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エピソード「先輩企業に投資してもらうのは良さそうだ」 ※kickflowの調達裏話 from HENNGEさん

一言で言うと「自分たちが悩んだことは、既に誰かが悩んで答えを出しているかもしれない」って話です。

こんにちは。エンタープライズ向け次世代のワークフロー"kickflow"を提供している重松(@taitodada4)です。

本日、2回目の資金調達を発表しました! 投資してくださったのはマザーズ上場の事業会社、HENNGEさんです。

事業会社からスタートアップへの投資は普通の出来事だと思いますが、その際の「思惑」や「悩み」について書かれている記事をあまり見つけられなかったので、前回のMBO・資金調達と同様に色々と学んだり考えたりしながら進めました。

ですので、僕らの事例が同フェーズ(シード)のスタートアップや、スタートアップへの投資を検討している事業会社にとって1mmでも役に立つことがあればと思い、筆を取りました。

実際にこのnoteが誰かの役に立つかどうかは不安ですが、少なくとも自分がこの調達前に知っておきたかったことは書いたつもりです。

はじめにサマリーを書いておきます。

・今回の調達は「資金」を目的としたものではなくて、自分たちの悩み事を解決するために相性が良さそうな先輩企業との「シナジー」を得ようとした調達

・とはいえ「シナジー」が絵に描いた餅にならないかは不安。その不安を少しでも解消するために出来ることはありそうだし、実際に時間をかけてやって良かった

・あと、こういうラウンド時にどの程度の株を放出するかをロジックで決めるのが難しい。「中長期的にどういう関係にありたいか」を補助線におきながら議論しつつ、最後はエイヤで決めるしかない

ちなみに私は今回が2回目の資金調達とファイナンスに関しては素人です。(当たり前の話ですが)ファイナンスは不可逆なので鵜呑みにしないで欲しいのと、何か気になる点があればご指摘いただけたら嬉しいです🙏

今回の調達前のkickflow社の悩み

何事にもきっかけがあるので、まずは調達のきっかけとなった出来事について書いておきます。

3分で分かるkickflow」より

kickflowはSaaSスタートアップの中でもやや珍しく、創業初期からエンタープライズ企業の課題解決にフォーカスしている点が特徴的なプロダクトです。

自分自身が大企業に勤めた経験がないにも関わらずこの領域を選んだのは、課題ヒアリングを地道に行った結果、稟議・ワークフロー領域において一番苦しんでいるのはエンタープライズ企業(大企業・急成長企業)だということが分かったから。

3分で分かるkickflow」より

正式リリースから約半年が経ち、上場企業や大企業、急成長企業への導入が進むなど、おかげさまで一歩ずつ事業は進捗しています。受注が決まるたびに「この課題を解くと決めてよかった」と喜びを噛みしめる日々です。

(ちょい自慢が入ってしまいますが、投資とか関係なく導入してくれたグリーさんやHENNGEさんが、利用者としてプロダクトを気に入って投資してくれたのも嬉しかったです。)

しかし事業が進捗するにつれ、エンタープライズ企業向け製品だからこその悩み事がどんどん増えてきているのも事実でした。直近で頭を悩ませた例でいうとこんな感じです。大小混ぜてます。

・エンタープライズ企業の要件は複雑なので、パターン化が難しい。ヒアリング数を定常的に増やすための仕組みが欲しい

・エンタープライズ企業向けにどうやってマーケティングしていくべきか見えていない。エンタープライズ企業からすると何処の馬の骨か分からないスタートアップの製品入れるのはハードルが高く、マーケに苦戦中…

