に設置された大型の作品。正方形の7枚の合板の下にスプリングがついており、真ん中の1枚には、グリーンの人工芝が貼られている。
さらに2枚、少し外れた場所に重ねて設置されている。正方形の7枚の合板には、実際に乗ってみることができる。乗ると、スプリングが効いていて、弾む床を感じ、自然に笑顔になってしまう。この作品を見て、感じて楽しんでみたいと思う。
鑑賞内容
ファシリテーター(以下 F):まずはじっくりみてもらい、気づいたところや気になるところを聞いていく。
▶︎(床に貼っている赤いテープをさして)このテープまで作品なのかなって。合板にも同じテープが貼っているし、他の場所にはないので。
▶︎ぼよよんぼよよんてなってそうだけど、乗ってもいいのかなって。
▶︎なんだこれはとしか・・・
▶︎市場なのに、四畳半でくつろいで麻雀でもやるのかな。真ん中の緑が貼っているところで。市場だからみんなが集って。雀荘「金城市場」みたいな。
F:正方形に仕切っているところが、麻雀をやるところみたいな、楽しそうな感じがしますね。
▶︎空港みたいに見えていたので、今まったく思いつかない見方を聞いて、すごくおもしろく、楽しいものに見えてきました。
F:どのあたりから空港みたいだと思われましたか?
▶︎この辺りのマークなどが飛行機が止まったりするところ。
F:たしかに空港にはいろんな線とかマークがありますね。
▶︎赤いラインがあって、全体がトロッコのよう。
F:作品の下にも赤いラインが走っていて線路みたいですね。
どんどん楽しそうな感じになってきましたね。ではせっかくなので、乗ってみましょう。
▶︎耐震設計みたい。
▶︎この建物にはふさわしい。
▶︎一人で来たら絶対乗るって発想なかったです。
▶︎踊ってしまいますね。
F:乗ってみてどう?
▶︎体が揺れて楽しい、トランポリンみたいに動きが出て。
▶︎悪いことしてるみたい。
▶︎これだけ揺れたらこの建物壊れちゃうね。
▶︎上のオブジェが気になる。
▶︎2枚避けてあるのは避けてあるだけ?本当は、9枚。
F:外れている2枚だけ重ねてある。本来の位置と違うのでは?ということですね。
(本来の位置とは、9枚が正方形になるように並べられている状態のこと)
▶︎ジャンプしたいという欲求を掻き立てるのでは。
F:2枚はずれているということは本来はどこにあると思いますか。
▶︎これがここでこれがここで・・・
▶︎なんでかなって。そこにあれば、すごく安定する配置になるのに。イレギュラーにはずしてあるのは、何か意味があるのかな。飛島?
▶︎2枚重ねのところにジャンプするのは怖い。板も斜めだし。水平を保つのは大変、地面が坂になっている。
F:市場だったので水が流れるようになっているのかも。
▶︎(きっと)真ん中に魚屋さん関係があって小さな町とかの雛形みたいに。建物があって船があって、めぐっている、ジオラマみたい。
乗ったら自分が怪獣みたい、素直に作ればよかったのに、ガタっとしている。
(ここで、鑑賞者に作品名《ともなう面(床)》《コの字》を伝える。
<ともなう面>に、<コの字>が乗っている。
「ともなう」ってなんだろうと、作品をみる。)
▶︎コの字って言われたら「コ」にしか見えない。
▶︎でも、「コ」の状態になっているものはない。色も置き方も違うから、多様性じゃないけど、いろんな「コ」が(ともなう面)に参加している。集っている、ともなっている・・・
F:「ともなう面」に「ともなうコ」
▶︎ここにある以上、この建物を反映しているのかな。寄って集まっていたのに、だんだん形を変えていく、まとまっていたものがだんだんだんだん・・・っていうのを反映しているような。麻雀やってたのに、3人になってしまった、みたいな。
F:2つ離れている板が、離別していく。
▶︎船で旅立っていく、みたいな。
▶︎麻雀からの旅立ちってことですかね。
▶︎あえて、ここでやっているということの意味を考えるとそうやってみてしまう。場所性。
▶︎体が揺れて楽しいっていう感覚も「コ」の寄ってくる楽しさに連動している。作品自体が楽しい感じがするんだけど、先ほどおっしゃったように、時間の流れとか、旅立っていってしまうグループもあるよ、みたいな。
F:乗って楽しいだけではなくて、ストーリー性があるよ、雀卓の中心点が本当はみんなが集まるポイントだったのかな。
▶︎象徴的な感じがすると読みとりたい。
F:板を乗せてある土台の素材が、天井に見えている市場の建物の端材と似ている(同じ)。なので、この場所っていうのを表しているのかな、と思ったりしました。
本来は、体操の床運動を表現した作品だったのですが、下見不足のために、鑑賞の内容がストーリーになってしまったことはファシリテーターの反省点です。
振り返るといくつか、体操につながりそうな発言がありました。
ですが、作品、また、「金城市場」という特別な場所から感じられるメッセージや表現したいことを鑑賞者が読み取ろうと細部まで観察できた鑑賞会だったと感じます。
作品自体の「楽しさ」のおかげで、和やかな鑑賞となりました。
【ファシリテーター・レポート】松村綾子
【鑑賞時間】約 20 分