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人口がゼロになったまちで、ゼロからSAKEを醸す

前回のnoteで書いたとおり、現在僕は新潟県の阿部酒造にて醸造家見習いの修行をしている。
全く体を使ってこなかった社会人生活から、ここ数ヶ月体力仕事をしていて実に健康的な生活を送れているなーと感じる。なぜかあんまり痩せないけど。

まだまだ修行の身だが、やっと情報公開できるような状態になってきたし、立ち上げでジョインしてくれる方を募集したい(超切実)のもあり、今回は「どういったブルワリーを作ろうとしているのか」を書きたいと思う。

※思っていることをありのままで書きたいため、ですます調は辞めてみる。

ブルワリーの拠点はかつて "人口がゼロ" になったまち

ブルワリーをつくる上でかなり重要になるのが、どこに拠点を置くかということ。
結果として僕は「福島県南相馬」をスタートの地として選んだ。

日本酒のトレンドを捉えたマーケティング的な観点で考えると、若い人が集まる東京は外せないし、徐々に日本酒のマーケットが広がりつつある海外も面白い。
特に海外は、免許面での規制が日本よりかなり緩い国が多く、新規で日本酒をつくるのにはもってこいだと思う。(なので、近い将来海外での現地醸造も視野に入れている。)

ただ僕は、酒づくりと並行してもう一つ挑戦したいことがある。
それは、ブルワリーをコミュニティづくりのツールとして活用すること。クラフトなお酒をメディアとして、クリエイティブなコミュニティをつくる。
ちょっとカッコつけて表現してみたけど、要は大好きなお酒を飲み交わしているうちに、多様なバックグラウンドの人たちが自然と集まって、そこから何かワクワクするような化学反応が生まれる、そんな場所をつくれたらと思っている。

それを実現する場所として選んだのが、東日本大震災に伴う避難で一時人口がゼロになり、コミュニティが消失してしまった過去のある「福島県南相馬(小高区)」だった。

ゼロからのまちづくりができる辺境の地にワクワクした

南相馬を選んだのは、Next Commons Labという林篤志さんを中心に展開しているポスト資本主義社会の具現化事業を通して、地元のキーマンである和田智行さんの存在を知ったことが大きい。

▼Next Commons Labとは

結果的にNext Commons Labの制度を活用して事業準備をさせてもらっているが、和田さんと最初に会った時にこんなことを話した気がする。

僕 > 誤解を恐れずに言うと、南相馬という地を選んだのは「震災復興」という高尚な目的というより、「ゼロからのまちづくり」にワクワクしたんですよね。フロンティア感あって。
和田さん > そうだよね、自分たちでつくりたいものをつくれるのって、シムシティみたいで楽しいよね!
(和田さん、間違ってたらごめんなさい。)

こんな心の広い地元の方がいる地域なら絶対に、攻めた事業でも暖かく見守って頂きながら楽しめそうだなと勝手に思い込み、決断をした。

※とはいえ、震災復興に思い入れが無いわけではない。
福島という地は妻の地元でもあるし、僕自身「3.11生まれ」で勝手ながら使命感を抱いている。
でもきっと、純粋にその土地での暮らしを楽しんでるうちに、以前とは少し違うかもしれないけれど、たくさんの人が集い、それを後から振り返って「復興」ということができるんじゃないかと思っている。
(僕とは違い、震災後ずっと思いを持って活動している方々もいるので、偉そうに聞こえてしまったら申し訳ないです。)

新規参入でゼロからのSAKEづくり

(ゼロゼロうるさいですね。)

