北の国から2022~北海道・名馬訪問ひとり旅
ドーモ、タイラダでんです。よくいらっしゃいましたね。
というわけで、旅だ、北海道だ。なぜかといえば馬たちに会いにいきたかったからだ。なぜ馬たちに会いたくなったかといえば、去年、20年ほど遠ざかっていた競馬にハマり直したからだ。ありがとう『ウマ娘』。
なにせ相手は生き物。もたもたしていると二度と会えなくなるかもしれない(実際、調べてみると好きだった馬のことごとくが亡くなっていた)。というわけで苦手(でかい鉄の塊が空を飛ぶなどという、非科学的極まる代物に命を預けるなんて!)な飛行機に乗って旅立ったのだ。
ちなみに飛行機を克服した方法は単純で、前日2時間しか寝なかった。
1日目 ウトナイ湖~支笏湖
一日目はスケジュールの都合上、競走馬関係ではなく、空港近辺で写真映えしそうなところを巡ることにする。
まずは空港近辺でレンタカーを借り、一時間ほどでウトナイ湖に到着。ラムサール条約にも登録されている水鳥たちのサンクチュアリだ。
水鳥撮影ガチ装備のご夫婦を横目に、適当にパシャパシャ。どこを撮っても絵になる。
精一杯堪能したところで、本日のお宿へ。途中で立ち小便しているおっちゃんを観察したり、急に飛び出した野生の鹿を轢き殺しそうになったりといった、北海道ならではのハプニングもはさみつつ車で一時間。
到着したのは大正4年創業の老舗、丸駒旅館だ。
到着後すぐに入浴。すばらしい風呂(支笏湖を目にしながら入る露天風呂は最高だった)に満足したものの、前日の寝不足のせいで夜9時頃には寝落ち。もったいないことをした。
2日目 ノーザンホースパーク~うらかわ優駿ヴィレッジAERU
さて、2日目はいよいよ馬めぐりだ。まずは空港近くまで戻り、そこからノーザンホースパークへ。
競馬ファンならお馴染み、社台グループが経営している体験型テーマパークだ。
名だたる競走馬たちが、引退後ここに繋養されているわけなのだが……残念なことに、本当に残念なことに、僕は彼らの現役時代を全く知らない。仕方がないとはいえ、20年のブランクはやはり大きい。
色々とパークを堪能しつつ、本日からのお宿へ。今度は3時間のドライブだ。急がなくては……と慌てていたせいで、ソダシのグッズを買うのをすっかり忘れてしまっていた。なんて……ことだ!
まあ仕方がない。どうせ、そう遠くないうちにまた来るだろう。
海沿いの道をひた走る。スマホとカーナビをつなぎ、Spotifyをフル稼働。「お気に入り(12時間分ぐらいある)」の曲を垂れ流しつつ浦河へ。
到着したのは本日からの拠点、うらかわ優駿ヴィレッジAERUだ。
2食付いて1泊1万円ほど。神か。
なぜここを選んだのかといえば、なんとあのウイニングチケットと触れあえるからだ。
ウイニングチケット。競馬ファンならば誰でも知っている、1993年日本ダービーの勝者。名手、柴田政人氏を念願のダービージョッキーへと導いた名馬だ。ウマ娘にもなっているぞ。
ウインストン・チャーチルが「ダービー馬のオーナーになるのは、一国の宰相になるよりも難しい」と言った(言っていないらしいが)ように、ダービー馬というのは特別な存在である。そのダービー馬に会える、あまつさえ手ずからニンジンとか……あげられる……! 神か。
ウイニングチケットは御年32歳。人間で言えば100歳を超えるそうだ。だが、目の前のチケットは元気そのもの。足取りも軽く僕の手のニンジンめがけて駆けてくる。ダービー馬が僕めがけて、だ。正直、変な声が出てしまった。
馬たちとの触れ合いを堪能しつつ、地場食材を生かした美味しい夕食をいただく。風呂も良い(日帰り入浴もできるそうだ)。神か。
ここAERUには、他にもニッポーテイオー(「マイルの帝王」と呼ばれた名馬だ)やダイユウサク(「なんとびっくりダイユウサク」でおなじみの有馬記念優勝馬だ)、そして我らのサニーブライアンなどが繋養されていた。残念ながら、みな亡くなってしまっていたが。
サニーブライアンが亡くなったのは10年ほど前だそうだ。ああ、会いたかったよサニーブライアン。僕はお前のことが好きすぎて、勝手にウマ娘化した小説まで書いちゃったよ。
3日目 ビッグレッドファーム~Yogiboヴェルサイユリゾートファーム
3日目。この日は、見学可能な牧場を巡ってみた。
朝一番でチケットに人参をあげつつ、2時間ほど車を走らせる。到着したのは新冠町、ビッグレッドファーム。
お目当ては、みんな大好きゴールドシップだ。
もちろん、ゴールドシップ以外にもたくさんの馬たちが繋養されている(例によって、現役時代を知らない馬たちばかりだが。なんとも惜しいことだ)。
そのゴールドシップだが、のんびりと草を食んでいた姿が印象深いものだった(撮影は禁止されていたので写真はない)。それにしても、間近で見る競走馬は本当に素晴らしい。均整の取れた肉体、美しさの権化。
そんなことを考えながら眺めていたら、ゴールドシップのゴールドシップ(メタファーです)に劇的な変化が。なんと見事な「五本目の脚」。
なんで?
