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鑑賞ゲリラ Vol.25 『ちかくてふかい紙版画』レポート(1) 2023/4/26開催

開催情報

【日程】2023 年 4 月 26日(水)
【会場】ギャラリーA・C・S
【展覧会】山口雅英 紙版画展 
 会期:2023年4月15日(土)~ 4月29日(土・祝)
【出品作家】山口雅英(YAMAGUCHI Masahide)

内容

作品

《wie aus der ferne 23-xxv》

鑑賞の記録

山口さんの作品のタイトルは全て「wie aus der ferne」。
音楽用語の演奏の仕方を指示する言葉です。
意味は「遠くからくるように」。
小さなキャンバスの中から、豊かな物語を語りかけます。

ファシリテーター(以下F):どんな印象ですか?
(この作品の場合、何が見えますか?という質問は少し違うのかな、ということで、印象を問いかけました。)
 ▶東欧の村の家の前に木が一本。

F:村、家、どこからそう思いますか?
 ▶色、さみしい感じ、全体的に東欧のイメージ。
 ▶赤いのは木の実みたい。 ▶お話がイメージできる。
・・・想像が当てはめられるという楽しさに、沢山のキーワードが飛び出しました。
 ▶風景画、屋根があってリンゴの木がある、おうちがある。

F:家に見えるんですね?ほかには?
 ▶ベランダに見える。 ▶リンゴがデカすぎる、ニュートンが死ぬ。
 ▶男の人がベランダの人に声をかけて出てくるのを待っている。
 ▶道に見える。 ▶迷路みたい。

・・・それぞれの物語が溢れ出しました。待っている、という言葉に話が続きます。
 ▶待っている、と言っても寂しさではない、賑やかではない寂しさ
 ▶おだやかに見ていられる感じ。 ▶充実感。
 ▶わざと少し離れたところから見ていたい感じ。

F:それはなぜ?なぜ少し離れて見たいの?
 ▶近すぎると、人だと思うとサイズが合わないし、なんだろうな・・・と思うくらいの遠めの方が物語が想像しやすい。
 ▶押し花みたい。
 ▶土筆の穂先、冬を越えた実とか、ポケットから出しておいた植物、物悲
しさと同時に春の予感、上のモヤモヤっとしたところが芽吹きの感じ。
 ▶らんまんの見過ぎ問題(笑)

・・・作品から見えてきた景色や物から、それらがどんな感情をもたらすかの言葉が出てきました。
 ▶日本の風景にも見える。だからリンゴじゃなくて柿、自分の故郷、夢の景色で、あ、夢だったんだぁ、みたいな。
遠い異国ではなく、より自分に近い心象風景に印象が移行したり。

F:これは版画ですが、それを踏まえて改めてどんな印象ですか?
 ▶版画だけど絵画に見える。 ▶風景の二重写し。
 ▶絵と版画がミックスしてて面白い。  
 ▶リンゴの実に見せようと思えば見せられるだろうが、木の枝らしきものと実は離れているし、これに留めているのだと思う。
 ▶制作の過程での偶然性が大切。

【ファシリテーター】菅原まみ子
【レポート】取嶌朋子
【鑑賞時間】23分


版画であって絵画であるような作品。
単純な形や、制作に於いて生まれた偶然性の中で、私たちに見えるイメージを委ねているかのようです。
最初は、これ以外にないと思ったイメージや景色も、色々なものに見えてきて、変化するのが面白いですね。(取嶌朋子)

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