・担当者の方が気に入ってくれていたとしても、会社全体の動きだったり別部署の思惑だったりが複雑に絡み合い、最後の最後まで安心できない

・エンタープライズ企業の導入時には与信チェックが入ることが多いけど、答え方の正解が分からん

・エンタープライズ企業から開発ロードマップの後ろの方にある機能が必須要件として求められた際の正しいアプローチ方法が分からん

これらの悩み事は最終的には自分たちで走りながら解決すべきものです。しかし、愚直に解く以外の方法がないか。何かしらショートカットする方法がないのか。

その解決方法の一つとして考えたのが、自分たちと同じような悩みを抱えていたであろう先輩に助けてもらうこと。

そう、今回のHENNGEさんからの調達でした。

今回の調達の際にkickflow社が考えたこと

というわけで。

前回の調達が昨年10月ということもあり)資金そのものは必要がない中で今回の調達を行ったのは、ひとえにHENNGEさんに色々と助けてもらいたかったからです。

正直にいうと最初は直感的にHENNGEさんにラブコールを送っていたのですが、経営会議で「なぜHENNGEさんにこのタイミングでご出資いただくのか」を議論したので、その際の内容を残しておきます。

ポイントは4つです。

①両社の顧客層が近しいというスタート地点

課題解決の対価としてフィーを頂いているSaaS企業として「誰の課題を解くのか」は重要な点の一つです。

HENNGEさんとkickflowには「エンタープライズ企業向け製品として」「情報システム部門への課題解決ソリューションを提供している」といった共通点があり、この共通点が全てのスタートでした。

これはHENNGEさんが(VCではなく)事業会社ならではの話だと思っています。また「解決する課題」が違っていたのもポイントでした。同じ課題を解こうとしている場合はえてして「競合(という名の同士)」となり、連携の難易度が爆上がりするからです。

②株を持っていただき利害関係を一致させること

もともと本件が動き始める前にHENNGEさんへのkickflow導入が決まっていたことから、出資してもらわなくても(同じ志を持つ後輩企業として)一定のアドバイスはいただけたかなと思っています。

しかし出資いただくことで、kickflowが成功することでHENNGE社にリターンを返せることになり、両社の利害関係が「=」でしっかりと結ばれます。

利害関係のない繋がりももちろん尊いのですが、利害が一致することで(両社が手をとりあう理由が)社内外に対して明確になることは、重要な点の一つでした。

③24年先輩のHENNGEさんに色々と教えてもらいたい

HENNGEさんは1996年設立、対してkickflowは2020年設立です。干支で言うと二周りも上であるHENNGEさんは、kickflowがこれから踏む可能性がある落とし穴を(おそらく)既に踏まれ、それを乗り越えて成長してきている大先輩です。

近しい顧客層への課題解決をしてきた大先輩に色々と教えてもらうことで、僕らの悩みをスピーディーに解決したり、踏まなくても良い落とし穴を回避していきたいと思っています。

④2000社超のお客様を抱えるHENNGEさんと営業連携したい

HENNGEさんはワークフロー製品を持っていないことから、HENNGEさんが支援している2000社を超えるお客様の「ワークフローにおける課題解決」を一緒に進められると思っています。

初期はギブしてもらうことが多くなるとは思いますが、kickflowがこれからドンドン成長していくことで、両社のお客様への提供価値を最大化していけると信じています。

考えたことをまとめると…

冒頭で書いたように、「自分たちが悩んだことは、既に誰かが悩んで答えを出していることかもしれない」というきっかけから、

  1. 顧客層が近い大先輩と

  2. 利害関係を一致させることで

  3. 色々と教えてもらったり

  4. 営業連携することで事業成長のスピードを上げられそう

という4点を考えて、今回の資金調達となりました。

今回の調達の際に両社で議論したこと

DD含めて基本的にはスムースに進んでいきましたが、とはいえ全部が全部スイスイ進んだわけではなかったです。

両社で深く議論したこともあるのでここでは要点を振り返ってみます。

議論① 絵に書いた餅にならないかどうか

先程あげた4点は一見するとそれっぽく見えますが、本当にうまくいくかどうかは実際に動いてみないと分かりません。このnoteのタイトルを「先輩企業に投資してもらうのは良いぞ」ではなく「良さそうだ」にした背景でもあります。