場所を選んだ背景は上述のとおりだが、事業の中身についても少し触れたい。
多少変わる可能性はあると思っているが、主に考えているのは2軸。

■「つくりの自由」を追求する
業界の方からはお叱りを頂くかもしれないけど、僕はもっと「酒づくり」のハードルはどんどん下がるべきだし、もっというと誰でもつくり手になれる環境づくりをしたいと思っている。消費するだけではなく、つくることにも関われたほうが圧倒的に楽しいし何よりいつも以上に美味しく感じることができると思う。しかも「ある程度つくり方がわかる」という状態になると、料理と同じで「逆にプロの凄さがわかる」ということになり、価値の再発見に繋がると信じている。
これについては、オフラインのコミュニティ内で「誰もがつくりに関われる」体験設計をするのもそうだし、オンラインのサービスとして擬似的に酒づくりに関われるような設計もできたらと考えている。
■「味わいの自由」を追求する
これまた業界の方からはお叱りを頂くかもしれないけど、もっとゼロベースで「SAKE」をつくってみたい。ビールやワインが世界各国で愛されているのは色んな要因があるけど、その一つは「世界中に多様なつくり手がいること」だと思っている。それにより、現地の原料や酵母菌、場合によっては独自のつくり方をしているところもある。ある意味、みんなで地球全体をフィールドに最適なつくり方を模索することができている状態だと思っている。
日本酒についても、その流れを加速する取り組みをしたい。他の酒類には使われているけど日本酒には使われていない副原料などを使い、ある意味日本酒なのか何なのかよく分からないものをつくる。
(ちなみにこの点は、僕もお世話になっているWAKAZEさんをはじめとして既に取り組み始めているフロントランナーの方々がいる)

日本酒のアイデンティティとの対話を忘れずに、色んなお酒のジャンルのキワを攻めて「最高に美味いSAKEを追求し続ける」ブランドをつくれたらと思っている。
新しいSAKE体験を届けられるよう、新規参入のプレイヤーとしてしがらみに囚われることなく常に挑戦していきたい。

※文章中「日本酒」と書かず「SAKE」と書いているのは、「日本酒」という言葉には細かな定義があり、つくろうとしているお酒はおそらくそれに該当しないため、「SAKE」という表記をしている。

マーケティング的には課題が多い

こんな感じで事業をスタートしていくつもりだが、マーケティング的な視点で考えると不安な点はもちろんある。

■そもそも商圏の設定は大丈夫か問題
2019年現在の居住人口が約3500人程度になってしまっている南相馬市小高区。
純粋に地元の方々だけを相手にするのではなく、「わざわざ来たくなる」付加価値づくりやオンラインでの様々なコミュニケーションの仕掛けを通じて、地元の方々以外へも積極的なアプローチを考える必要がある。
■「福島県産」という風評被害は大丈夫か問題
これはすごくセンシティブな問題だけど、お酒に使うお水やお米などへの不安はまだ一部の方には残っていると思う。
もちろん消費して頂く方々に不安を与えないよう最大限配慮しつつ地元のものも生かし、最終的には福島県産のプロダクトとしてリブランディングに貢献できれば嬉しい。

これ以外にも海外への輸出規制が一部あったり、大変なことは山ほどあるだろうが、楽しみながら一つ一つ答えを見つけられたらと思う。

2020年春以降、いよいよブルワリーができる(予定)

色々語ってきたが、最初に書いたとおり僕はまだ修行の身である。
ただ来年の春には修行を終え、本格的にブルワリーの立ち上げに着手しているつもりだ。
いまはそのために物件を探したり、ファイナンスの手配に動いたりしているが、来年の動き出しに向けて一緒に進めてくれる仲間を募集したいと考えている。
(現状は外部で協力してくれる方を除くと2名体制で、僕が事業を推進しつつ、妻である佐藤みずきが店舗イメージなどのクリエイティブ関連や、事務作業をしてくれている。)

僕自身酒づくりは学んでいるものの、おそらく長期的には酒づくりにコミットするのが難しくなると思っているので、「醸造責任者」として自由な発想で技術面をリードしてくれる方を募集したい。
もちろん、今まで日本酒やビール、ワインなど何かしら醸造をやってきた方にジョインしてもらえると嬉しいけど、「これからやってみたい」という方でも共感が強ければ大歓迎。

酒づくりという視点でもチャレンジングだし、ビジネスモデルとしてもチャレンジングなので、そういった挑戦に共感してくれる方にこの思いが届くと本当に心から嬉しいです。

※「事業が軌道にのるまで生活資金が無いんじゃないか」という面はそんなに気にしなくて大丈夫です。
少なくとも3年間はある程度暮らしていけるだけの補助(Next Commons Lab経由)を確保しているので、安心してご連絡ください。

▼「醸造責任者」に少しでも興味のある方はこちらから

カジュアルに一度お話したいという方は個別メッセージを頂く形でも大丈夫です!
「この人興味ありそう」という勝手なご紹介もどしどしお待ちしています!!

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