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聖拳"B"、魔神銃(マシンガン)"J"

 南緯47度9分、西経126度43分の海中より現れた怪異によって地球人類の8割が死に絶えたのは、20XX年の暮れのことである。

 歪んだ角度の構造物を擁した島とともに暗い水底から浮上してきたその”神”は、姿を表した際に軽く身を震わせ――それだけで、環太平洋に住まう人々のことごとくを狂死せしめた。
 島に鎮座した”神”は悍ましい声で咆哮すると(このとき、更に多数の犠牲者が出た)その身より数多の眷属を放った。眷属共は世にはびこり、海を、空を、大地をことごとく犯していった。地獄が、現前したのである。
 無論、人類とて悪神の蹂躙に手をこまねいていたわけではない。生きとし生けるもの全ての敵とすら言える巨悪に対し、人類は己の持てる力の全てを注ぎ込み――あっけないほど簡単に、破れた。
 
 人々は、諦観し、絶望し――そして祈った。いつの時代も、牙持たぬ人々が唯一為し得るのは、ただ一心不乱に祈ることのみであった。

 だがその祈りは、確かに届いたのである。

 始まりは南アジア。古い寺院に隠れ潜んでいた生き残りの人々を無数の異形共が喰らおうとしたその時、「彼」は表れた。
 全身を淡い光に包んだその男は、悪鬼の一体を手刀一閃で両断。彼を敵とみなして殺到してきた残りの悪鬼共を、次々とその拳にて粉砕し、遂には額に渦巻く白毛より発した怪光線により、その一切を焼滅せしめた。
 突如差し伸べられた救いの手に対し、その場にいた人々は歓喜し、次いで当惑し、男に誰何した。
 その男は遥か彼方を――島のある方角を――見据えながら答えた。私は「目覚めし者」。あなた方の祈りに応えて、顕現したのであると。

 同じ頃。巨大な十字のオブジェを両肩に担ぎながら、荒れ狂う洋上を確かな足取りにて歩む一人の男の姿があった。男の目は――自らが踏みしめる海より深い悲しみと慈愛に満ちた目は――まっすぐに前方を、目指すその島を見つめていた。

【続く】

そんな…旦那悪いっすよアタシなんかに…え、「柄にもなく遠慮するな」ですって? エヘヘ、まあ、そうなんですがネェ…んじゃ、お言葉に甘えて遠慮なくっと…ヘヘ