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鑑賞ゲリラ Vol.39『これかれにたゆたう~巡り巡る~』レポート(1) 2023/12/23開催

開催情報

【開催日】2023年12月23日(土)
【会場】アートラボあいち
【展覧会】名古屋学芸大学企画展
「これかれにたゆたう Wandering Between Here and There」
 会期:2023年11月10日(金)~12月24日(日)
【出品作家】
 成田開(NARITA Kai)

内容 

作品

《朝日が沈む夢を見て》2023年 
映像とオブジェクト・テキストによって構成された作品
プロジェクタ、スピーカー、木板、アルミ板、鋼板、鏡
作品サイズ可変/8分 

鑑賞内容

(映像8分全て見てもらい、展示室外で対話スタート)

映像の様子

ファシリテーター(以下F):何が起こっていたと思いますか?もしくはどんな空間だったか、とかでもいいですよ。
▶死んだ後の、この世ではない、死んだ人がいるところ。
F:どういうところからそう思いましたか。
▶映像のスピードが遅い。水の中にいる非日常な状況なのに、日常的な、普通のことを言っている。

F:他にはどうでしょう。
▶寝ているときの感覚、つまり無意識を表している。どうでもいいことを考えている。

F:夢か現実か・・・夢うつつの様な状態の時の事ですね。他には?
▶映像がスローモーションで逆再生だったり、先ほどおっしゃった死後の世界の逆で、一回死んで生まれてくるところ。

F:先ほどの意見とは逆ですが、循環という感じですかね。他には?
▶胎内の様子である。胎児が羊水の中にいる。息苦しく、暗い。死んだ後に次の世界に行く途中かもしれない。 
▶お寺の音が鳴っている。現世から死の世界へ向かう時間。 

F:弔いの儀式の時の様な、という事ですね。
▶私個人の考えであるが、人間は、意識がカラの肉体に入っているものだと思っている。寝て起きるということは、人間は毎日死んでいるということだと思う。
▶スクリーンが途中で切れているのはなぜだろう。
(スクリーンをはみ出る様に、その上下、左右にも映像が映り込む様子から)
F:何重写しにもなっているという感じですね。

F:ここまで、何が起こっていたか、どんな空間だったか沢山の意見が聞けました。それでは、ここで再度部屋の中に入って、先ほどのスクリーンの向こう側で何か探してみましょうか。

(室内に入り作品の裏側まで鑑賞)

F:「向こう側」(=スクリーンの裏側)には、何かありましたか。
▶遺言があった。生死に関わる内容だった。
▶聖書。ヘブライ語で書かれていた。

▶アルミ?の板?
(①の遺言を改めて伝えた)

F:今回の場合は、向こう側に何かあるということは、私がご案内しなければ気づかなかったかも・・・と思いますが。
▶後から裏側を見たので、「第二章が始まった」と思いました。

F:映像中の僕は、祖父がコロナ渦にキリスト教に入信していたことを亡くなって初めて聞かされることになりました。
▶「それまで見えなかった部分が祖父の死によって見えた」ということをこの作品は表現しているのではないか。
F:亡くならなければ、そのことに気付けなかったということですね。

F:空間と映像全体を通して、何か他に気付いたことはありますか。
▶スクリーンは現実、スクリーンの外側上部に映していたのは死後の世界なのかもしれない。
▶キリスト教には転生という概念はない。でも、祖父に戻ってきてほしいという思いが込められているのかもしれない。

F:糸杉という言葉が出てくるが、糸杉はキリスト教と深い繋がりがあるらしいです。調べてみると面白いかもしれない。

【ファシリテーター】取嶌朋子
【レポート】伊藤奈々
【撮影】大前恭子
【鑑賞時間】25分


今回使用したのが映像作品であり、言及する箇所を指差しながら話せないため上手くいくだろうかと少しの心配はあったが、それぞれの参加者が多くのものを感じ取り、深い考察を共有してくれた。また、作品の裏側にちょっとしたサプライズが隠されていたことにより、二度おいしい対話となった。生と死という日常生活ではあまり考える機会のない題材にもかかわらず、各々の参加者が自分なりの考えを持っていたことに、少し驚いた。日常生活で会話に上がらない題材について考えを共有できるのは、現代アートを使った対話型鑑賞の面白味のひとつかもしれない。(伊藤奈々)

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