鑑賞ゲリラ Vol.30 『ゆらぎの輪郭』 レポート(1) 2023/7/7開催
開催情報
【開催日】2023 年 7 月 7日(金)
【会場】GALLERY VALEUR
【展覧会】原口みなみ個展「真昼のけむり」
会期:2023年6月27日(火)~ 7月22日(土)
【出品作家】原口みなみ(HARAGUCHI Minami)
内容
作品
《鑑賞会の絵》2022
キャンバスにアクリル絵具、色鉛筆、油彩 1620×1300cm
鑑賞の記録
ファシリテーター(以下F): 30秒から1分見てください。何が見えますか?気になるところはありますか?(・・・かなり短いバージョン!)
▶光。様々な種類の光、様々な方向からの光がある。
F :具体的にどのあたりですか?
▶左側の影ができている、パラソルか何かが写り込んでいる、光源は外の光。光があって映っているもの。窓が下に映っているのか、いや、窓はないのかな。
F: 窓、光、影を感じたんですね。
▶ポストカードからカルフォルニアだなと思った。海のリッチな家。陽の光が入ってきた。普通影には色はない。そこに色がある。そのぐらい心地よい場所だと思う。
F: 影に色がつく
▶そうなるぐらい光が溢れている。Happyな感じ。
▶自分はコルシカ島と思った。柔らかい日差し。滑らかな気持ち良い風が吹いている。夏らしい清らかな感じがする。
F :風はどこ?(近いたり、離れたりして見ることを促す。)
▶太陽、雲。海水浴、海から上がってバスタオルを干しているよう。...風が吹いていると思っていたけど、よく見ると違う。
F :(ポインティング)
▶作者の性格がわかる気がする。おおらかで明るくて...(性格が)まともに出ている絵。
▶悩んで描いているのではないかと思う。残る赤いラインとか...スタートからここに来るまで、どういう気持ちでここまできたのか。
(作家の過去作をご存知の方が飛び入り鑑賞)
他の絵は完成度が高いが、ここは作家自体がかなり悩んだそう。具象から抽象に近づいてくる。
F :かなり具体的なコメントが出ました。具象から抽象まで(描かれて)ある。
▶隠してて閉じてくるような赤のライン。余白に色がある。爽やかさが表立ってある。でも、あのラインは何?
暖簾?反物?襖?障子?あっちから見えるところ。向こう側があるような気がする、襖や障子の伱間(うるま)のような(伱間から見るアクション)でもやめておくみたいな。部屋の中の一部を描いたんじゃないか、何かの見立てか?
F :(リフレイン)
▶黄色のところはメソポタミア?記号の暗喩かなぁ。最初はバスタオルと思ったけど、違う。
▶真ん中の柱。部屋を描くとき(真ん中には)描かないだろう。右と左が全然違う。左側は自分の普段の顔、外に見せる顔。右側は違う面が表れている。
真ん中の柱が自分。
▶右と左で描いているものが違う。追求。影にこだわって描いている。
F :(リフレイン)
▶消えている...もしかして水が流れている?海の底に連れて行かれるよう。部屋の中じゃないのでは?どこにいるのか分からなくなった。右側が揺れている。水の中みたい。
F :(リフレインをして、絵のタイトルを明かす。)
タイトルは「展覧会の絵」です。見方変わったことありますか?
▶納得した。(悩んでいるのではの発言の鑑賞者の弁)タイトルを入れると純粋にストレートに見ることができない。
(ギャラリー内、作品脇にキャプションは無い)
展覧会に出すということは筆を止めなくてはいけない。本当は描き足りないけど、一面二面三面と、これからじゃないかな。
F :他に何かありますか?
▶「展覧会の絵」(ムソルグスキー)の音楽のイメージではない。
・・・?を抱えたところでタイムアップ。次の鑑賞への導入となった形で終えました。
【ファシリテーター】野中美佳
【レポート】大野有紀子
【鑑賞時間】25分
原口さんの作品は梅雨を忘れさせるほどギャラリー内を気持ちの良い空間に変えていた。圧倒的な色の明るさ、描かれたモチーフのシンプルさ、加えてキャンバスの絶妙な配置バランスがそうさせている。DMにもあった作品だが、原画は私たちを描かれた場へ一気に招き入れるかのような光を放っていた。切り絵作品に同じものがあった。
原口さんの制作過程はアイデアスケッチから切り紙のコラージュ、そして油画となる。このプロセスを経て気になる部分だけが残ったり強調されたり、またそうでない部分は削ぎ落とされなくなる。
原口さんは記憶を反芻することに似ているという。
鑑賞作品でも、紙と紙の伱間のできる影がラインとして油画に生かされていた。それは作品の大事な要素だ。印象に始終してしまい、そこに触れることができなかったのは惜しかった。(大野有紀子)