鑑賞ゲリラ Vol.33 『?の仕業』レポート(1) 2023/9/27開催
開催情報
【開催日】2023 年 9月 27日(水)
【会場】See Saw gallery+hibit
【展覧会】佐藤克久個展「あけっぴろげ」
会期:2023年9月16日(土)~10月28日(土)
【出品作家】
佐藤克久(SATO Katsuhisa)
内容
作品
《とりもなおさず》2023
鑑賞内容
ギャラリーの白い壁にカラフルな帯状の作品が色違いで5つ、横一列に展示されている。
ファシリテーター(以下F ):まずはじっくり見て。第一印象を短い言葉で。
▶5本のリボン。
▶盛り上がってるから波と思ったら色が違った。
▶最初1本と思ったら全部途中で 切れていた。
F:どの部分?(指摘箇所を示しつつ)2枚あると思った?
▶風に巻き上げられた紙細工。気になるのは色の違い。濃い紫の裏はわかるが見えない。
▶のれん を垂らしている。制作過程が気になる。どうやってるのだろう
F:のれんということは2枚じゃない。
▶一枚でやっている…
F:よく見てみて。
・・・ファシリテーターの言葉がけで、さらに凝視する参加者。
▶上からの20cmは繋がって、途中に丸穴があるからそこまでは繋がっていて後は切れている状態。
F:のれんに近い? めくれ上がっている。それぞれ色が違う、色の状態も違う。(出てきた言葉を再確認)
▶5つ並んでいるとき、同じようにめくれ上がる不自然さがある。
▶影響し合う色・光からの距離感 。(光である室内の照明を指し示す)
F:壁に映り込む色。
▶法則性があってやっているのか、あえて組み合わせを楽しんでいるのか。
F:(色相の図を見せて)混じり気のない色を使っている。
・・・全員で色を確認。
▶右端がすごく違う。
▶1枚と思ってた。これだけパターンが違うなら(作家は)リズムを変えてみた。色の変化に気づかせて、よりしっかり見させようとしている。
▶補色かな、違うな。(形や滲みから)紙だと思ったら布だった。法則性を持たせようとするけ ど最後に覆される 。
・・・形・素材・展示の仕方・色・組み合わせといったりきたり、参加者の思考は続く。
▶一つを取り上げると、これ(色)がここ(もう一つの色)に滲んでいる。平面で切っているの ではなくて、ひっくり返して垂らしている。いたずらが入っている。
F:作り方で見てみよう。穴についてどう思う?
▶使っていない穴がある 。
▶違う場所に持っていくと違う形になりうる。
F:並べ方を変えられる。裏も表も。
▶光源によっても。
・・・5つの作品が何通りも考えられると盛り上がったところでタイトル《とりもなおさず》が告げられる。
▶とりもなおさずしまっておいて?笑 意味を知りたい。
▶今回はこんな感じで架けましたよ。
▶今回はとりもなおさずこうしましたよ。他のところでは違う風に(架けますよ)。
▶ササっとやってみた。
・・・作品の自由さも相まってタイトルで遊ぶ参加者たち。 場がどんどん楽しくなっていく。
F:断定しない(ってこと?)
▶すなわち、つまり言い換えると、ってことかな 。
▶いろんな色、隣の作品が目に入る。キャンバスの裏と表を見せてくれる。▶他の作品でしていることを見せてくれている。
F:キャンバスシートが情報?
▶(この作品で)芸術際あいち2022の有松の作品を思い出した。キャンバスの可変する作品。
・・・あいち2022の有松会場で展示されていた作品 〈彩色されたキャンバスを幅の違う帯状にして古い民家の軒に暖簾のように垂らした作品 〉のことを言っていて、全員が思い出しつつ曖昧に肯く。
F:(あなたが展示するなら)どんな風にする?
・・・参加者たちそれぞれが応える。支点(穴の箇所)はここでこうやって、さらに好みの色の組み合わせは…と形や色をイメージして華やかに盛り上がった。
【ファシリテーター】城所豊美
【レポート】大野有紀子
【鑑賞時間】25分
ギャラリーに入ってすぐ目に飛び込んでくるカラフルな作品。洗練されたデザインに曖昧なところはなく…とよく見ると、にじみはあるし色の関係もパターンがあるようでない。並べ方も形も鑑 賞者が勝手に妄想できる楽しさがある。この感覚、何かに似てる。そうだおもちゃだ。幼児が夢中になってしまうシンプルで質の良いおもちゃ。美術作品をおもちゃなどと言ったら失礼極まりない話だが、まさに皆さんの様子は作品で遊ぶコドモ大人に見えた。そうさせしまった佐藤さんの作品、遊び心に至極感心した。(大野有紀子)