実はこの話は昨年11月のIVS@那須でHENNGEの投資担当である汾陽さんとお会いした時から動き始めていました。5ヶ月前ですね。

5ヶ月間も何に時間をかけてたかというと、DDに時間がかかったからではなく、連携がうまくいきそうかどうかについて検証してました。

詳細は割愛しますが、この期間中に「顧客ヒアリング」や「経営層・リーダ陣との対話」「キーパーソンとの議論」などを通して、「そもそもこの連携が、現場(両社のセールスやCS)やお客様にとってハッピーなものになるのか」を探ってました。

というのも、最終的に一緒に動く現場同士が「いけそうやん」という気持ちにならないと、絵に描いた餅になってしまうからです。

HENNGEさんのご厚意もあって、投資が決まる前から合計20弱のミーティングや顧客ヒアリングを実施するなど(DD除く)、かなり濃密な時間を過ごせたと思っています。

仮に出資に至らなかったとしても、この時間だけでも僕らにとってはかなりプラスとなる時間でした。何でまだ何も決まってないのにこんなにギブしてくれるんだろうと思ったぐらい。

ご協力いただいた皆様にこの場を借りて御礼申し上げます。そしてここからがスタートなので引き続きよろしくお願いいたします!

議論② どの程度の株を持ってもらうか

①と並行して議論したのが「どの程度の株を持ってもらうのか(いくら投資してもらうのか)」です。

冒頭で記載したように今回は「資金を調達すること」そのものは目的ではなかったので、この点は利害関係が一致しづらい点でした。

  • kickflow社の目線だと希薄化を抑えながらスモールスタートで試したい

  • HENNGE社の目線だとせっかく支援するのであれば一定量は持ちたい

といったように両社の意向がずれるからです。

この点はベストプラクティスがなさそうだったので、本ラウンドの話だけではなく「両社が中長期的にどういう関係でありたいか」を補助線におきながら議論して最終決定しました。

最後に宣伝

長くなっちゃいましたが、最後に宣伝をさせてください。

3分で分かるkickflow」より

繰り返しとなりますが、kickflowはエンタープライズ企業、中でも情報システム部の課題解決に特化して作られた製品です。

今回新しく仲間に加わっていただいたHENNGEさんの力も借りながら、引き続きkickflowが解決できる課題の「深さ」と「広さ」をスピーディーに増やしていきます!

kickflowに1mmでも興味を持ってくださった企業さまはサービスサイトをぜひご覧いただけたら嬉しいです🙏


また、kickflowと一緒にエンタープライズ企業の課題を解くことに興味がある方は、採用サイトをご覧ください🙏
冒頭に書いたような課題がたくさんあるので、皆様のお力が必要です!

(余談) 投資家のアドバイスに対する私の考え方

ここまで「HENNGEさんに色々と教えてもらうぞ〜」といった内容を書いたのですが、「全部HENNGEさんの言う通りにやるぞ〜」というわけでもないので、自己整理も兼ねて投資家の助言に対する私のスタンスを書いておきます。

前提としてSaaSは(他領域と比べると)再現性があると言われているのと、私はSaaSに取り組むのはkickflowが初めてなのもあり、先輩からの教えは素直に聞く方だと思っています。特にロジックだけでは答えが出ないことに関しては、誰かに相談し「早く決めて早く試す」ことを大事にしています。

その上で、投資家のアドバイスに対する私のポリシーは「投資家の意見は半分はあたっているが半分は間違っている。なので『話半分で』『しっかりと』投資家の意見を聞いてこう。間違ってても自分の責任!」です。

これはオリジナルな考えではなく、前田ヒロさん(@djtokyo)が過去にツイートしていた内容をほぼ参考にしています。

「投資家のアドバイスをどう受け取るか」はまさしくロジックだけでは答えが出ないことなので、それこそ先輩であるSmartHRの宮田さん(@miyata_shoji)に相談した際に、上記ツイートを教えてもらって固めていった次第です。

今のところはこのスタンスでうまくいってますが、課題が出てきたら再度考えるつもり!

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