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われら世界軍~”護星王”ベルハルト、かく語りき


エイル暦394年 7の月

 余は、数多の世界を背に立っていた。

 右翼。ドワーフ達と獣人団が豪快に笑い、オーガが得物を振り回す。鱗持つリザードマンが、装甲地龍軍の隣で長槍を構える。後方でスチーム・ゴーレム部隊が熱い息を吐き、古ぶるしき樹精が枝葉を震わす。 

 左翼。見目麗しい綾目模様は、白金と黒曜、両エルフの混成軍。茨の魔術王が髭をしごき、配下どもに令を伝える。瘴気纏うリッチが杖を振るうと、骨馬駆る死の軍勢が一糸乱れぬ動きを見せる。

 空。飛竜が、空魔が、魔女が、精霊が乱れ飛び、紫に染まる明けの空に思い思いの軌跡を描く。

 中央。幾多の障害を乗り越えて、この地に集った幾万の軍勢。騎士が、弓手が、闘士が、サムライが、銃士が、魔術士が、錬金術師が、召喚士が、ただ一つの意志の下、余の号令を待っている。

「……やはり、奴は来なんだか」
「当然かと。そも、滅びを願う彼奴めが我らを助ける道理がありませぬ……何度もそう申し上げましたが」
 そうあっさり返されて、思わず苦笑を漏らしてしまう。正論屋めが。まあ良い。全てが上手くいくはずなど無く、そして万事は尽くした。ならば。

「皆、よくぞ集まってくれた! 先ずは礼を言おう!」
 荒野全てに響けとばかりに、剣を掲げ声を上げる。皆の目が剣に、次いで剣が示す空に注がれた。

 空が歪み始める。ついに予言の刻が来たのだ。姿を現す数多の――空飛ぶ、円盤。放たれた光から溢れ出す灰白色の異形どもが、未知の武器を手に次々と荒野に降り立っていく。

「見よ! 奴等こそ我らが敵、世界の敵ぞ! なれど微塵も恐れる必要無し!」
 剣を振るう。巻き起こるウォークライが、余の体を打ち震わせた。
「この地に集いし我らこそ、数多を束ねし世界軍なり! さあ護れ! 討て! 余に続け! 世界軍――吶喊せよ!」



第1章 
エイル暦359年 4の月

 ふむ、全ての始まりから語るべきか。あれは余がまだ幼き頃。彼奴らに星の彼方へ連れ去られたのは存じておろう?

【続く】

そんな…旦那悪いっすよアタシなんかに…え、「柄にもなく遠慮するな」ですって? エヘヘ、まあ、そうなんですがネェ…んじゃ、お言葉に甘えて遠慮なくっと…ヘヘ