鑑賞ゲリラ Vol.47 『俯瞰するつながり』レポート(1) 2024/7/27開催
開催情報
【開催日】2024年7月27日(土)
【会場】Gallery HAM
【展覧会】作間敏宏 個展「接着/交換」
会期:2024年6月29日(土)~ 8月3日(土)
【出品作家】
作間敏宏(SAKUMA Toshihiro)
内容
作品
《接着/交換》2024 年
鑑賞内容
大型の作品のため、1回目は作品の部分を鑑賞することにする。
まずはじっくりと作品を見てもらう。
F:何か気づいたことや気になったことはありますか?
▶円がたくさんあると思ったけど、よく見ると六角形の穴の空いた物がたくさんつながっている。
F:どんな風につながっていますか?
▶密集しているところもあれば、まばらなところもあるし。一番びっくりしたのは、ひとつひとつの板の穴が思ったより多くて。ひょっとしたら穴の面積の方が広いんじゃないかなと。
F:かなり穴が空いている。密集しているところもあり。
▶ れんこんみたいだなって思いました。六角形の形や穴の空いてるところ、スライスの加減から、れんこんチップスを思い出しました。
F:確かに。うすくて、穴が空いて真円じゃないゆがんだ感じが、れんこんチップスみたいですね。
▶木かなとも思ったけど、圧縮した紙のようでもあると感じました。
F:それは薄さから?
▶表面の滑らかさからですね。木の独特の毛羽立った感じがしなくて、硬い紙かなという感じがしました。
▶れんこんというか、ハスの花の実のような感じがします。
F:地下茎なのか、花の実の部分を上から見るのか、「蓮」を想像させる作品ということですね。
▶ゆるい六角形で、切り込みが六か所入っていて、丸くくり抜かれているの
は、正円ではなくてフリーハンドで書いたような。3つの大きさの違いがある。
▶一番下のものは、べたっと置かれているのではなく側面で接地している。
F:側面で接地しているので、全体としてふわっとしている、軽さを感じる印象。
▶大きさには違いがあるけど、切れ込みの長さは同じ印象。最低限のワイヤーなどはあるけれど、よくバランスを崩さずに宙に浮いているように保っているなと。穴だらけで、ひとつふたつだと向こう側をのぞきたくなるけれど、これだけあるとのぞく気が失せるなと。穴の向こうにも穴があって、どこを見ればいいのか分からなくなる穴の数。
F:近づいてみると余計に穴だらけですね。
▶ 穴の空いている面が大きいという話があったんですけど、これだけ空いて
いると穴を穴と感じなくなってしまう。
F:穴があきすぎて、穴っぽくない。穴の多さもまた軽さというのにつながっているかもしれませんね。
▶ 穴によって床の色が見えているので、濃淡がはっきりしているように感じ
ますね。場所ごとにコントラストがはっきりする。リズム感もあるような。
F:浮遊感とリズム感と、固定しているけど、動きも感じられる。
▶横から見ると、あんまり「ない」ように見える、でもちゃんと「ある」。不思議な感じは、ちょっと人間関係みたいですね。
F:濃い人間関係と、薄い人間関係。動きがあるところも、もしかして生き物を表しているような。そう考えると、切れ込みの長さが全部同じじゃないかっておっしゃっていたことも、人同士のつながる力、みたいなものかもしれませんね。
▶そう例えるなら、この人大変だなー、みたいな。(密集しているところを指して)
▶むっちゃ支えてる。支える人と、支えられる人、上に登っていく人。
F:つなげられるところは全部つないでいる人もいる。おもしろいですね。
▶模様(つながり方)のパターンが全部一緒かな。一つの型をもって組み上げられている。リズミカルなのはそこから来ているのかなと。ちょっと違う型のところは、ブレーキになっている。トントントンと続いて、またトントントトン、のような。ランダムにつながるように見えて、リズム感を感じられるように、同じ型を使っているように思います。
F:大きさが違っても型は同じ、ということですね。
▶そもそも、なんで六角形なのかなって。組み立てやすいからなのか、奇数だと差し込みの場所が困るからなのか、だったらどうして円じゃだめだったのか、六角形であることで、みなさんがおっしゃるリズム感を感じられるのか、気になります。
F:この作品は、みなさんご想像通り、最終的にここで組み上げられていまして、その時は上から組まれています。出来上がった作品は下から上に昇っているように感じられますが、実際は上から設置されています。
この場所に合わせた作品ということですね。
▶一枚一枚は湾曲させたりしないで真っ平、関わり方は必ず垂直で、パーツ
としては直線的だけれど、穴とか空いていたり、ゆるやかな六角形などはフリーハンドの有機的な感じがする、無機的なパーツから有機的なものができている。
F:無機質な感じのするパーツから、リズムなどが感じられる有機的なものができている。
▶ 蓮のような印象から、「螺旋」とかそういう、結ばれる、みたいな印象に。
F:繊細な感じもする。
▶穴がふさがっていたら、だいぶ印象が違うだろうなって。
F:存在感や重さが違ってくる。
▶穴があるので透け感がある。同化しやすい感じ。
(他にも例えとして鍋の灰汁、浮いた油、昆虫の羽根の模様、骨粗鬆症、など、いろいろと感想が出ました。)
F: 無機質な組み合わせというよりも、リズムがあったり、動きがあったり、「生き物」のようなものが見えてきたなというところで、次にバトンタッチしたいと思います。
参加者の方から、「考えていることを話すのって難しい。見たままのことを話すのってこんなに難しいんだなって初めて思いました。」というご意見をいただきました。
あらためて振り返ってみると、思ったこと、感じたことを自由に話していただくことで、参加者の方の考えが深まっているのを感じました。
対話型鑑賞
の基本は、「みる」「かんがえる」「はなす」「きく」ですが、その、「きく」の部分には、他の方の話を聞いて考える、だけではなくて、自分自身が話していることを聞いて考えている、という面もあったりするのでは、と思います。考え過ぎてしまうと話すことを躊躇ってしまいますが、とりあえず話してみたら、自分の考えに気づく、ということもあるのではないでしょうか。
【ファシリテーター・レポート】松村綾子
【対話型鑑賞】25 分