鑑賞ゲリラ Vol.35 『宇宙のジオラマを覗く』レポート(1) 2023/10/21開催
開催情報
【開催日】2023 年 10月 21日(土)
【会場】AIN SOPH DISPATCH
【展覧会】柄澤健介個展 「光のあと」
会期:2023年10月7日(土)~28日(土)
【出品作家】
柄澤健介(KARASAWA Kensuke)
内容
作品
《淡洸》2021‐2023 木、蝋 / H115cm×W75cm×D65cm
鑑賞内容
・・・対話型鑑賞が初めての人が多かったため、はじめに対話型鑑賞の簡単な説明をして、1~2分の鑑賞時間の後、始まりました。
ファシリテーター(以下F):こちらの作品を鑑賞して気付いたことを、
どんなことでも教えてください。
▶なぜ木を使ったのかが気になった。
▶形が尖っているところは山に見え、内側から見ると貝の内側にも見えるし、色々なものに見立てられるなと思った。
▶素材は木なんだろうと思うが、作品の皺から木とは思えないしなやかさ、伸び縮みするのではという弾力性を感じる。
▶見る場所によりシャコガイのように見える。この作品は一本の木から削り出しているのか?
F:こちらの作品は一本の丸太から作られているそうです。
▶アルプスとかゴツゴツした岩とか、3000~4000m級の山々に見える。内側を見てもマッターホルンとか高い山を表現しているように見える。昔から残る氷のような感じがする。蝋のような部分も凍っている湖のようにも見える。周りの(ギャラリーの)壁が流氷のような感じもする。ただ中の氷が解けて地球温暖化を連想させる。これはこの作品だけでなく今回の展示すべての作品に共通することかなと思う。
▶尖っているけど、材質からなのか優しさを感じる。作品の中は白いものが塗ってある。蝋もある。 そのギリギリの線は黒色が残っている。この作品を制作するには作品を転がしながら作らないといけない。蝋を流し込む個所と流し込まない箇所はどのように決めているのかな。
F:伺った話だと、黒い部分はバーナーで焼いているそうです。その上に胡粉で白い色を付けている。黒色の際が出ているのは、蝋を流したときに胡粉が溶けてこのようになっているそうです。水平面が複数できているというお話があったが、この作品は色々な向きに立てることができる。今も平面ではなく点で立っています。
▶360度どこから見ても楽しめる作品だな。均一な幅のラインが繋がっているところが美しいと感じ た。
F:今、美しいという言葉が出ました。皆さん色んなところに美しさを感じていると思いますが、他に美しいと感じたところを教えてください。
▶作品によって出来ている穴の部分もきれいだなと思う。
F:様々な角度から見られる作品なので、今度は白い部分ではなく木の面に着目してみましょう。
▶立山連峰とかの山脈に見える。でも実際の山脈が繋がって丸くなることはないので(平面なの で)、そうすると山をぐりっと丸めた感じがする。
▶今の話を受けて、地球は丸いので世界中の山を制覇すると、即ち全部の山を繋げると丸くなる。
F:それを裏返した感じですかね。
▶抜け殻や骨のような感じもするので、美しさより空虚感を感じる。
F:何か他にもありますか?
▶岩があって。その先に海があるように見える。昔そのような景色を見たことがある。たったこれだけのものだが大自然で、なかなか行くことができないような自然を覗いているような感じがする。 ホッとする感じもある。
▶地球をひっくり返したみたいな感じ。作品がひとつの世界になっているようだ。木の茶色とかが 温かみを感じほのぼのした印象。閉塞感は感じない。
▶この作品は見る高さ、場所によって印象が違う。それだけに作品の広がりがある。広がりがあるということは、後で記憶に残りにくいという、メリットとデメリットがあると思う。線がひとつの繋がりになっているのは難しいことだと思う。これは元々の素材をどう活かしているのかが気になる。元はどんな木だったのか、はじめから意図した作品なのか、それとも素材を活かして自然に生まれているのか、その辺りが気になった。木目も活かしているので、高い山のように見えたが、木目が年代の分かる岩石のようにも見える。それを活かしているのかな。
F:そろそろ一つ目の作品の締めの時間となりますが、何か言い残したことはないですか?
▶表現の素材として木、そこに蝋を組み合わせたのか。また、木には天地がある。年輪もある。それを考えた上で作品を制作しているのか聞いてみたい。
F:皆さんで色々な発見を共有していただきました。作家さんは実際に山に登る方で、その辺りも後ほど伺ってみたいと思います。見れば見るほど、どんな風に作っているのかや、繊細な作業に思 いを馳せられる作品です。
一方で大胆さもあり、チェーンソーで削っているそうで、大まかな形を作るのに1か月程かかるそうです。その後、細かい部分はノミで仕上げられるそうですが、薄い部分の制作等についてはご本人に伺ってみたいと思います。この作品が世界なのかなと、ここにある世界を一緒に覗き込んでいけたことが嬉しかったです。ありがとうございました。
【ファシリテーター】滝裕美子
【レポート】藤田尚之
【鑑賞時間】25分