1時間ほど見て回り、続いての目的地へ。1時間弱ほどでYogiboヴェルサイユリゾートファームへとたどり着く。
入口を見落としてしまい、すこし通り過ぎてしまったのは内緒だ。
敷地内にあるおしゃれなカフェで、遅めの昼食をいただく。馬たちを眺めながら(それどころか犬や猫までいる!)食べるホットドッグは最高のものだった。
名残惜しいが、そろそろ戻らなくてはならない。ここからAERUまでは車で2時間。北海道は本当に広い。
ん? どこか大事なところへ行くのを忘れているような……?
4日目 襟裳岬~最後の目的地
4日目。北海道滞在は明日までだが、最終日はもう帰るだけにしておきたい(帰りの飛行機のことを考えるだけで、気が滅入ってしまう)ので、実質この日が最終観光日だ。行く予定だった場所は一通り巡ったので(後でそんなことはなかったことが発覚するのだが)、その日のノリで行く場所を決めることとする(こういうことができるのが、一人旅の良いところだ)。
グーグルマップを開き、色々と調べてみる。ふと、北海道がつくるひし形、その下部の三角形が目に入る。襟裳岬。
北海道の端っこの一つか。良いじゃないか。車で一時間くらいと、距離も適切だ。よし決めた。
ウイニングチケットに挨拶をし、いざ出発。ひたすら海沿いの道を走るのは、遥かに健康に良いものだ。
見渡す限り、海、海、海、そして空。絶景とはこれだ。来てよかった。
いい感じの時間になったので、お昼をいただくとする。
いや。活きが良すぎるにも程がある。
さて、襟裳岬も十分堪能したし、もう心残りはないだろうか。思えば遠くまで来たものだ。『ウマ娘』にハマったおかげで、嫌いな飛行機を我慢して北海道までやってきてしまった。
ありがとう『ウマ娘』……それにしても、なんで『ウマ娘』にこんなにハマったんだったっけ。
あ。
ここで大変な忘れ物に気づく。なんてことだ。一番行くべきところへ訪れていなかった。慌ててグーグルマップを開く。ここから3時間ほどの道のり。時間的にギリギリだ。しかし、行くしかない。
というわけで車をひた走らせ、たどり着いたのは平取町。
サイレンススズカのお墓だ。
墓に刻まれた「1998」の数字を見ながら手を合わせる。そして改めて礼を言った。「ありがとう、サイレンススズカ」。
本当にありがとう。
それにしても。襟裳岬から平取町まで3時間。スズカのお墓に滞在5分。そしてAERUまで2時間かけて帰る……無計画にも程がある。まあこれが、一人旅というものだ。
そうそう、帰りに立ち寄った道の駅「サラブレッドロード新冠」で食べたピーマン味のソフトクリームがなかなか美味しかった。ナリタブライアンの展示コーナーや、新冠に関係ある競走馬の碑(ハイセイコーからテイエムプリキュアまで)もあり、時間に余裕があればもっとゆっくりしたかったが。
まあ良い。どうせ近いうちにまた来るだろう。
未来へ……。
最終日は帰るだけ。空港で美味しいスープカレーをいただき(名物のエゾシカカレーとやらを食べてみたかったが、売り切れてしまっていた。残念だ)、いざ飛行機へ。帰りの飛行機は、Kindleで面白い小説に没頭するという技で乗り越えた(ありがとう『爆撃聖徳太子』)。
『爆撃聖徳太子』!? いや、タイトルからキワモノと侮るなかれ。エンタメ小説として破格の面白さだった。ぜひご一読を。
というわけで、4泊5日の北海道旅行を堪能しつくしたわけだ。しかし、帰りついた瞬間「また行きたいなあ」などと思ってしまうほどには素晴らしいところだったぞ北海道。今回はウマ優先のため、動物園参りを泣く泣くカットしたこともある。近いうちに必ず再訪せねばならぬ……などと決意を新たにしたのであった。
だから早く、飛行機を使わずに九州から北海道まで2時間程度で行ける方法を誰か発明しなさい。どうかお願いします。
【終わりです】
そんな…旦那悪いっすよアタシなんかに…え、「柄にもなく遠慮するな」ですって? エヘヘ、まあ、そうなんですがネェ…んじゃ、お言葉に甘えて遠慮なくっと…ヘヘ