鑑賞ゲリラ Vol.38『おぼろに うかぶもの』レポート(1) 2023/11/12開催
開催情報
【開催日】2023年11月12日(日)
【会場】L Gallery
【展覧会】山本一弥個展「幻想と窓」
会期:2023年11月4日(土)-11月19日(日)
【出品作家】
山本一弥(YAMAMOTO Kazuya)
内容
作品
《心霊現象》2023 年
鑑賞内容
(自己紹介をしながら、作品から各自感じた事を一言)
▶K です。よろしくお願いします。とてもツルツルしていて、クリアなイメージがあって、キレイだけど、ずっと見ていると暗闇を感じてくる。透明な色だけど、透き通ってない。闇の世界。大きな布が大きな暗い世界にひらりとかかっているようなイメージが湧いてきます。
F :昼の時間帯だけど、暗闇に感じるという事ですね。次の方、お願いします。
▶B です。よろしくお願いします。最初見た時、左右対称かなと思った。
F: どのあたりからそう見えましたか?
▶よく見ると違っていたが、パッと見ると。
F :パッと見て、真ん中の線のあたりを基準にして左右対称になっていたという事ですね。次の方、お願いします。
▶A です。よろしくお願いします。パッと見た時から、柔らかい印象に見えていた。布みたいと先にありましたが、同じように。でも薄い素材のような感じがするのと、真ん中が胸元みたいに開いているように見えるし、真ん中の部分が目にも見える。不思議な感じがします。
F: K さんは大きい布がかかっているとおっしゃったが、A さんは首元みたいに見える・・・
▶そうですね。すごく柔らかい衣服のように見えますね。
F: ありがとうございます。次の方お願いします。
▶T です。よろしくお願いします。A さんは目みたいに見えるとおっしゃったのですが、私には向こうから走ってくる馬に見えました。
F: (真ん中の辺りを指さして)ここですか?
▶(身振り手振りで馬の形を説明しながら馬が走ってくる様子を体現)
・・・(一同笑い声)
F: 布も興味深いのですが、T さんは彫刻の形から、流れる風、向かい風に見えて面白いですね。流れが逆に、風が巻き込んでいる感じ。
(最後の一人に対し)いかがですか?
▶M です。よろしくお願いします。馬と聞いて、そういう見え方もあるのかと思った。私は布で、今まで着ていた服を脱ぐと体の形で無くなるが、そのままの形を再現されているなと思った。どう見てもそうとしか見えなかったが、馬はすごく新鮮でした。
F: 誰かが着ていた服がそのまま残っていたという事ですね。
▶そうですね。光の具合で、私の目から見るとグレーっぽく、白っぽくも見えるが、横にまわってみると黒く見える。素材がすごく面白いなと思った。
F: 素材というお話がありましたが、K さんはクリアに見える。正面から見るとすごく透明度がある。横から見ると色味が暗くなるのですが、皆さんは横からご覧になりましたか?
・・・一同作品の横から改めて鑑賞。
▶(後ろに回り込むと)透き通って見える。
▶素材が違うように見える。金属かなと思っちゃう。
▶後ろから左上部分を見ると、R が付いているように見える。
F: 最初は正面からご覧になっていましたが、見方を変えてみたらいかがでしたか?
▶完全に左右対称ではないのですか?
・・・全員で改めて作品に寄ってみる。
F: 作家さん曰く「左右対称なのだけど、型は左右で違うため、少し違うかもしれない」そうです。
ギャラリスト: この作品の型は一つの固まりです。左右で分かれてはいないです。
F: ありがとうございます。
・・・ギャラリストの説明を受け、数人が近くに寄って鑑賞。
▶設計図とかは無く、型は全くの手作りですか?
ギャラリスト: 全くの手作りです。
F :こちらの作品ですが、タイトルは《心霊現象》といいます。
K さんが最初「暗さを感じる」と言っていましたが、タイトルを聞いたら少し印象が変わってきませんか?
▶ギリシャ彫刻の感じがする。古典的な彫刻の形を連想しました。
▶タイトルの割には、怖くは無いですね。
F :怖くは無いのは、何故でしょう?
▶透明感があって綺麗だから、怖さを感じない。
▶私は、逆に怖かったです。凄くキレイなのに、暗闇を感じる。でも、裏に回ってみたら全く逆のイメージが出てきたので、救われたような。
F :正面から見ると暗闇を感じるけど、裏から見ると光を感じるかもしれませんね。
▶見る角度・・・正面もそうですし、横、後ろ、色味が変わったりするところが、心霊現象な感じがした。タイトルの割に、軽いフワッとした感じに思う。
F: 流れるとか、漂うとか?
▶そうですね。
F :軽さを感じる、というのはどのあたりからですか?
▶タイトル《心霊現象》もそうですし、この布のような感じですかね。羽衣のような感じに見え、それが軽いもののような感じがする。
▶私は全然逆で、軽く見えない。重い感じに見える。密度が高くて詰まっている感じ。ゴムみたいな印象。
▶私は粘液みたいな印象。自分が動くと、光の加減で動いて見えるから、粘液がドローっとしている。粘り気があるから、模様のところで分かれている感じ。動いているもののどこか一部だけを切り取ったような。
F :この作品は、樹脂で作られています。
▶型を作って、樹脂を流し込むのですか?
F: そうですね。この作品は製作に 2週間かかっているそうです。
ギャラリスト: 一日(朝~夕方)作業されて、それで 14日間かかっています。一度に全て型に流し込むと、形が反っちゃうため、28回に分けて樹脂を型に流しこんでいます。
▶一回でこの形を作る訳じゃない?
ギャラリスト: そうじゃないです。型に流し込んで 1日経ったら固まったものを出す、それを繰り返して作品を作っています。なので、作品をよく見ると層が見えます。
▶触ると柔らかいのですか?
ギャラリスト: 樹脂でも、ポリエステル系の樹脂なのでちょっと柔らかいですけど、触っても柔らかさは感じない。ガラスのような感じです。
▶重さはどれぐらい?
ギャラリスト: 約 50キロです。
F :そんなに重いのに、羽衣とか軽さを感じるのですね。
ギャラリスト: ほぼ、自重でこの作品は立っています。左右に強めの両面テープを 2つやっていますけど、基本的には自重で自立しています。手でやっても簡単には倒れないです。
F: 重さを聞くと、印象がまた変わってきますね。では、次の作品を見てみましょう。
【ファシリテーター】松村綾子
【レポート】平岡靖教
【対話型鑑賞】20 分
雰囲気づくりがうまく、みんな意見を言いやすそうな感じでした。意見をなかなか言えていない方への気遣いもあり、終始和やかな雰囲気での対話型鑑賞の時間でした。