鑑賞ゲリラVol.26『くりかえし、近づく』レポート(1)2023/5/21開催
開催情報
【日程】2023 年 5 月 21 日(日)
【会場】清須市はるひ美術館
【展覧会】CULTIVATION-耕す彫刻
会期:2023年4月29日(土・祝)~ 6月25日(日)
【出品作家】栗木義夫(KURIKI Yoshio)
内容
作品
《CULTIVE》 1989 年制作 鉄、和紙 サイズ可変(鉄の作品 181×90×8㎝)
《Untitled》 1993 年制作 鉄、再生紙 サイズ可変(鉄の作品 直径 200 ㎝/高さ 200 ㎝)
鑑賞の記録
作品を見る前に、参加者へ「鉄」と聞いて連想する言葉を問うと、工業製品やその原料とし ての「鉄」をイメージする言葉が次々と出てきました。
鉄板、かたまり、冷たい、重い、丈夫、錆びやすい、硬い・・・
まず、特別動画「栗木義夫と電気溶接」で、溶接をしている様子を見てから、1 つ目の作品 《CULTIVE》前に移動しました。
板状の鉄の作品とその錆びを写し取った和紙 6 枚からなる作品です。
最初に連想した鉄のイメージとは異なる感想が次々と語られ、周りに展示されている紙作品については、作成方法が気になった様子でした。
鉄の作品を見て・・・
(表面が)キラキラしていたり、(溶接部を見て)直線部分がぼこぼこしているところ から温かみを感じる。
錆びて色が変化している。 鉄板がゆがんでいる。
カーブして、めくれているみたい。
(鉄板の)中心に四角い印字がある。タイトルなのか製品番号を印字したものなのか…
周りの紙作品は、鉄板を写し取ったものだと思う。
・・・次第にどのように見えるのか、想像が膨らみ始め
金属だけれど、木にも見える。
もしかして偽の木を表現しているとか?
耕された土のように見える。溶接部分が畝、
キラキラした部分が陽の光を映す水のよう。
キラキラした部分が川の流れのようにも見える。
錆が錆びに見えず、柔らかいイメージ。
土から掘り出したもの、遺跡のよう。
紙作品の色が濃いものと薄いものがあるけれど、時代の変化を表しているとか? 一枚一枚が地層みたい。
・・・参加者の一人が、「展覧会のキーワード『CULTIVATION』『耕す』という言葉のとおり、 土を耕すイメージの作品だと思う。」と感想をまとめてくれました。
次に、展示室の一番奥にある、40 ㎝×60 ㎝の大きさにカットされた鉄のパネルを、屋根の ある円柱形に並べて展示された作品に移動しました。 ここでは、組み立てられた形や、そこから連想されるものが多く語られました。
鉄板を組み合わせた隙間が気になる
あえて完璧でない、未完成のようにしている気がする
ひとつ取り出したら崩れてしまう
幼いころに秘密基地ごっこをした、刈り取った稲を積んだようなものに見える。
穀物をいれておくサイロみたい。
段ボールみたい。トタンにも見える。
中に何か入ってそう、隠してあるみたい。
どこからも入れない。
弥生時代のイメージ。土、稲とか。周りの紙作品が、昔の衣類の素材に見えた。
【ファシリテーター】取嶌朋子
【レポート】富樫水奈子
【鑑賞時間】25分
先に見た作品の「土を耕す」イメージを引継ぎ、農耕をイメージする感想が多く語られまし た。
( なお、この作品は、展示された都度かたちが再編成されており、いずれも田畑の干しわらの かたちをイメージしていると、後のアーティストトークで作家の栗木さんよりお話がありました。)
参加者は、栗木さんの作品から、おだやかな、あたたかな田畑の景色を連想し、「鉄」に新 たなイメージが加わったようでした。(富樫水奈子)